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復讐の姫と妄想厨  作者: くじょー
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第三話 異世界での生活2part1

よろしくお願いします

俺たちがいた平原から西に三十分ほど移動すると、小規模ではあるが、町が見えてきた。


アリスに膝枕してもらっていたとき時、辺りを見ても平原続きで、何もなかったのに、何でこんなところに町があるのだろうか。俺は不思議に思い、アリスにそう聞くと、赤い頭巾をかぶって前を歩いているアリスが「ああ、それは魔法だよ、モンスター達から町を守るために、匂いや姿を隠しているんだよ。」と教えてくれた。ということは、一応彷徨っていれば町には着けたかもしれない。


しかしまあ、町に着いても何もできなかっただろうが……。その面ではアリスに感謝だな。


町に入ってからしばらく歩き、人気のない町の隅のほうまで行くと、煉瓦造りの一軒家が建っていた。その家の前まで行くと、アリスが足を止め俺に言う。


「ここが私の家、そして、今日から君が住む家でもあるんだよ。さあ、入ろう。」


アリスは俺に微笑みかけてから玄関のドアまで歩いて行く。


俺は先に行くアリスを見送って、自身は玄関から少し離れたところで家を見上げる。


煉瓦でできた二階建ての家、外見は現実世界の煉瓦造りの家と大差なく、やはり家を建てるのにはこの形がベストなんだなぁ、と俺は思った。


俺の家は煉瓦造りではなかったけれど、こうして元いた世界に似たものを見るとなんとなく落ち着く。なんて、早くもホームシックだろうか?


「おーい、どうしたのトール君?遠慮しないで入ってきなよ。」


感傷的な気分に浸っていると、俺を呼ぶ声がした。視線を落とすと、玄関でドアを開けたままの状態で、アリスがこちらに向かって手招きをしていた。


「おう、今行くよ。」


俺はそうアリスに伝えると玄関まで行き、アリスとともに家の中に入った。


アリスは玄関で靴を脱がず、俺も土足のまま家の中に入ると、そこには開放的な空間が存在した。


「ここがリビングだよ。」


そうアリスに言われて、俺は辺りを見渡す。


なんて言うか、余計なものがなかった。


あるのは台所らしき場所と、俺から見て右に一つ左の手前と奥に一つずつある、各個部屋に通じるであろう三つのドア、それと二階へと続く階段だけだ。机とか椅子とかソファーとかがまったく見受けられない。この世界ではこれが普通なのだろうか。


若干驚いている俺をみて、アリスが苦笑する。


「お義父さんね、なんて言うか余計なものを置きたがらないんだ。せめて机とか椅子は許してほしいんだけど、この広い空間を気に入っているんだって。」


「あはは……変わった人なんだな。」


つられて俺も苦笑してしまう。


「うん。まあ、いい人ではあるんだけど。」


アリスはそう付け加えると、階段のほうへ歩いていく。俺もそれについて行き、一緒に階段を上る。


「な、なんだこれ、凄いな!」


二階へ上がると、まず目に飛び込んできたのは、椅子や人形、何かの模型など、大量にあるそれら全てが、木でできている言わば木工細工だった。一階のリビングと構造はほぼ変わらないようだが、木工細工の作品が壁につるされていたり、床に置いてあったりしていて、一階とは対照的に、狭苦しい印象を受ける。


俺は壁につるされた作品の一つに近付くとそれを凝視する。種類はわからないが、魚の木工細工のようだ。


近づいて見てわかったのだが、作品は複雑な構造になっており、素人の俺の目から見ても、すごく手の込んだ作りだとわかる。


「アリスのお父さんは確か、木工職人って言っていたけど、もしかしてコレ全部アリスのお父さんが?」


アリスにそう聞くと、


「うん、そうだよ」


と、アリスはうなずく。


「へー。アリスのお父さんは手先が器用なんだな」


「うん、お義父さんに頼めば大概のものは木で作れるよ。例えば私をモデルにして原寸大の人形だって作れるんだから!」


アリスはまるで自分のことのように胸を張る。


「あはは、アリスは本当に自分の父親が好きなんだな」


「うん!」


と、そんなやり取りもしばしば。そろそろ俺たちはアリスのお父さんの部屋へと行くことにした。


二階の、三つある部屋の中の一番左奥の部屋。


そのドアの前に立つ俺は緊張していた。


ああ、なんだか緊張するな。えっと、なんて言うんだっけ、アリスさんを僕にくださいって言えばいいんだっけ?


などと、どうでもいいボケをかまして、多少心の余裕を取り戻す。


さて、行くか。俺は一度深呼吸するとアリスにうなずいて合図する。


俺の準備ができたのを確認すると、アリスはドアをノックした。


「お義父さん、私だけど、紹介したい人がいるから入るね。」


その言い方は本当に両親へのご挨拶みたいになるんだが……。まいいや。


「入りなさい。」


低い声がドアの向こうから聞こえてくる。


アリスはドアを開けて、まず自分が室内に入り、次に、俺も来るように促した。


「ほら、トール君」


「その、お邪魔します。」


室内に入ると、木材独特の香りが俺の鼻を刺激する。そこら中に木屑が散乱し、作りかけの作品が木屑の海におぼれていた。その散らかった部屋の中心に、机と椅子があり、椅子の上には一人の男が座って、俺たちに背を向けながら机の上で何かの作業に没頭していた。


「お義父さん、彼なんだけど。」


「ふむ。」


アリスのお父さんはいったん作業を中断し、椅子に座ったまま体をこちらに向ける。


「初めまして、榎宮徹と申します。今日は折り入って頼みたいことがございます!」


「帰れ」


「…………え?」


なんか取り付く島もない感じなんですけど。俺はアリスを見ると、アリスもあれぇ?と首をかしげていた。


「ふむ、徹とやら、冥途の土産に教えておいてやる。私の名前はハンス・ギルバード。アリスの義理の父親だ。娘はやらん。今すぐそこの窓から飛び降りるか私にぶち殺されて家畜の餌になるか選べ。」


「どちらにせよ死ぬんですが!?ていうか義理?えっと、ハンスさん?はアリスの義理のお義父さんだったんですか?」


ツッコミを入れつつ重大な点に気付く俺。


「お義父さん、それ秘密なんじゃなかったっけ?」


アリスはあきれたようにハンスさんに言う。


「つい口が滑ってしまった。というか徹とやら、貴様、まさか王国の手のものではないだろうな。ふむ、怪しい、秘密も知られてしまったことだしますます生かしてはおけん。よし、死ね。」


「何で!?よくわからないけどあんたが勝手に自爆しただけだろ!それに、王国の手のものってなんだ!あんたも中二病か!便所飯なのか!?」


「うるさい黙れ。それに、言っている意味が分からん。やはり王国のものだろう!とにかく死ね!」


「だから王国のものって何だ!ていうかあんたさっきから死ねしか言えねえのかよ死ね!」


「黙れ!貴様なんぞに娘はやらん!死ね!」


「それを決めるのはアリスだろ!死ね!」


「減らず口をこの若造が!その猿みたいな顔を燃やしてスッキリさせてやろう!」


「来いよジジイ!まだ死んでねえけど火葬してやるぜぇぇぇぇ!」


「「偉大なる炎の女神フレイよ、我、人の子である榎宮徹〈ハンス・ギルバード〉の祈りを聴き入れ、此処にその強大な力の片鱗を示せ、ファイ――――ぶへっ!?」」


俺とハンスさんは同時に頭に衝撃を食らい、魔法の詠唱を中断させられる。


「そろそろいい加減にしなさいな」


俺たちを止めたアリスはにっこりと笑っていた。よし、土下座しよう。


俺とハンスさんは同じことを思ったのか木屑だらけの床にひれ伏してアリスに土下座した。


「「すみませんでした」」


しばらくそのままの体制でひれ伏していると、頭上からアリスがはあっ、とため息をついたのが聞こえる。


「二人とも、もう喧嘩はだめだよ?」


アリスは諭すように言う。


しかし、ハンスさんはガバッと頭を上げ、なおも食い下がる。


「だがしかし、アリスよ、このトールとやらは信用できん、もし王国の手のものだったら……」


だから王国の手のものって何だよ……。


「お義父さん、この人は多分平気だよ。」


そう自信たっぷりに言うアリスに、


「何でそう言い切れる?」


ハンスさんは問う。


「トール君はね、なんの反応も示さなかったんだ、私の髪色と瞳の色に(・・・・・・・・・)。」


ハンスさんはハッとなって、


「アリス!まさかお前!髪を隠さないで外に出たのか!?もし誰かに見られたりでもしたら――――」


そう叫ぶが、アリスは首を横に振る。


「ううん、大丈夫。平原まで行って誰もいないのを確認した後頭巾を取ったから。」


「そういう問題ではない!いいか、もう外で頭巾を取ってはだめだ!わかったな!」


「……ごめんなさい、わかった、外さないようにする。」


ハンスさんの叱責に、アリスは素直に謝罪した。


「でも、とにかくトール君は王国の人じゃないってわかったでしょ?」


「うむ、確かに、奴らならば放っておくまい。トールが奴らの仲間ではないということは信じてやろう。だが、」


ハンスさんは横にいる俺をキッと睨み付け、


「娘はやらん!」


そう言い張った。


「いや、あのハンスさん、あなたは盛大な勘違いをしているのですが?」


そう俺が言い、


「トール君は今事情があって住むところがないんだよ、だからお義父さんのところで泊まり込みで働かせてもらえないかって言いに来ただけなんだよ。」


アリスが補足する。


「……なんだと?ならどうして先にそうと言わんのだ」


「いや、ハンスさんが言う前に遮ったんでしょうが」


「…………。」


「…………。」


「…………。」


「…………。」


「いや、なんだ、その、……私が悪かった、すまん。」


そういってハンスさんは俺に頭を下げたのだった。

異世界での生活2はまだ続きます。

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