STEP1 Frozen Flare 53
ザキと長門はどこに出かけたのだろう?
八時前だった時計の針は、あっという間に進んで、もう壁の時計は十時を回っていた。
しかし、掃除の方はあまりはかどっていない。
CDの山を崩さないように、上から順番に一枚一枚とって、埃のついたケースを拭っては、今度は空いている場所に倒れないよう気を付けて積み上げていた。
次に新たな一枚とり上げると、ついに山は崩れて、派手な音を立てて床へとちらばった。
物の見事にやってしまったにも関わらず、愛美は無気力のまま床にしゃがむと、CDを拾い上げて拭き始める。
ザキがいなくて、よかったというものだ。
愛美はふと手を止めた。
フローズンフレアというタイトルの、アルバムがあったのだ。
ピンクの地に真っ赤な薔薇の写真、その花弁の中にカタカナ表記でフローズンフレアとロゴが入っている。裏はピンク一色。
かなりキッチュで目立つジャケットだ。
愛美はその場に座り込むと、アルバムのケースを開いた。
ベージュピンクのCDには、曲名などは載っていなかった。
とり出したブックレットを、愛美はめくった。
メンバーの写真などは一切載っていない、歌詞だけの薄いものだ。
曲名だけを拾い読みしていく。
『不埒な夜』『ラブヒーリング』『彼方へ』『Silent』『rany day』『サブリミナル』『COOL』
作詞は、全てNAOとなっている。作曲はSIVA、編曲者の名前には、KENZOとあった。
フローズンフレアが、Frozen Flareとなる前の、インディーズ時代に出したミニアルバムだろう。
〈何処かへ 何処かへ いつしか繰り返してた 何処かへと 見果てぬ夢がある 空を飛びたいよ いつか言ってた君が 眩しい〉
愛美は、たまたま開いたページにあった『彼方へ』の、歌詞を読んでいた。
「何、勝手に見てんだよ」
ああと思った時には、玄関で靴を脱ぎ終えたザキがズカズカ部屋に上がってきて、愛美の手からブックレットを奪いとる。
お帰りと、能天気な台詞を、愛美はザキとも長門にともつかずに言った。
床にちらばったままのCDを、ザキは不機嫌そうに片付け始める。片付けると言うより、やはり積み上げていくだけだ。
「車とってくる」
長門は玄関から上がらないまま、愛美に向かってそう言うと、帰ってきたにも関わらず、また姿を消した。
移動には自身の車を使うことにしたのか。昨日のようなことが、またないとも限らない。
その間は、愛美がザキを見張っておけということか。
少しは信用されているのだろうか。




