挑戦者達の説明とSランクパーティーの実力
ワガマの滑稽な様子が会場に浸透したところで、発表式の役員が言葉を続ける。
「それでは、挑戦者の皆さんは自身の「割符」をこちらの箱に嵌めてください」
そう言って役員が手で示した方向には、別の役員が横に付いている机に乗せられた箱があった。
箱の上部には「割符」と同じ形の窪みがあり、どうやらそこに嵌めるようである。
「こちらの「階層表示の箱」に皆さんの「割符」を嵌めると、その「割符」に刻まれた階層の数字がこちらの壁に表示されます。これははるか昔より我々「洗礼の儀管理委員会」が管理しているものです。仕組みは未だに不明ですが、この箱に対しての「割符」での偽装は不可能です。更に万一に備え、横には役員の者が二名横に立って立ち会います。「割符」のすり替えなどに目を光らせていますからね」
役員の説明に挑戦者や付き添いの冒険者、そして観客達は「ほぉ…」と感心するような声を出す。
「30年前にも同じ説明は聞いたが、やはり不思議だよなぁ…」
「だよなぁ、未だに仕組みが解らないってのもな」
そんな観客達の会話を聞きつつ、ランド達も「へぇ…」と声を上げていた。
「不思議な魔道具もあるもんだ…」
「せやね、どんな仕組みなんやろ」
ランドとランがそんな感想を口にしていると、イブキが「あっ、もしかして…」と口にする。
「ん…どないしたんイブキ?」
ランがイブキにそう声をかけると、イブキは「いえ、ふと思ったのですが…」と前置いてから言葉を続ける。
「もしかしてあの箱やこの「割符」って守護獣の朱雀さんが作られたのかなと思ったんですよ。まぁラン様のは神様に直に頂いた物ですけど…」
「「あぁ…!」」
イブキの言葉に二人はそんな声を出す。
「なる程な、それならしっくりくるな」
「せやね、朱雀はんならウチ等が作れないような物も作れるかもしれんわ」
そんな会話をしていると、進行役の役員が口を開いた。
「さぁ、それでは順に発表していこう…こちらの挑戦者から順に「割符」を嵌めていくように。可能なら付き添いの護衛の人達も一緒に来て、祠の中での様子を教えてください」
進行役の役員がそう言うと、ランとは反対側に座っていた少女が「はい」という返事とともに立ち上がって横にいた護衛と箱の方に歩み寄った。
「それでは「割符」をここに…」
「はい」カチッ…
役員の指示通りに少女が窪みに「割符」を嵌めると…
ブゥン…
そんな音と共に箱から光が飛び、正面の壁に「始」の文字が浮かんだ。
「おっと、これは最初の階層で諦めたということですか?」
役員がそう尋ねると、少女は「だって…」と話し出す。
「最初からあんなに罠があるなんて思わなかったもん…」
少女の言葉に、付き添いの護衛の冒険者達も言葉を引き継ぐ。
「確かにな、まさか床にあれ程の数の罠があるとは…」
「それでようやく奥に着いたと思ったら、三体の「骸骨剣士」だ。こちとら罠で疲れてるってのによ…」
「しかもあの「骸骨剣士」、普段外で遭遇するやつよりも硬くて強かったのよ…」
「流石に疲労した状態で相手に出来なかったからな…」
「そういう訳で、私達は死ぬよりはマシって事で帰還したの」
「成る程、我々は祠の中の状態まではわかりませんからね。それほど危険なら帰還も仕方ありませんね」
少女の説明に役員もそう言って労った。
「では次の挑戦者、「割符」をこちらへ…」
一人目が終わると役員はそのまま次の挑戦者に声をかけて進行していく。
その後の挑戦者達の「到達階層」と「説明」は以下の様に続いた。
―他の挑戦者の「到達階層」と「説明」―
「二人目の少女・到達階層二階」
「念の為にと回復薬を多めに持っていったから…さっきの娘が言ってた骸骨をうまく護衛の人に惹きつけてもらって二階には行けました。でも二階も罠あるし魔物も道中出てきて…特に途中で出て来た猪の魔物なんか暴れて周りの罠踏みまくって大変だったんですよ」
護衛達「それでようやく辿り着いたらバカでかい蛇の魔物だぞ。流石に無理がある…」
「三人目の青年・到達階層三階」
「俺も多少は武道を嗜んでるからな、護衛の人とも協力して…どうにかさっきの奴が言ってた蛇の魔物を誘導してその隙に下に降りた。だけどその時に俺も護衛の人も満身創痍でな、更に進むのは断念して帰還した」
「あんな状態では無謀だからな、自分達の実力不足を実感したな…」
そう言って二人目と三人目の挑戦者と護衛は話した。
―挑戦者の説明と到達階層の話終わり―
「成る程、過去の挑戦者の方々も「苦労した」という話の記録は残っていますが…今回もかなりの試練だったようですね。さて現在の最高記録は三階ですね、これは過去の挑戦者の記録と並んでいます。果たして更新した挑戦者は居るのでしょうか?」
役員がそう言うと、観客達の方もザワザワと話し出す。
「やはり三階が鬼門なんだな…」
「だな、俺の兄貴が30年前に挑戦したがやはり二階で断念してたし…」
「残るはワガマとランちゃんか…」
「どうなるだろな…」
そんな声が所々から聞こえてくる中、役員は「次の挑戦者、こちらへ」と声にする。
「はっはっはっはっ、どいつもこいつも低レベルな争いだな。やはり今回の勝者は華麗にして優雅なこのボクに間違いないようだね!」ファサッ…
役員の言葉にワガマがそう声にしながら立ち上がった。
「それじゃあワガマ、この箱に「割符」を嵌めろ。それと…お前を支援した護衛はどうした?」
箱の横に立っていた役員がそう尋ねると、ワガマは「あぁ護衛ね…」と口にする。
「仕方ないなぁ…本来なら野蛮な冒険者がこのボクの横に立つなんて恐れ多いんだが、今回はこのボクの人脈や社会的地位の凄さを解らせるために呼んであげよう♪」ファサッ…
そう言うとワガマは、舞台の袖に向かって「キミ達こっちに来たまえ、特別にボクの横に立つのを許してあげよう」と口にした。
ワガマの声に舞台の袖から、四人の男女が出て来た。
その内の三人は遠くからでもわかる程に顔を顰めている。
出て来た四人を見て観客達が「あれは…Sランクパーティーの「剣舞の心得」だ!」と声を出した。
「マジか…この街でも別格の最強パーティーじゃねーか」
「ワガマのやつ、親父のコネと金で奴等を雇ったのか…」
そんな声が出る中、ランとイブキも小さい声で話す。
「なる程なぁ…あのアホの言ってた「国最高の支援」っていうのはあの人等やったか…」
「確かに…ヤマット皇国では最高と言っていい支援でしょうね」
そんな二人の会話を横で聞きつつ、ランドも(ふむ…)と頭の中で考える。
(なる程な、蕎麦屋で会ったあの男のパーティーを雇っていたのか。確かにあの男や昨日会ったあの二人そして魔法使いのようだがもう一人のあの女性…それぞれかなりできるようだ。彼等なら四階まで行けたのも納得だ、あのアホ息子が四階の巨人にビビらなけりゃもっと進めただろうな、グラシス相手にもチームワークによっちゃ勝てたかもな…)
そんな事を考えつつ、ランドは四人を仮面の下から見ていたが(にしても…)と更に思考する。
(さっきから…なんで彼は俺の方を見てるんだ?)
「……」ジー…
ランドは舞台の袖から出て来て以降…ワガマの方には目もくれず、自分の方に視線を向けているヤスツナに疑問を抱く。
ランとイブキも明らかにこちらを見ているヤスツナの様子には気がついたのか、二人して首を傾げていた。
「なんかヤスツナはん…ずっとこっち見てへん?」
「ですね、なんなんでしょうか?」
「…」ジー…
「なんや…あんな見られると気になるなぁ。落ち着かんわぁ…」
ランが落ち着かないと口にしたので、ランドは(なにか知らんが、少し見るのを遠慮してもらうか…)と考え…
「…!」キッ…!
ヤスツナに向かって無言でかなりの殺気を一瞬だけ飛ばした。
「…!」ピクッ…!
「…!」ピクッ…!
「…!」ピクッ…!
「…っ!」ビクッ…!
ランドの飛ばした殺気に、ヤスツナどころか「剣舞の心得」の残りの三人も反応し…一瞬ランドの方に視線を向ける。
(む…やりすぎたか?)
ランドは少し力み過ぎたかと思ったが、(まぁいいか…)と気にしないことにした。
ランドの殺気を感じたヤスツナ以外の三人は、ランドを一瞥してからはすぐに視線を戻した。だがヤスツナは、ランドの方に視線を向けたまま一瞬嬉しそうにニヤリとすると…三人より遅れて視線を逸らした。
ランドの殺気を感じれなかったランは「あれ、ヤスツナはんこっち向かんようなったな?」と呟く。
(ふむ、少し狙った反応とは違ったが、まぁ視線を向けなくなったから良しとするか…)
ランドはヤスツナの笑みが少し気になったが、今は気にしないことにした。
そんなランドに、横にいたイブキが「あの、ランドさん…」と小さく声をかける。
「ん?」
「ラン様の為にしたことだとは思いますが、殺気を出すなら言ってください。突然だと驚きますので…」
「あ…すまん、なるべくあの剣士のやつだけに向けたつもりだったが力み過ぎた」
イブキの抗議にランドは素直に謝罪するのだった。
― ― ―
一方、こちらはヤスツナ達「剣舞の心得」サイド…
「な…なんだあの男の先程の殺気は…」
「まるで喉元に鋭い刃を突き付けられたような寒気がしたぞ…」
「け…気配だけで殺されるかと思った…」
コンゴウ、ハヤテ、タマモは先程自身が感じたランドの殺気に戦慄する。
「わりぃ…俺がアイツを凝視してたからだ。どうやら俺の視線がお気に召さなかったようだわ♪」
「「あのなぁ…」」
ヤスツナの言葉に三人は、呆れるようにため息をつくのだった。
リン「ある程度の冒険者ならランドの殺気は感じ取れるものね、私も初めてランドの殺気を感じた時は怖かったわ…」
ウード「なんだ、リンの嬢ちゃんもランドの殺気感じたことあんのか?」
リン「えぇ、あれはヤバかったわ…」
ウード「だよなぁ…俺とヘスティアも動けなかったもんよ…」
作者「まぁリンさん達やウード達が触れた殺気は、ランドが本当に怒ってる時なのでヤスツナ達に飛ばしたものよりキツイんですけどね」
リン「そうなのね」
ウード「ならアイツ等はまだマシだな」
作者「まぁ彼等はSランクですからね、気配に敏感ということで感じ方はかなりでしょうけど」




