STEP1 Frozen Flare 32
それからは、気が付けば愛美の視線はシヴァを追っているのだった。もちろん、手元も耳も疎かになる。大失敗しなかったのが、不思議なぐらいだ。
峰が、それとなくフォローしていてくれたお陰だろう。
最終的には、峰に慰められる始末だ。本当なら、小言の一つも言われて然るべきなのに。
「気、張り過ぎちゃったかな。最初は大変だけど、そのうち仕事だって割りきれるから」
ザキに言われたことが、堪えているものと勘違いしたようだ。
愛美は、済みませんと謝るしかなかった。
言われるまで、ザキのことは忘れていた。それよりも、シヴァが気になって仕方がなかった。
気合を入れる為に顔をはたいてみたが、効果は得られなかった。
女の子している場合ではない。たかがアイドル、こっちはお仕事。一々ドキドキしていたら、やっていられない。
撮影が終われば、今日のお仕事は終わりという訳ではない。これからレコーディングスタジオで、打ち合わせとリハーサルが控えている。
移動には二台のバンを使う。シヴァは自分の車で来ていて、ヨータが相乗りしていくことになった。
残りは、分乗してバンに乗る。
ザキは、マネージャーの里見の運転する車で、峰やウミハルと一緒だった。もちろん、その車に長門も乗り込んだ。
愛美は、ライとともに他のスタッフ達と、同じ車に乗っていくことになる。
バラバラになってしまったこともあり、長門に里見の話を伝える暇はなかった。
長門は、愛美がいなくたって平気だろう。いつだって自分一人で、勝手にやっているのだから。
愛美は、やっぱり一人じゃ何もできない。
徹底して言われたことだけやって、ロボットみたいにオフの間は、何も考えずにいられたらいいのに。
手持ち無沙汰な時間と折り合いを付けるのは、とても難しい。そういう時、どうしようもなく愛美は孤独を感じてしまう。
一人で夜を過ごしたり、たった一人で事件と立ち向かう時には、決して覚えることのない行き場のない寂しさ。
他のスタッフ達は気遣いは見せてくれるが、やはり一緒に仕事をしている仲間同士で固まっている方が多い。
ライは、イヤフォンでずっと音楽を聴きながら、窓の外を眺めていた。
愛美は、転校した時にいつも感じるのと同じ心細さを感じながら、無性にSGAの誰かに会いたいと思っていた。
この際、長門でも構わない。見知った顔に囲まれていたかった。
レコーディングスタジオに着いてからは、里見や峰、他のスタッフに次々と雑用を頼まれて、長門と口を聞く暇さえ与えられなかった。




