STEP1 Frozen Flare 55
そのパソコンから、この部屋の中で、新曲の『皆殺しのJungle』も生まれたのだろう。
〈終わりのない話をしよう 醒めない夢を見よう 翼のもがれた君が流す 赤い涙が この指を染めてゆく〉
囁きかけるような歌い出しから、甘く伸びやかに広がっていくサビ。
うまいと、愛美は思わず感心してしまった。
デビューするだけのプロなのだからうまくて当たり前なのだが、これが平均年齢十八才のアイドルグループの曲かと耳を疑いたくなる。
稀に見る粒揃いのルックスがメンバーに揃っていた為に、アイドルという位置づけに置かれてしまったのだろう。
シヴァの言う通り、本当に音楽が好きで音楽を作ることを大事に思っている様子が窺えた。
ただやはり年が若いと言うことと、アイドルグループというレッテルが貼られている分、どうしても皮肉った見方をしてしまいがちになる。
本当に彼らが作っているのか、愛美も前日の生の演奏を見ていなければ、信じられなかっただろう。
〈蔑みは傷痕よりも深く この胸に杭を打つ〉
部屋にちらばる丸められた印刷物は、失敗した作品なのだろう。
吟味され、選ばれた言葉たちがザキの声に乗る時、歌は歌としての力を持つ。
「本当に十七なの?」
愛美の言葉をどう受け止めたものか、ザキがどういう意味だよと力んで言い返そうとするのを、慌てて愛美は制して言葉を続けた。
「ううん、すごいなって。凍った焔抱いて、夜の悪夢走り抜ける。同じ年でこんなこと書くんだもん。才能って陳腐な言葉だけど、確かにあなたの中に何かあるってのは分かるわ」
ザキは誉め言葉にではなく、愛美がちょっと口を滑らせた同じ年という言葉に反応した。怪訝そうな顔をされて、愛美は慌ててフォローを試みる。
「あ、私が同じ年の頃って意味」
何十年前のことだよと吐き捨てられて、愛美はよっぽど自分は高校生だと明かそうかと思ってしまったほどだ。
〈凍った焔抱いて 夜の悪夢走り抜ける いつまでも どこまでも〉
――朝がくるまで
そういうフレーズで曲は終わっていた。
朝がくるまで、愛美もまた走り続けるのだ。突然放り込まれた、悪夢のような非日常の中を。
思わず、胸がシンとしてしまう。
共感、共鳴、シンパシー。
ザキの書く歌詞は、愛美の心に深く突き刺さると言うより、ジワジワと浸食していくようだった。
「変な噂聞いてたから、音楽聞いてみようと思いもしなかったんだけど。ほら、薬ヤッてるとかアイドル妊娠させたとか、ゲイだとか、酒飲んで暴れたとか」




