第1話 王都の冒険者ギルドにて
「すみませーん、E級冒険者パーティーの『ホーリーアンライヴァルド』と申しますがー」
「まあ可愛い坊や、ポーターさん?」「いえ、セルフィという勇者でリーダーです!」「えっ、あ、確かに勇者の紋章、失礼しました!」
「いえいえ、どこの街の冒険者ギルドでも、でもさすがに王都で言われると堪えますね」「では冒険者カードを」「仲間の分もあります!」
僕は前もって預かっていた冒険者カードを含め5枚を渡す、
見た目、僕の以外は白くきらきらした特別製だ、何より発行元が違うからね。
「これは、教会の!」
「はい、僕の仲間は4人とも元教会員でして」
「その方々は」「王都の教会で挨拶してて、僕は入れないので1人、先にこっちへ」
冒険者カードの裏に刻まれた魔法記録を魔水晶で読み取る受付嬢さん、
ふむふむと頷きながらメモしている、パーティー構成を確認しているのだろう、
そして最後の1枚を照らして驚く、直後に僕の顔を見て、静かに確認をしてきた。
「パーティーにもうひとり、勇者様がいらっしゃるのですか」
「はい元神官勇者ですね」「しかも、勇者には珍しい女性ですか」
「強いですよ、とはいえ身体はそんなに大きく無いんですが、ってちっちゃい僕が言えた話じゃないですよね」
ふむふむといった反応、
そしてカードを僕に返される。
「わかりました、E級とはいえ勇者クエストは多いので、見繕いますからしばらくお待ち下さい」
「はいはい、そういえば王都の冒険者ギルドには勇者パーティー用の待合室があるとかなんとか!」
「それはC級パーティー以上ですね」「そ、そうですか」「ですので適当な場所でお待ち下さいませ」
カウンターから離れて依頼ボードを見る、
やはり王都の冒険者ギルド、依頼が多いが、
これは大陸中の依頼が集まってきているからだね。
(王都周辺は、それほどは無いんだよな)
まあ盗賊対策の護衛は多い、
あと剣術指南や魔法指南など、
貴族相手の小遣い稼ぎには事欠かない、冒険者クラスが高ければ高いほど。
「おいおいそこの偽勇者!」
あっ、ガラ悪い連中が来ちゃった。
「いやこれ正式な冒険者ギルド発行の紋章ですが」
「どうせ拾ったとか、下手すりゃ死体漁ったんじゃねーか?!」
「ええっ、それ犯罪だし、そもそも冒険者カードでバレるでしょ」「それも偽造だろ!!」
疑い始めたらきりがないよねこういうの、
さっきの受付嬢に言って貰おうにももう引っ込んじゃったし、
王都のギルドでもこんな連中居るんだな、田舎でしか起きないと思ってた。
「ん~困ったなあ、僕単体だとよわよわなのは事実だし」
「やっぱり嘘じゃねえか!」「いや勇者なのは確実です、教会鑑定で、勇者独特の魔力が出ますし」
「よしわかった俺と勝負しろ」「えっ、稽古つけてくれるんですか?!」「そのかわり俺が勝ったらその装備一式よこせ!」
あっ、それが目当てか、
僕って辺境伯家の出だけあって防具の装備は豪華だ、
武器に関しても、うちのパーティーメンバーの実家付近で入手した素材を……
「わかりましたけど、僕の仲間が来てから」
「おうよ、ただしペアだ、俺はコイツと組む」「剣士と斧戦士ですか、バランスが命ですね」
「そんなのお前がわかる訳ねえだろ!」「いやいや、ウチの前衛2人も以前、コンビネーションを上手くするのに苦労して」
鼻で笑ってら、このガラの悪い連中。
「よし表に出ろ、勝ったら相手の装備を剥ぐ、同意するな?」
「良いですけど撤回しないで下さいね、ていうか僕は普通に稽古つけて貰えると嬉しいんですが」
「わかったから、さっさと仲間を連れて来い!」「そろそろ来るはずなんですが」「本当は居ないんじゃねえのか?!」
いや、僕が居なかったら困るのは彼女たちだ。
「ていうか、僕の装備に目がくらんで勝負に挑んだんでしょうが、
僕がいくら弱くても、それだけの金持ちだったらパーティーメンバーを、
めっちゃ高いお金で雇っているって可能性とか考えなかったんですか?」
その言葉に今度はゲラゲラ笑ってる。
「お前が弱過ぎるからだよ、いくら強い用心棒を連れていても速攻でお前を狙えばな」
「しかもこっちは2人だ、もしお前の相棒が魔法使いや弓使いでも、俺が1人で引きつければ簡単だ」
「斧使いさんタンクも出来そうですね、それでいて素早さも隠し持ってる感じですか」「逃げるなよ?」
僕が表に出ると、丁度やってきた白い4人、
うん、綺麗だなあ、通行人が見惚れているや、
先頭の背が高く背中に剣を2本差している女剣士シグリヌさんが僕に声をかける。
「セルフィどうした」
「なんだか2対2の決闘だそうです」
「誰がだ」「この2人と僕と、あと誰か」「よし私だ」「お願いします」
邪魔にならない一時的な馬車置き場、
そこで僕は黄金の剣を抜いて構えるが、
白き双剣の女剣士シグリヌさんは、背中の鞘に両手をかけたままだ。
(相手は早くも足を踏み込んでる、フライングするつもりだな)
僕の他の仲間も、
野次馬に紛れて見守ってくれている。
「よし、偽勇者とデカ剣士、準備はいいか」「は」
案の定、僕が『はい』と言う『は』で突っ込んできた!
「ふんっ!」「「ぐああああっっ!!」」
それを両手1本ずつ抜いた剣であっけなく撃破するシグリヌさん、
いやぁ相変わらず速い強いかっこいい、女性冒険者から黄色い声が上がっている。
「あ、のたうち回ってる」
「ほら男ども、さっさと立て!」
「いやシグリヌさん、これ無理でしょう」「回復致します~」
ギャラリーに入っていたウチの女僧侶リムラさんがやってきた、
いやほんとちっこいなあ、人の事は相変わらずあまり言えない僕、
高レベル高濃度な回復魔法が荒くれ2人をさっさと癒し切ったようだ。
「さて、装備を剥いで良いんですよね?」
「くそっ、憶えてろ!」「夜道には気を付けるんだな!!」
逃げる2人の両足に、
突如、光の鎖が絡みついた!
「「ぐはあっっ!!」」
転んだ転んだ、さらに全身にも光の鎖が、
宝石だらけの綺麗な杖を持ったウチの魔法使い、
眼鏡で色っぽいルビアさんが、動けない男2人の所へ。
「まず回復して貰ったお礼、そして謝罪、
装備を渡せないならそれ相応のお金を渡すべきでは?
あと最後の捨て台詞は脅迫ですわ、とりあえずその鎖は10日ほど固定しておきますわね?」
相手の仲間はとっくに逃げちゃった。
「うーん、これだと鎧とか脱がせられないなあ」
その僕の言葉にやってきた、
いかにも勇者という装備と独特の紋章を付けたのはウチのもうひとりの……!!
「ねえセルフィ、脱がせてどうしたいの?」
「ファロラ、いやね決闘に勝ったら身ぐるみ剥いでいいって」
「そんなお金に困ってないでしょ」「見せしめにどうかなあって」「そ、じゃあ首を刎ねるわね」
光り輝く勇者剣を抜いたファロラ。
「「ひいいいい!!」」
「セルフィ様! 依頼をいくつか見繕いました!!」
「……受付嬢さん、随分と良いタイミングで出てくるんですね」
それでも構わず剣を振り上げるファロラさん、
綺麗な銀髪がなびいて揺れている、そして……!!!
「待った!!!」
慌ててギルド内から出てきた大男、
さすがに止めに入って来たのはおそらくギルマスか、それとも……
顔だけ向けて声をかけるファロラさん。
「あなた誰なの?」「こいつらのパーティーを面倒見ているクランのサブリーダーだ」
「それがどうしたの」「なぜこうなった」「セルフィ」「決闘ですね、で僕らが勝ったら約束守らず逃げようとしたので」
「約束とは」「身ぐるみ剥いで良いって話だったんですが、こっちが勝ったら謝罪もなく逃げようと」「わかった、着てる物は全部持って行け」
鎖魔法が砕けるように解かれる。
「コルディさん!」「俺達、いつものことを」
「こいつらは冒険者を舐めている初心者の壁役なだけだ、許してやってくれ」
「いや、あんなことを言って、脅しと一緒で」「注意しておく、それともウチのクランを敵に回す気か?」
ちなみにクランというのは、
パーティーの集合体で派閥みたいなものです。
(いや、その言葉も立派な脅しでしょうに)
ちょっと軽くお仕置きするかな。
「あのー」「あっ受付嬢さん、じゃあみんな行こう、装備はいいや」
と、ルビアさんに軽く頷いてアイコンタクトを。
「命拾いしたな」
とシグリヌさんが背中の二本剣を揺らしながら冒険者ギルド内へ、
続いてルビアさんがにっこり笑顔で会釈して、その笑みの意味を僕は知っている、
そしてファロラさんが僕とギルド内へ、最後に僧侶のリムラさんが連中にひとこと。
「私~、解呪が得意なんです~」
解散するギャラリー、
光の鎖を解かれた2人とクランマスターは装備も取られず安心しているが、
彼らはまだ知らない、なぜなら相手にした白い一団は、その恐ろしい正体を隠しているという事実を……。




