STEP1 Frozen Flare 33
エフフレアのメンバーは、それぞれ楽器の用意やチューニングに余念がない。
どこにいったものかザキの姿はなく、もちろん長門の姿も見えないのだった。
ザキなしで、メンバーは音合わせを始める。何フレーズか演奏しては、互いに問題がないかを確認し合っていた。
ヨータが盛んに陽気な調子で声を飛ばし、ウミハルがそれにちゃちゃを入れ、ライは自分の演奏に黙々と集中し、リーダーらしくシヴァが彼らの手綱をとっているという感じだ。
そうしていると、それなりにまとまりのあるバンドに見える。
問題はザキなのだ。
愛美は、仕事の合間にシヴァの姿を確かめては、また手元の作業に集中することを繰り返していた。
和やかな時間は、やはりザキの登場によって打ち破られる。
不機嫌そうな顔でスタジオに入ってきたザキは、無言のまま中央のマイクの前に立った。愛美もようやく雑用を済ませて、一息つけそうだ。
ザキから離れた長門は、今度は影のように愛美の側へと近付いてきた。
「一度、Frozen Flareから通しでいこうか」
シヴァの言葉に、メンバー全員に見ていて気持ちのいい緊張が走った。
プラグの這い回った打ちっぱなしの床と、観客であるスタッフが、今のメンバーにとってのステージだ。
殆どが半袖のTシャツの私服姿で、メイクも何もしていない彼らは、どこにでもいる普通の音楽好きの少年達に見えた。
三枚目のシングルの発売を前に、プロモーションのイベントライブが決行される予定になっている。
このメンバーでのワンマンライブは初めてということもあり、スタッフを含めたみんなの力の入りようも分かるというものだ。
長門が愛美に何か言おうとしたが、愛美は人差指を口元に当てて、静かにしているようにと合図をした。
イントロか、ベースギターの音だけが低く流れ出す。
ザキはマイクの前に立ったたまま、目を閉じている。みんなと同じようにザキの方を気にしながら、シヴァのキィボードが、ベースに重なった。
ゆったりとしたメローディーの繰り返し、次の展開を期待させるように一旦全ての音が消え、次の瞬間派手なドラムとギターが溢れ出した。
みんなチラチラとザキを見ているが、ザキはマイクに手を添えたまま、瞳をイラついたように開いた。
盛り上がりを見せたぶん、今までが前奏でこれから歌い出すのかと思ったが、ザキはスタンドマイクからプイと離れてしまった。
尻きれとんぼのようにギターの音が途切れ、鍵盤とベース音も立ち消える。
ヨータがやけになったようにスネアドラムを乱打し、ハイハットを叩きつけるように弾いた。消さなかった金属音が、残響になって耳に残る。




