STEP1 Frozen Flare 46
大きな身体の長門が、小さなキッチンに立つ姿は、ある意味微笑ましい。
愛美は指図するだけで、作るのは長門だ。
床に放ってあった膨れ上がったゴミ袋の中身は、殆どインスタントやレトルトパウチ食品の包装紙ばかりだった。
仕事中に出されるものも仕出し弁当や店屋物では、成長期の身体にいい訳がない。
愛美は、部屋の中にアルコール類の缶や瓶がないことと、煙草の吸い殻がないことをそれとなく確認した。
片手鍋に水を入れてマカロニを茹でながら、具は別に炒めて塩胡椒で味付けをし、茹だったマカロニと具をバターと冷蔵庫にあった賞味期限が明日までの牛乳を合わせたソースで絡める。
スープスパゲッティーではなく、スープマカロニだ。
マッシュルームにホワイトアスパラ、グリンピースや人参、コーンと具沢山だ。鶏のささみを裂いたものを入れても、いいかも知れない。
生憎なかったが。
あっさりとしていて胃にももたれず、それでいて栄養のことも考えている、なかなかの一品だ。
見た目もおいしそうで、愛美が作るものとは大違いだった。
自分で作ると、絶対に見られたものではなく、また味も思い通りにはいかないものなのだ。
長門の料理の腕前はと言えば、普段やらないにも関わらず、愛美がやるよりも余程手早かった。
味も良かったらしい。
ザキは何も言わずに黙々と食べていた。
それにしても、ザキは小柄だがよく食べる。歌うと体力を消耗すると言うように、仕出しの弁当を食べたあとも、菓子パンを噛っていたほどだ。
大きな形をしていて長門は、殆ど食事らしい食事をとらない。
長門は、アルコールでカロリーをとっているのかも知れなかった。
SGAの男の内――愛美を除いて四人ということだが――巴以外全員が料理ができるということのようだ。
紫苑はプロ級、東大寺は残り物・冷蔵庫にあるものでボリューム満点の腹持ちのいい料理を作るし、長門はごはんの炊き方一つ知らない癖に、一人前に料理を作ってしまった。
一体自分の何が悪いのだろうと考えながら、愛美は汚れた皿を洗っていた。
長門は、役目を終えたと言わんばかりの顔で、ぼんやりと床にじかに座り込んでいる。
床に散らばっている物をどけるのが面倒だったものか、そこだけが開けていたゴミ袋の隣に陣どっていた。
やはり、長門はよく分からない奴だ。
愛美が後片付けをしている間に、ザキはシャワーを浴びにいった。服は、コインランドリーで洗っているようだ。
皿を洗ったのはいいが、手を拭くタオルは一体どこだろう。見あたらないところを見ると、洗面所だろうか。




