第59話 イカれたS級女冒険者パーティーのメンバー紹介
王都を出発した馬車、
それぞれの馬車で『魔の谷』へ向かっていたのだが、
どういう訳かシグリヌさんに夢中な女性冒険者パーティーがこっちに乗ってきている。
(狭いよ、と言っても何とか座っている)
気が付いたら僕はシグリヌさんの膝の上に座っていた、
まあいいや、ということで『ガーデンオブリリーズ』の自己紹介、
なぜかシグリヌさんに名乗れることを喜んでいるみたい、ようやくまともに相手にするからね。
「まずは私、リーダーのマロウで魔法剣士、剣に魔力を込めて戦うシグリヌ様と同じタイプです、
前衛をやっていますがシグリヌ様との相性はばっちりだと思います、私の戦い方としては敵に合わせ、
適した属性の魔法付与を剣にかけるのですが、やはり全てにおいて相性の良い光魔法のシグリヌ様には負けてしまいます、しかし……」
自己紹介だっていうのにシグリヌさん上げに余念が無いな、
まあこれだけシグリヌさんの力になれますよっていうアピール、
そういう意味での自己紹介かも知れないけれども、でもS級だけあって有能なんだろうな。
「ふむ、敵を見て瞬時にか、判断能力が素晴らしいな」
「はい4属性全ての魔法を憶えておりますので、是非ともシグリヌ様の相方に!」
「残念だがその位置はすでにファロラが居る」「でしたら私はその反対側に、3人並んで!」
まあ確かに1度、マロウさんの実力は見てみたいな、
そこまで身体が大きく無いから全てにおいてバランスが良いのだろう、
あとは判断力が素早いのか、そういう嗅覚は鋭そう、シグリヌさんに目をつけるあたりも含めて。
「次の紹介を頼む」「はいシグリヌ様、サブリーダーの僧侶剣士のピアニです」
「わたくしは前衛で回復役もしております、剣と杖兼用です、剣の先から回復魔法を放ちます」
「ほう、珍しいな」「この剣に攻撃の時はリーダーに付与魔法をかけていただいて、それに合わせた敵を」
なんだか戦闘シーンが想像できるな、
敵を斬りつつ味方がダメージを受けたら、
ささっと剣を振って回復魔法をぶつけるっていう。
(忙しいけど、かっこ良さそう)
その判断もしっかり出来そう、
なにせサブリーダーを任されているくらいだ、
そしてマロウさんが美形タイプなら彼女は可愛い系タイプ。
「さぞかし重宝されるであろう神官剣士だな、それで次は」
「シグリヌ様にお言葉を頂けてうれしいですう」「次は弓魔法使いのサフラワです」
「リーダーからご紹介を受けましたサフラワです、攻撃魔法を矢にして撃つ魔法使いです」
そんな方法もあるのか、
ウチの魔法使いだとどんなに遠くても届くけど、
普通はそんなこと無いからね、長距離砲は先制攻撃に有利だろう。
「普通の矢は」「もちろん撃てますし撃ちますが魔法ですと矢の制限が無いので」
「なるほど便利だな」「最も魔力が切れては撃てませんが、その場合は普通の矢を」
「そこでか」「そしてその場合でも、矢にリーダーの魔法付与も」「チームワークが良いのだな」
身体的にバランス良く優れているうえに、
それぞれの能力を上げる魔法を持っているのか、
そしてちょっと気になった事を僕は聞いてみる。
「あの、ひょっとして回復魔法を矢にして放ったりは」
「離れた前衛にする事はあります、その時の矢の用意はピニアが」
「なるほど」「ですのでピニアが前衛に出ている時は使えません、その時はポーションを矢の先につけて」
そんなことまでするのか。
「ふむふむ、してそのポーションは」
「はい、リーダー」「最後に紹介するのは薬師ポーターのポルサです」
「あのっポルサと申します、お姉様方にはいつも可愛がっていただいていて、私もシグリヌ様に、ぜひっ」
小動物系の可愛さがあるが、
こういう女性冒険者ほど毒があるんだよなあ、
可愛がるつもりが逆に蹂躙されたり、とリムラさんを見ながら思う。
「薬師ということはポーション係か」
「はいっシグリヌ様、先頭の馬車に置いてきましたがポーション専用のバッグを」
「前に見たときにも背負っていたな」「みんなの魔力が切れた時の、最終手段ですっ!」
意外と思いつめられた時の手段をいくつ持っているかって大切なんだよな、
そういう意味ではこのポルサさんは最後の最後で効く重要な役割を担っていそう、
魔力だって普通は無限じゃない、肝心な時の魔力切れを防ぐために必要不可欠なのだろう。
(あとポーターってことは雑用もやっていそう)
一般的にポーターっていうのは、
単なる荷物持ち以上の仕事を持っているものなのですよ、
それで真っ先に思いつくのが雑用、次に作戦担当、マップの把握とかもね。
(僕のやっている素材回収もポーターの仕事です!)
ただ僕は勇者なのでそれを全面に出している、
いや普通は勇者はポーターなんてやらないんだけどね、
勇者だけのパーティーがあれば別だろうけど、そんな偏ったパーティー聞いた事ない、ウチみたいな2人居るのもレア。
「では改めてリーダーである私から……シグリヌ様、我ら四人『ガーデンオブリリーズ』いつでもシグリヌ様をお姉さまに迎え入れる覚悟はあります」
「いや私はそちらへは行かんぬが」「でしたらシグリヌ様を頂点として私たちが」「いやS級パーティーだろう」「おっそクランを立ち上げてみては」
「セルフィ」「そんなつもりは、ってガーデンオブリリーズの皆さん、クランは」「もう抜けたようなものです、シグリヌ様のために」「いやいやいや」
最初に会った時から青と白を基調としてた装備で、
水色の部分が無かったのでこれは2番目、風属性クラン『ウインドウィンディア』だな、
これだけの若さでS級なんだからモテるだろうに、一応は確認をしてみよう、いや一応ね。
「みなさんところで恋人は」
「フリーです」「男性はもうこりごり」
「シグリヌ様のために空けておりますっ」「初恋の相手はシグリヌ様、ということに」
うーん、どうしようか。
「セルフィ、どうする」
「んじゃあまあ、とりあえずシグリヌさん、剣を交えてみますか?」
「リーダーの、セルフィの命令であれば」「じゃあ次の街に着いたあたりで」
僕に迫ってくるガーデンオブリリーズの面々!
「で、ではそれで勝てば」「認めて下さるのですね?!」
「シグリヌ様との手合せ、それだけで私は、も、もう」「私たちが勝てばシグリヌ様をっ!」
「あくまで手合せだから、ということでとりあえずは対戦相手になるんだから、勝負まで前の馬車に戻って」
ということで、
上手い具合に前の場所へ追いやったのでした、
ふう、やっと馬車の中が落ち着いたよ、は良いんだけど……
「シグリヌさん、膝から降りて良いですか?」
「断る」「えええ」「リーダー命令であれば渋々」
「じゃ、じゃあ、もうちょっとだけ」「後ろから抱きしめても良いな?」
さて、この後はある意味、決闘だな。




