STEP1 Frozen Flare 36
ライブでメンバーが足りない時など、サポートでウミハルが入ることもあったようだ。
ライブを聞いたプロデューサーがシヴァの腕に惚れ込み、フローズンフレアごとデビューということになった。
デビュー直前にボーカルのケンゾーが、自分はシヴァの添え物に過ぎないのかと、土壇場でナオとともに離反する。
慌てて別のメンバーを探していた時、ライブハウスにも出入りしていたライが、それならと言って紹介したのが、高等部の軽音部で有名だったザキだったのだ。
「シヴァ、ヨータ、ライ、ウミハル。ね」
長門は愛美の言葉を聞きながら、ボソリと呟いた。
いつもながら、何を考えているのかも分からない。
四人はそれぞれ本名を、柴田さとる、平井陽太・光太、そして内海春樹という。
ライ自身もそうだろうが、元々のメンバー内でザキと親しい間柄の者は、誰一人としていない。
バンド活動などはしていなかったザキだが、彼の作る詩の世界と歌唱力に、プロデューサーは一も二もなくザキのボーカル入りを認めた。
いや、入ってくれと、泣きついたようなものだ。
そして、別のバンドで活動していたウミハルと、ギター小僧だったヨータの弟ライをいれて、新生Frozen Flareは誕生した。
しかしウミハルは人数合わせ、ライは色もの、ヨータは元からのメンバーだったからと、当初かなり厳しい見方もされたらしい。
会社のそんな思いを吹き飛ばすように、これまで彼らはしっかりやってきた。
それでも目立つのは、ザキばかりということになる。
シヴァとしても面白くないに違いない。里見は、そんな言い方をしていた。本来スカウトされたのはシヴァだ。
あんなザキのことまでフォローするようなシヴァに限って、ザキを陥れようと裏で画策したりするだろうか。
アリバイ。
余計に恨みを飲んでいる可能性もある。シヴァに好意を持ちながらも、愛美は冷静に状況判断を下しているのだった。
「元メンのケンゾーも入れた方がいいかもね。共犯って線もあるし」
里見の話を合わせて見ると、バンド内のきな臭い雰囲気も、不思議でもなんでもなくなる。
誰もが何かしら、屈託を抱いていてもおかしくはない。
恨み、つらみ、嫉み。
それこそ魑魅魍魎の巣窟である。しかし。
「シヴァ以外は、全員可能性あるわよ」
愛美は、自分に言い聞かせるかのようにそう言った。
今、シヴァは里見と話をしているところだ。ヨータは考えこむような顔をしながら、スティック一本で、規則正しくハイハットを叩いている。




