十七話 悲しき願い
朧月学園の第三格納庫は冷房が効いていた。無事生還したら、冷房を取り付けて貰う約束だったからだ。しかし、いくら冷房をつけてもらっても帰らぬ人がいる。中隊員は酷く落ち込んでいた。
秀人はセドリックの写真を撫でながらあらぬ方を見ている。ロランは黙々と一人チェスをしていた。セドリックがいなくなってしまい、相手がいなくなってしまったのだ。アルヴィも落ち込んでいる。EMAの整備をしながらセドリックの名前を機体に彫っている。アルヴィはため息をついた。
「セドリックさん・・・くそっ!」
EMAでの戦闘以外でアルヴィが悪態をつくのは珍しいことだ。よほど落ち込んでいるのだろう。ロランはチェス板から目を上げた。
「愛斗隊長が掛け合ってくれてる。大丈夫だ。心配ない」
ロランが言った通り、愛斗は連日、学園長室に通い、セドリックの中尉への昇格を掛け合っていた。
学園長室では毎日同じような会話が続いた。
「何故です!何故認められないのですか!セドリックがいてくれたから我らは勝てたのです!」
愛斗は学園長を怒鳴りつけた。学園長は残念そうに首を振った。
「確かに、彼の犠牲なしでは勝利はなかっただろう。じゃが、これは上の決定。彼の中尉への昇格は認められない」
愛斗はまた叫ぶ。
「もう一度、もう一度掛け合ってください!」
しかし、学園長はうんとは言わない。
「今、お前にいった事が軍会議での最終結論じゃ。これ以上粘っても無駄じゃろう」
愛斗は必死だった。何と学園長に向かって、頭を下げたのだ。そう、土下座だ。
「お願いします。セドリックのために・・・」
こんな姿を他では見ることは出来ないだろう。それほど真剣だったのだ。
「セドリックは最期に俺に遺言を残しました。世界を託した、と言ったのです。俺への恩賞はいりません。只、セドリック、あいつだけには昇格させてやりたい。後は何もいりません」
学園長は愛斗を見て、哀れに思った。
「お前の気持ちはよく分かる。私が皇帝であったら間違いなく昇格させるだろう。しかし、上には逆らえん」
愛斗は立ち上がりドアの方に歩き出した。そして、去り際に一言言った。
「俺は認めない!こんな国を俺は認めない!」
愛斗は部屋を出てから涙を見せた。めったに見れないだろう、愛斗の無く姿は。
格納庫の扉が開き、愛斗が帰ってきた。ロランが走り寄った。
「愛斗隊長!セドリックの昇格は?」
愛斗は首を横に振った。
「駄目だ。軍会議の最終結論で認められなかった。おそらく、ノーマルだという事が原因だろう」
隊員が悪態をつく。ロランが泣き目で言った。
「畜生!畜生!何がノーマルだ!何がエレメントだ!セドリックは馬鹿なエレメントのために死んだんだ!俺はエレメントをぶっ殺してやる!片っ端から全員!」
隊員から賛同の声が飛ぶ。アルヴィがぼそっと言った。
「僕も納得がいきません」
秀人も叫んだ。
「セドリックの死を無駄には出来ない!」
愛斗は全員を見回し、言った。
「俺はこれからこの部隊ごと軍を離反しようと思う。その後は他のレジスタンスと組んでこの国をぶっ潰す。この作戦に異議はあるか?」
全員が一気に唱和した。
「異議なし!」
愛斗は頷き、言った。
「作戦を立て次第、報告する。それまでは何時もどおりだ」
全員が頷いた。
「よし、解散だ!」
秀人は心を決めていた。自分達を駒としてしか見てないこの国、エレメントに復讐してやろうと。
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