表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/399

STEP1 Frozen Flare 37

 戻ってきたウミハルは、紙コップから何か飲み物を飲んでいた。ライは、ここにはいない。


「独断と偏見か」

 長門が再び、ボソリと言う。


 愛美が何か言い返そうとすると、長門は重ねて言った。

「ああ言うのがタイプなのか?」

――な。


 思わず愛美は大きな声を出しそうになり、慌てて回りを見回して、誰もこちらを見ていないことを確かめた。


「別に、誰もそんなこと言ってないでしょう」

 

 穏やかな物腰、物静かな口ぶり、聡明そうな顔立ち、憂えているような眼差し。

 可愛いよなんて言いながら、照れているのか向こうを向いている、そんな人。


(そりゃ、いつでも無表情で無愛想で無口で、口を開けば嫌味しか言わないような傍若無人、変態最低野郎とは違うわよ。そりゃ格好いいなと思うけど、けど。タイプと言えばそうなのかも知れないけど、けど)


「やめた方がいい」

 長門は、冷ややかにそう言った。


 愛美は、思わずまじまじと長門を見つめてしまう。


(何よ。それ。何で、そんなこと)


「何であなたに、そう言うこと言われないと駄目な訳? 向こうは芸能人で、私はしがない女子高生なんですからね」


 愛美は、そう言ってプイと横を向いた。


 胸がドキドキしている。


 そうだ。

 何をむきになっているのだろう? ちょっと優しくされた、ただそれだけなのに。ちょっといいなって、そう思っただけなのに。


 俯いている愛美を見ないようにして、長門は前を向いて言った。

「何にしろ、俺の仕事は奴をガードすることだけだ。それ以外のことは」


 それ以外はで言葉を切った長門に、愛美は顔を上げた。


 ザキがこちらに歩いてくる。言われなくても続きは分かる。お前が勝手にやれということか。


 愛美の方などチラリとも見ずに、ザキは長門の前に立った。

「オレん家まで来る訳?」


 長門は淡々として、

「目を離すなと言われている」と、言った。


 その答えは初めから分かっていたのか、ザキは頷いただけで別に何も言わなかった。そして、今度は愛美をジロリと睨んだ。


(長門がメインで私は、キャベツについている虫か)


「お前も来んのかよ」


 愛美は焦った。


 そういうことは全然考えていなかった。ただのアシスタントが、芸能人の家までついていく理由とはなんぞや。


 ああ、スタイリスト見習いなんて訳の分からないものじゃなく、ボディーガード会社から派遣されたアドバイザーとか言ったら適当に格好がついたのだ。

 日本人は横文字に弱い。


(しかし、なぜ私にそんなことを聞く?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ