レンラクンの活用
次の日。
「なんか、ありすぎてない…? なんで、そんなに落ちてんの」
「いやぁ… なんか、舞い上がる直前で、地に落ちた感じ…」
昼休憩で、いつも行っているカフェで、テーブルにへばりつく私。
「説明足らんわ。今日残業で、休憩の時間30分延長だし、ゆっくり聞くよ」
それから、昨日あった事を話したんだけど…
「なーんだっ。もう恋してんじゃん。それなら、自分から連絡すればいいだけ」
「か、簡単に言いますけどー、石田さんの性格知ってますよね? 私から連絡すれば、しめしめって思うよ絶対… てか、まだ恋とは確定してない…」
再び私の顔はテーブルに向かっていく。
「どう思われようとも、石田さんと繋がりたいのは確かなんでしょ? 連絡待ってるぐらいなんだし。なら、しめしめ思わせといたら良いんだよ。関わっている間に、無理だと思ったら切れば良い話だしさ」
「そう…かな…」
ゆっくりと顔を起こし、スマホを眺め、レンラクンを開いた。一度もトークされていない、真っさらな画面を見つめ、『こんにち』と打ち始めたが、すぐに消し、次は、こんにちはと書いているスタンプを押すが、プレビューの状態で再び消し、何を送ればいいのか分からなかった。
「ねぇ、希ちゃん。連絡する内容、無いんだけど。用もないのに連絡するのって、こんなに難しかったっけ… って、ヤ!」
バンッ!
「え、何で、テーブルに頭突き?」
希ちゃんの目が点になる。希ちゃんに事情を説明したいが、今は顔をあげれない。だって…
「どうしたのよ…」
希ちゃんは、私の気持ちを悟り、小声で心配の言葉をかけてくれた。
せっかく小声で話しかけてくれたのに、その小声でさえ許されない事態だ。私は、レンラクンで、希ちゃんに伝えた。
『この店に、石田さんがいる…』
『えっ!! 店に入ってきたところ見たの?』
『うーうん。既に、コーヒーがテーブルに乗って座ってる。先に店に居たのか、私達が話に夢中になっている時に入ってきたのか…』
私は希ちゃんの影で隠れ、そっと振り向く希ちゃん。
まだレンラクン経由での会話は続く。
『あの、ブラックのノートパソコンの横にアイスコーヒー置いてる人が、石田さん?』
『御名答。よく分かったね』
『いや、ちょうどその周り、女の人しか居ないから』
ブンッ!!!
「女の人!?」
何のために隠れていたのかというほど、音を立てて立ち上がり、石田さんの居る方へ、顔を向けた。
バチッ!!
案の定、目が合ってしまった。
石田さんは少し驚いていたが、優しく微笑み、手を振ってきた。私は顔を引きづりながらも、手を振り返し、スーッと、希ちゃんの影に隠れる。
ブブッ…
マナーモードにしているが、レンラクンの通知だ。
(石田さんだ…)
希ちゃんも、言葉に出さなくとも察してくれて、内容を聞きたそうにしている。石田さんが送ってきてくれた内容は…
『偶然だね。僕の話、してくれてたんだね。嬉しいよ。今日、仕事何時まで?』
だった。
(いや、聞こえてても知らないふりするだろここは! って、イラッとしたのに、仕事終わりに何かあるように思わせぶりな質問… だめだ、この人と関わると、なんか疲れる…)
「おいおいおい、どうした!?」
魂が抜けた私を心配して、希ちゃんは店から一緒に出てくれた。
職場に戻る帰り道で、やっと魂は戻り、気兼ねなく会話が出来るようになった。
「まじかー。聞かれてたの、だいぶ恥ずいねー。でも、これで連絡取るキッカケ作れたじゃん。ラッキーって思っとこ。今日、ご飯とか誘ってくるのかなー?」
「いや。これみて」
希ちゃんが、私のスマホを眺めると、凄く顔を引き攣っている。
仕事の終わる時間を聞かれたのは、なんとなくという理由だったからだ。思わせぶりで腹を立てる関係にもなっていないのに、まんまと惑わされ、虚しく、仕事を再開した。
「はーーー、おわっだぁーーー。この事務仕事、介助スタッフがやらなきゃだめなの? 合間見てやってるけど、目離して、何かあったらどうすんのって感じよね。事務の人雇って欲しいー」
「分かる」
希ちゃんの言葉に賛成だが、休憩が終わってから、私の頭の中には、微笑む石田さんの顔がずっと映っていた。
「石田さんの事考えてんでしょ」
「ちっ、ちがっ。そうだけど…」
誤魔化そうとしたが、希ちゃんには、嘘が通じない。
「終わりの時間聞いてみただけって言われてからは、なんて返したの?」
「分かりましたって返した」
「は?…」
石のように固まる希ちゃんを見て、やってしまったかもしれないと気づいた私。
「もしかして、私、やってる…?」
「完全にやってるよ。自分で話終わらせてどうすんのよ! 早くなんか送りな!」
「う、うん… 家帰ったら送るよ…」
「なるべく早く送ったほうがいい。明日とかになると、送る内容また困るよ」
「はい…」
それから、私服に着替えて、希ちゃんと共に外に出た。
するとそこで待っていたのは…
お読み頂きありがとうございます。
投稿間隔が空きすぎていますが、最後まで書くつもりなので、良ければ、次回もお読み頂けると幸いです。




