03.粉雪日和
春休み3日目。
今年度最後の雪雲の日。
ここ「少し久しぶりの雪だね」
のの「天気予報によると、最後かもしれないらしいね〜」
地肌に触れればすでに溶けて無くなってしまうほどの雪をこの身で受け止めている。
冬の火蓋を切ると同時に、冬の終わりを語る静かな白い粒だ。
のの「これぐらい降れば、雪だるまは安泰だね」
ここ「まだ雪だるまなんかに固執してるの……」
のの「いいじゃないか、私の友達なんだよ」
夜遅くから降り続けたこともあり、微量ながら雪が再び積もっている。
少し塊を掴めば、思わず投げつけたくなるほどに積もっている。
ここ「イタ……!?」
のの「へへん」
ここ「雪玉投げるのは危ないって教わらなかったの?」
のの「粉雪なら柔らかいから大丈夫だもーん」
雪が積もれば雪で遊ぶのが通りであろう。
かき氷よりも細かく、毛布よりも軽い雪を優しく丸めてまた投げた。
のの「えいっ」
投げた雪玉は、宙を舞いなから降ってくる雪をかき集めて次第に大きくなっていく。
○○玉が仲間の○○を借りてできるものならば、雪玉も仲間の雪を借りて強くなるのが通りだろう。
月一つ分まで膨れ上がった雪玉は、そのままここの頭上へと落ちた。
ここ「ヒィャッ……。あれ?痛くない」
のの「おおぉ〜…」
粉雪といえどあれほど多ければ、埋もれてしまっても無理はない。
しかしここは、ののがどれだけ見上げても顔が映らないほど「巨大化」していた。
ここ「あれ。もう夜なの?」
「……いいやまて、今日は曇ってるはず」
疑問に感じるのもそのはず。体の半分以上は宇宙に飛び出しているのだから。
のの「成長期ってすごいね〜。私もそんくらい大きくなれるかなぁ!?」
ここ「私でも無理があるんだけど!?」
目を輝かせながら、人一倍小さいののはここを見つめた。
体が自由自在に変化できるその特殊性に惹かれてしまったのだ。
のの「私も雪で育てば大きくなる?」
ここ「人間としては大きくならないかと」
生まれも育ちも雪であるここと違い、ののは生まれも育ちも町中っ子だ。
生活習慣も価値観も何もかも違うため、再現性は皆無と言っていいだろう。
ここ「それにここまで大きくなると身動きが取れないよ」
のの「手も足も出ないもんね」
ここ「住宅を踏み潰すわけにはいかないし…」
のの「でも小さくなんてなれないでしょ」
高身長の悩みである。
体を痛めずに小さくなることは困難極まりない。
小学生2年生と間違われるののが唯一の特権こそが小さいことでもあった。
のの「やっぱ、大きくなりたいなぁ……」
「あっ!そうだ」
何かを閃いたのか、周囲の雪をかき集めてののは大きな山を作り上げた。
のの「これなら大きくなれなくてもここの目の前までいけるっ」
ここ「何これ……富士山?」
のの「月山」
ここ「エベレストじゃなくて?」
のの「面白山でもいいよ?」
ここ「標高下がってない?」
地面から大気圏を打ち破りそびえ立つその山は「面白山」と命名された。
標高150kmにも及ぶ巨大な山が今にも太陽系のバランスを崩しそう。
のの「面白山はね。世界一辺鄙じゃなきゃ行けないの」
ここ「名前負けするよりはいいのかしら……?」
のの「乙女の名前して、男勝りなあいつよりは名前負けしないよ」
ここ「誰の話…?」
ののの年上の友達のことである。
僕っ子で、よくものを壊すことに定評があるしがない少女だ。
最近忙しくて遊んでくれないからか、ここはまだ会ったことがない。
ここ「まぁ、それはいいとして。そろそろ元に戻りたいわ」
「このままじゃ家に帰ることすらままならない」
のの「それなら!いいものがあるぞ」
そういうと、山頂付近にびっしりと敷き詰められた人工衛星を物色し始めた。
おそらく地球上の電波事情は阿鼻叫喚になっているのだろう。
のの「よし、あった!レーザービーム出せるやつ」
あったらいいなと妄想を膨らませていたレーザービーム衛星が実在していた。
これはののにとって運命の出会いと言っても過言じゃないだろう。
ここ「それで何を……」
のの「いいからいいから」
銃口をここに向けてセットし、エネルギーをチャージしていく。
空から降る電流は、この兵器による自作自演だったかのように天気が溢れ出している。
やがて、発射音と同時に重力が狂った太陽系惑星が一直線に並びレーザーの中へと飛び込んでいく。
のの「いっけーーーーーーー!」
ここ「えぇぇえええ!???」
世界は、粉雪のように真っ白な粒と成り果て。
次目覚める頃には、自宅のベットの上であろう。




