冒険者養成学院⑭
ランドとソアラが無事に帰ってきてみんなに労われている頃ドルクはというと
「グフフ、そろそろあの女子も死んだ頃か、それとも慌てたランドが森へ向かいサイクロプスに殺されている頃かな?どちらにせよ私の計画は完璧だ!」
そんな妄想をし、部屋で紅茶を飲みながら自分の輝かしい未来を確信して愉悦に浸っていた。
「そもそもあの女がギルドなぞに外から講師を呼ぶように依頼するのが悪いのだ。ここに俺という優秀な人間がいるというのに…まぁそのおかげでこうしてそれを利用してあの女も自分の身を滅ぼしたし今となっては良いがな。責任追及の後に行き場をなくし俺に泣きついてきたら可愛がってやるとするか」
下卑た妄想にドルクは笑みをこぼす。
「それにしてもあのランドという男も愚かなものよ、どういったコネを使ったか知らんがたかがCランクが講師などふざけたことを。全く、自分を優秀だと思い込んで他人を見下し先見の明もなく感情だけで行動する奴なぞすぐに化けの皮が剥がれて身を滅ぼすというのに」
見えないブーメランがもう刺さる所がないほど刺さってることにドルクは気付かない。
そんな事を一人で口にしてるとドアを叩く音が聞こえた。
「誰だね?」
「門番の兵士です、ドルク先生を学院長がお呼びです。至急訓練場の方に来てほしいとのことです」
兵士のその言葉にドルクは(きたか!)と心の中で歓喜に震えた。
「わかった、すぐに行くとしよう」
「ではお伝えしましたので失礼します」
兵士はそう言うと部屋の前から立ち去った。
「フフフ、きっとあの女子が死んでランドをクビにしたか二人とも死んだから俺に「冒険科」を任せるという事を頼むに違いない。そうなればそこでランドなんぞを招き入れた責任をあの女に追及してあの女も追い詰めてやる。…しかし何故訓練場なのだろうか?……あぁそうか!残りの三人にその場で俺の実力を見せて俺がいかに優秀か完全に解らせるためだな。そういった演出だけはあの女も評価してやるか」
実力を見せつけられるのは自分だとは微塵も思わず、そんな自分に都合のいい事を考えながらドルクはウキウキしながら訓練場に向かっていった。
― ― ― ―
そうやって訓練場に来たドルクは訓練場にいるメリッサと「冒険科」の三人、そして門番の兵士たち三人をみて笑みを浮かべた。
(あの女子とランドがいない、ということは二人とも死んだのか?)
そんな事を考えながらドルクはメリッサに言葉を投げる。
「お呼びですかな学院長?」
「よく来たね、実は伝えなきゃいけないことがあってさ。休みの日に呼び出して悪いんだけど緊急な事だったからね」
(キタキタキタキタ!)
ドルクは笑顔になるのを我慢しながら言葉を返す。
「緊急ですと、一体何事ですか?」
「うん、急なんだけどこの学院から一人教員を追放することになったんだ」
(となると二人とも死んだのではなく死んだのは女子生徒だけか、ランドの奴はもうこの場から出ていったということか。いい気味だ!)
「そうですか、それは大変ですな。しかしあのような奴は最初から不要だったのです、学院長も騙されただけなのかもしれませんがどう責任を取られますかな?あぁお任せください!この学院は私がしっかりと守っていきますよ。まぁ学院長がどうしてもこの学院に残りたいと言うのであれば私としても態度次第ではそれを考えなくもないですがね」
「は…?君は何を言ってるんだい?」
いきなり饒舌に訳のわからないことを語りだしたドルクに対してメリッサは少し驚いた顔をした。
「なにをって、女子生徒が西の森でサイクロプスに殺されたからその責任を取ってランドがこの学院を追放。貴女も彼を受け入れた責任を取って学院長を辞職、そして私に残りの「冒険科」の生徒ひいてはこの学院を任せるという話でしょう?」
ドルクが「わかってるんだぞ♪」みたいな態度でそう口にしたのでメリッサは可哀想な者を見る目で「はぁ~~……!」と大きな溜め息をつくと言葉を続けた。
「今の君の言動でなにを誤解してるかは解ったけどそうじゃないよ。この学院を追放されるのは君だよドルク君!」
「…………は?」
「聞こえなかったかい?君はクビだ!」
「な、何故です!?私がなにをしたというのですか?」
そう問いかけるドルクにメリッサは再び「はぁ……バカだバカだとは思ってたけどこれ程とは」と溜め息をつきながら呆れた顔をすると
「君、西の森でサイクロプスが出たことを知ってたのにソアラ君に訓練に行く許可を出したそうだね?そんなことしたらソアラ君がどうなるか解らない訳じゃないでしょ。生徒を危険な目に遭わせるなんて教員として以前に人として論外だよ」
メリッサがそう言ってドルクを睨み付ける、するとドルクは…
「そ、そんな事をした覚えはありませんな……」
と往生際悪く惚けるが…
「いや、俺らの前で「許可する」って言ってたじゃん」
「無理ありすぎるな」
「と言うかこの人さっき「サイクロプスに…」とか言ってたし、完全に確信犯じゃない!」
と「冒険科」の三人からツッコミが入る。
「ぐ、それは……そ、そうだサイクロプスの事を知ったのは許可を出した後なのです!それを知り慌てて学院長に知らせようとしたのですがお出掛けになられていて連絡出来なかったのです!」
そう言ってドルクが言い訳すると
「いやいや、俺がアンタに伝えたの午前中じゃん」
「俺も交代で門の前に居たからギルドの職員が来た時間は門のところにいたし」
「ていうかこの人今「そ、そうだ!」って言ったぞ、もう自白じゃん?」
と今度は兵士の方からツッコミが入る。
「ぐぐ…し、しかし証言だけでは立証はできませんぞ!ソアラ本人がそう言ったのですかな?」
「それは……」
メリッサがそう口にするとドルクは勝ち誇ったかのように言葉を繋げる。
「言えますまい!何故ならソアラはもう死んでるのですか…「本人に聞いたらいいんじゃないかな?」…は?」
メリッサの言葉にドルクが間の抜けた声を出すと「出ておいで」とメリッサが言葉にした。
ドルクが後ろを向くとそこにはソアラとその横に立つランドがいた。
「ば、ばかな……何故生きてる?」
そう驚愕するドルクに対してメリッサが「これでもまだシラを切るのかい?君はもう終わりだよ」
とトドメの一言を放った。
次回、ドルクがフルボッコになります。




