リディアの二つ名とフォルクスとのアイコンタクト
リディアが「移動登録」をするために並んでいる間にランドはフォルクスからリディアについての説明を聞いた。
「あのリディアはな、とある二つ名を持つことでギルドの職員には有名な冒険者だ」
「二つ名ですか?」
冒険者の中にはその実力や装備している武器などから特殊な呼ばれ方をする人物もいる。
例えばドラゴンを何匹も討伐した実績を持つ冒険者が「竜殺し」と呼ばれたり、あらゆる魔法を使いこなす魔法使いが「大魔導士」と呼ばれたりする。
ほとんどがその冒険者自身が名乗るものではなくいつの間にか世間からそう言った風に呼ばれ出して定着していくものであるが、そう呼ばれるということは世間にその実力が認められたという事でもあり冒険者にとっては一つのステータスとなっている。(ちなみにアルガス達がSランク冒険者だった頃にも四人ともそれぞれ二つ名がついていた。それぞれ「王国の剣聖」「攻守の槍使い」「五大元素の魔女」「蘇生と破壊の聖女」と呼ばれていた)
「お前はリディアが戦闘してるとこを見たか?」
「ええ、なにやら俺の名前を騙って彼女を恐喝しようとしたゴロツキ三人をあっさり返り討ちにしてましたよ」
「お前の名前を?」
「はい、9月に俺が出場した武術大会をネタに「痛い目にあいたくなけりゃ財布を置いてけ」と絡んでました」
「たまにお前の名前を騙ってそんな事する奴がいるとは聞いていたが…まぁどっかの山賊崩れやうだつの上がらない低ランクの冒険者だろう。どこで見た?」
「街の近くの森ですね」
「わかった、手の空いてるCランクからBランクのパーティーに見回るように伝えておこう。この街の冒険者でお前の名を騙って騙されるやつもいないだろうしな」
フォルクスがそう決めてからランドは話を元に戻す。
「それで、リディアの二つ名ってなんなんです?」
「ああ悪い、話がそれたな。まぁアイツの戦闘してるとこを見たなら実力はわかるな?」
「かなりの腕を持ってますね」
「そうなんだ、アイツは剣士としてはかなりの腕を持っているがその…あれだ…」
フォルクスがなにを言いたいのか理解したランドは「まぁ…その割には少し残念なところもありますね…」と先に口にした。
「ああ見たのか…そうだ、アイツは戦闘以外はどうも抜けてるところがあってな。そのせいかギルドの中では「偏りの剣姫」と呼ばれているんだ」
「偏りの剣姫……」
フォルクスから聞いたリディアの二つ名をランドは「ピッタリだな…」と納得した。
「それで?リディアは一体なんの目的で王都に来たんだ?」
フォルクスの問いにランドは「いや、それが…」と言葉を詰まらせる。
「なんか言いにくいことなのか?」
ランドの反応にフォルクスがそう言葉にするとランドは苦笑いをしながら「…俺を探してるみたいです」と答えた。
「…は?」
「ですから、9月の武術大会で優勝した俺を探してるみたいです」
「なんでまた?」
「それがですね…」
ランドはフォルクスにリディアが言っていたことを顔をひきつらせながら話した。
それを聞いたフォルクスは「またお前が原因か…」とため息をつくがランドは「いやいや、流石にこれは俺のせいじゃないでしょ?」と反論した。
話を聞いたフォルクスは頭のなかでランドの事がバレた時の結果を想像する。
―ランドの事がバレたときの予想―
①リディアがランドに猛アタック→ランドが折れて受け入れる→シシリア他ランドに好意を寄せる面々がショックを受ける→アリスやガレリアとは外交に影響の懸念。メリッサから「八つ当たり」される可能性も→自身の心身共に大ダメージ
②リディアがランドに猛アタック→ランドが王都から逃亡→ランドが受けていた高ランク依頼が滞る→中略→自身の心身共に大ダメージ
「……初めてお前がランクを上げてなかったことを良かったと思ったかもしれん」
「はぁ…そうですか」
「とりあえず…なるべくバレないようにしてくれ。俺の身体と精神のためにも…」
「ギルマスの身体と精神のため?」
「いやなんでもない…まぁややこしい事にならないように気を付けてくれ」
「わかりました」
ランドとフォルクスがそう会話を締め括るとそこに「待たせたな、登録が終わったぞ。ん?そちらは誰だランド?」とリディアが戻ってきてランドの横にいるフォルクスに視線を向けた。
「お帰りリディア…この人はここのギルドマスターのフォルクスさんだ」
「おおそうか、はじめましてリディアだ。しばらくここの街で世話になるからよろしくお願いします」
リディアの挨拶にフォルクスは「ああ、こちらこそ…」と返事を返した。
リディアは「はい」と返事をしてからランドの方に顔を向けると「しかしそれにしてもランドは凄いのだな」と言葉を発した。
「は?何がすごいんだ?」
リディアの言葉にランドが聞き返すとリディアは「だって、ギルマスと言えばギルドのトップだろ?普通ならAやSといった高ランク冒険者ならギルマスと個人的な話とかもするのだろうけどランドはCランクじゃないか、Cランクなのにギルマスと気軽に話せるってよほど関係が深いかランドが認められてるって事じゃないか?」
リディアの言葉にランドとフォルクスはギクリと反応する。
「あ、ああそれはな…フォルクスさんは冒険者の一人一人を大切にされているから俺みたいな半端なランクの人間でもちゃんと見てくださってるんだ(妙なところで鋭いな…)」
「ほほう、流石に王都のギルドマスターともなると器が大きいな」
ランドの言葉にリディアが素直に感心してフォルクスを見つめる。
「ま、まぁな…ランドはCランクだが真面目な奴だからな。俺はランクだけで人を見たりしないぜ(戦闘以外でそんなことに気づくとは、とことん予想外の奴だな…)」
「素晴らしい!私も見習いたいものだな、きっと私のランドさんもそんな風に人間ができてるだろうな~。どこにいらっしゃるのかな~?」
そう言ってウットリするリディアにランドとフォルクスは…
(噂に違わぬ残念な奴だな…とりあえずしばらく様子を見ようか。気を付けてな)
(そうですね、それにしても…いつ俺がお前のものになったんだ?)
と心で思いながら目を合わせるのだった。




