STEP1 Frozen Flare 56
愛美は、また怒られるかと思いながらも、そう言ってテーブルについた。
曲は、カップリングの『Clime Education』に変わっている。編曲はヨータによるもので、リズム感のある曲調だ。
一曲目とは、雰囲気といいザキの歌い方といい、ガラリと変わっていた。
「全部本当だぜ」
キーボードを打つ手を止めたザキが、意地悪な顔で言った。
〈君に罪をあげよう 踏みにじられた愛をあげよう 優しい顔で 牙を立てて 無造作に散らした 薔薇の花弁で 君のその骸を飾って あげよう〉
曲はタイトルからして、危険の匂いがプンプンとしているようだ。
Clime(犯罪)Education(教育)罪は蜜の甘さにも似て、と言う訳か。
実際会って嫌な奴だとは思うが、薬でラリったり、女遊びが激しいとかは、ザキのイメージとは合わない。
こいつなら、暴行して妊娠させたとか(あくまで暴行)、あと酒を飲んでいなくても暴れそうだ。それなら、有り得る気がする。
「俺んとこの学校中高一貫の男子校だからさ、ライなんかモテんだぜ。酒飲んで傷害事件起こしたのはヨータ。ウミハルはあいつ、デビュー決まってたタレントと寝て孕ませちゃったし。シヴァだってさ、薬で警察沙汰になったし」
まるで楽しくて仕方がないといった言い方で、ザキは唇の端を歪めて笑った。
顔は天使で、心は悪魔か。
ザキではなく、メンバーに関する噂だったというのか。
しかも噂ではなく、事実だと?
シヴァが薬を? 傷害事件、ヨータが? ライが?
メンバーと直に会って、愛美が感じた彼らのイメージは、簡単に覆されてしまう。
メディアとは、その全てが虚構に等しい。
所詮噂は噂だと、ザキも含めた上で、愛美はそんな感触を受けたのだ。
事実愛美が、その彼らの行状を目にした訳ではないので、ザキの言葉を全てを信じることもいかなかったが、全て嘘だと決めつけるだけのものもなかった。
愛美は彼らという人間を、ほんの少し垣間見ただけに過ぎないのだ。
〈罪と罰に浸り 夢は赤く燃えて 暗い空は割れて 星は堕ちた あの明け方の海へ〉
「あなたは何やったの?」
愛美の問いかけに、ザキはあっさりと答えた。
「人、殺した」
愛美は思わず眉間に皴を寄せて、強い口調で嘘でしょと言っていた。
ザキは、ジロリと愛美を睨む。そして、キィボードに乗せていたザキの右手が、愛美の方へと伸ばされた。
〈呼んでごらん僕の名を 駄々をこねる子供のような ないものねだり 欲しいだろう 言ってごらんよ 全部あげるよ 君に 言ってごらんよ 欲しいって〉




