STEP1 Frozen Flare 39
ザキは、鬼の首でもとったかのような居丈高な口調で、
「愛情の押し売りってやつ。レベルは低い癖に、人並み以上にやることやってんだ」
と、愛美を愚弄した。
知り合って一時間かそこらの人間に、ここまであからさまに言われる覚えはない。
幾度もの転校で、いじめにも度々合ってきたが、ここまで嫌われ抜いたことがあっただろうか――いやない。
転校生なんてものは、それだけでいじめの対象になるものだからだ。
馴れてくると、いじめも自然消滅してしまう場合が多い。
しかし、それなのに、それなのに。
もうザキは、愛美が家に来るものと決めてかかっているようだった。
「歌うと腹減るから、夜食な。油っこいのは嫌だし、インスタントもんも嫌、寝る前だから、あんまり胃にもたれないようなもん」
何を言われているのか、愛美は全く理解ができなかった。
ザキは再び、睨みつけるように愛美を見る。
「作れるんだろう? 女なんだから」
山彦のように、ザキの言葉が愛美の中で繰り返される。
愛美は顔中を笑顔にして、ザキには聞こえないように呟いた。
「もちろん。毒入りでよければね」
案の定、ザキは聞こえなかったらしく、聞き返すように一歩愛美の方に寄る。
「何か言ったか?」
愛美はニコニコと笑いながら、
「何にしようかなぁってぇ」
と、嘯いた。
まあいいと言うようにザキは頷いて、背を向けようとしたがその時、まだ笑っていた愛美の肩を長門の手が掴んだ。
「俺がやろう」
え?と、愛美は普段の顔に戻っていた。
「普段作らないのに、料理できたんですか?」
愛美が知る限り、長門は台所で料理などしない。
食事というよりも、酒のつまみのようなものを、でき合いで買ってきて食べているようなものだ。
放っておけば、何日でも平気で食べていなかったりもするような奴である。
愛美が気付いた時には、長門の分も作って食べさせるようにしているのだが。
料理ができるなど、初耳だ。
長門は、愛美の問いに顔色一つ変えず、
「人が食べるものなら」と、言った。
やりとりをしっかりと聞いていたザキが、どんな表情で愛美を見たか、わざわざ言うまでもないだろう。
「料理もまともにできないのかよ」
愛美は、言い返すことすらできなかった。
ザキは軽い足どりで、愛美達の側を離れていった。
戻ってきたライに、セッションを始めようと声をかけている。その声が随分明るいものであることに、その場にいた誰もが驚いていたことだろう。
ザキのことだから機嫌を損ねたまま、今日は帰ると言い出し兼ねないと思われていたからだ。




