表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

594/865

ワガマの華麗なる前座トーク

舞台の上でランドとヤスツナ達の間接的なやり取りがされている時、会場の二階席では…


「ふむ、ワガマの受けていた支援とはヤスツナさん達の事でしたか…」


「ランド殿が「あのアホは国最高の支援を受けたと言っていた」と申しておりましたが、成る程彼等であれば納得ですな…」


「彼等も依頼とはいえ、アレの護衛は大変だったでしょうね…」


「でしょうな…」


席についていたツバキと護衛として隣に座るサイガはそのような会話をする。


そんな二人のところへ、どこからともなく…


「やぁやぁ、これはこれは巫女頭どの…お互いに我が子の晴れ舞台というのは緊張しますな」クイッ…


馴れ馴れしくそんな言葉を発しながら、数人の取り巻きを連れたブソウがやって来た。


そんなブソウに、ツバキは隠す気もなく心底面倒くさそうな表情を浮かべる。


「ブソウ…わざわざ私になにか用ですか?」


ツバキがそう言うと、声の主であるブソウは「いやいや…」とツバキに対して挑発的な表情をしながら言葉を続ける。


「同じ「洗礼の儀」の挑戦者として子供が選ばれた者同士、少し話でもと思いましてな」クイッ…


「(相変わらずウザい奴やなぁ…)そうですか、そう言ってもこちらは何も話すことなどありませんが?」


ツバキがそう返すとブソウは「ははは、手厳しいですな」と笑う。


「そんな口を聞けるのも今の内ですぞ、もうすぐ私は今以上に街での影響力を手にしますからな」クイッ…


「おっしゃる意味が解りませんね…」


ツバキが適当にそう返すと、ブソウは「わからない訳ありますまい?」とニヤリと笑う。


「あと少しの時間が経てば、息子のワガマが「洗礼の儀」の勝者と発表されるのですからな」クイッ…


「(髭触りながら喋るなオッサン…)さて、それはどうでしょうね。結果は最後までわからないですよ?」


「ふっ、強がりおって…私が知人に頼んで支援してもらった「剣舞の心得」はこの国でも最高の冒険者パーティーだ。彼等の支援を受けた息子が負けるものか(まぁ雇うための金は私が支援したがな、痛い出費だが今後の投資と思えば…)」クイッ…


そんなブソウにツバキは「支援が優秀だから必ずしも最高の結果となるとは限りませんよ?」と言葉を返す。


「なんだと?」クイッ…


ブソウはツバキの言葉に眉をしかめる。


「どれだけ準備をしても、どれだけ支援をしても…された者がそれを活用できる知識や理解、そして覚悟がなければ所詮はハリボテですよ」


「貴様、私の息子を馬鹿にするのか!?」クイッ…


「旦那達を馬鹿にするなら女といえど…」


取り巻きの男達がそう凄んだ瞬間…


「お館様を害するなら、お主等はここで潰えるか…?」


横にいたサイガが男達の前に仕込み刀の刃を向けた。


「ぐっ…」


「サ…サイガ…」


「ぐぐっ…」


ブソウも男達も歳を重ねてるとはいえ…この街でも名の知れた達人のサイガと大っぴらに揉めるリスクは負いたくないのか引き下がる。


「フ…フン、どうせ息子の勝ちは揺るぎないのだ。折角だからお前達のその余裕が絶望に変わる様を見させてもらおうか」クイッ…


ブソウはそう口にすると、ツバキとサイガから2つほど離れた席に座り…取り巻き達も近くに座った。


ツバキとサイガはそんなブソウに特に関心を無くしたのか、特に気にもせず舞台の方に視線を戻す。


「さて…皆さんどんな反応をするかしらね」


「楽しみでございますな」


そんな会話をしながら、二人は結果発表の様子に集中するのだった。


― ― ―


一方こちらは舞台側、役員がワガマに「それじゃあ「割符」を嵌めてくれ」と促していた。


「はっはっはっそれじゃあお見せしよう、華麗で優雅なこのボクの武勇伝の始まりだ!」ファサッ…


ワガマは自信満々にそう言うと自分の「割符」を箱に嵌め込んだ。


ブゥン…


途端に箱は音を立てると壁に向かって「階層」を表示する。


「四」


壁に映し出された文字を見て役員や観客は「おぉっ!」と声を出した。


「なんと四、四階層まで降りることができたとは!」


「「洗礼の儀」の記録が更新されたぞ!」


「流石はSランクパーティー「剣舞の心得」を同行させただけのことはあるな!」


観客達からそんな声が上がる中、ワガマは自慢気に笑っていた。


「はぁーはっはっは、どうだい庶民諸君。このボクかかればこの程度のことわけはないのさ!」ファサッ…


ドヤ顔でそう口にするワガマに、観客達は「あぁ…そうだな…」ととりあえず言葉を返しつつ心のなかでは…


(剣舞の心得がいたからこそ行けたんだろーが…)


と内心で呆れていた。


その後役員の質問にワガマは…いかに自分が勇敢に、かつ的確に「剣舞の心得」に指示を出して階層を進んだのかを語り出した。


「…で、四階層の奥までは行くことができたんだけどね。流石に彼等も疲労が見えたものでね、ボク自身はまだ余裕だったんだが…彼等を傷つけるわけにもいかないからそこで引き返したんだ」ファサッ…


さも「自分はまだ行けたが「剣舞の心得」のことを思って引き返した」みたいな内容で語るワガマに、剣舞の心得のメンバーは…


((四階の巨人見てビビり散らして勾玉割ったくせに…))


(あの巨人としっかり戦いたかったなぁ…)


と心の中でワガマにイラついていたが、面倒くさいので無言だった。


「あそこまで自分を美化して語れるのも大したもんやなぁ。実際は威張るだけで何もしとらんかったくせに…」


「ですね、朱雀さんが「本当にウザかった」とグラシスさんに愚痴るだけのことはありますね…」


そう呟く二人にランドも「彼等も依頼とはいえ気の毒にな…」と同意する。


「ランドはんから見てもあのパーティーはやっぱ凄いん?」


ランドの言葉にランがそう尋ねると、ランドは「そうだな」と頷く。


「守護獣に関しては彼等の戦闘スタイルやチームワークを知らないからなんとも言えんが、彼等なら四階の巨人は苦労せず倒せたと思う。グラシスについても戦い方次第では勝つことも不可能じゃないんじゃないかな」


「はぁ〜やっぱりSランクって凄いんやなぁ…」


「そのSランクがどうにかって相手を…一人でなんとかするランドさんはもっとおかしいですけどね…」


ランとイブキの言葉にランドは「俺は力任せにゴリ押ししてるだけだからな…」と返した。


((それが大概やと(だと)思うん(です)けどね…))


ランとイブキは心の中でランドの言葉にそう返すのだった。


そんな会話をしていると役員がランに声をかけてくる。


「それじゃあラン、お前さんで最後だからこっちに来て「割符」を嵌めてくれ」


「はいよ」


ランは役員にそう返すと立ち上がり、ランドとイブキを伴って箱の前まで向かう。


「はっ、このボクの後に発表とは君も災難だねラン。負けるとわかっているのに観客達にその様を見られるなんてねぇ!」ファサッ…


ワガマは自分の勝ちを確信しているのか、席に戻らず箱の横でふんぞり返っている。


「やかましぃなぁ、アンタは終わったんやから席に戻ってればエエやん…」


ランが面倒くさそうにそう言うと、ワガマは「そんなの手間じゃないか」と返してくる。


「どうせこのあとボクは役員達に呼ばれてまたここまで来るんだからね、ここで待っておくほうが手っ取り早いだろう?」ファサッ…


「あぁそうかいな、ほしたらまぁ勝手にしときや…」


「ふん、わざわざ自分の恥を晒すなんて無様なやつだねぇ」ファサッ…


「好きに言うとれ…」


ランはもう相手にするのが面倒だったので、ワガマの事は無視して箱に「割符」を嵌め込んだ。


― ― ―


ここで場所はまた二階の観客席に戻る。


「はっはっはっ、やはりウチの息子は他の挑戦者よりも上でしたな。ツバキよ、娘が恥をかく前に辞退させたらどうだ」クイッ…


「そんな事はさせませんよ、娘の努力を諦めさせるなんて事は親としてしません(ウザいなぁ、その髭千切ったりたいけど触るのは嫌やしなぁ…)」


「はっ、娘が大勢の前で恥をさらすのを止めないとはな。俺なら子供がそんな晒し者になるようなことはしないがね、無駄に自信だけがあって身の程をわきまえない親を持つと子供も苦労するな!」クイッ…


この子供にしてこの親ありと言わんばかりに、観客席でも舞台と同じようなやり取りがされていた。


「お…そろそろお前の娘の発表だな。せいぜい息子と比較されて恥をかくがいい!」クイッ…


ブソウがそう口にした頃、舞台の上ではランが箱に自分の「割符」を嵌めんこんでいた。


― ― ―


ブゥン…


ランが「割符」を嵌め込むと、これまでの挑戦者達と同様に箱は音を立て、壁に階層を映し出すと思われた次の瞬間…


「パパラパパパ…パパパパーン♪」


「うおぉ、なんやなんや…いきなり音出てビックリしたで!」ビクッ


ランもこれは予想してなかったのか、突然の音楽に思わず驚いて横にいたランドにしがみつく。


「なんですかこれ…?」


「さ…さぁ…?」


横にいたイブキとランドも箱のこれまでとは違う動作に困惑する。


箱からそんな音楽が流れたかと思うと壁には…


「完全制覇…あなたが勝者だやったね万歳!」


という文字が映し出された。


「…は?」


あまりの出来事にワガマは、髪を掻き上げた状態で固まりそう呟くのが精一杯だった。


時を同じくして、二階の観客席でもブソウが息子と同様に「…へ?」という声と共に髭を摘んだ状態で固まっていた。


その横ではツバキが「あんな仕掛けもあったのねぇ…」と呟き、サイガも「知りませんでしたなぁ…」と同意するのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ