そして、未来から..終わらないストーリーへ
あれから…健やかに、時は過ぎた。
2人から生まれた子供はやはり、双子であった。
彼らの誕生が引き金になったのか…人類の間でも、ミュータントが生まれるようになった。
まだ数の少ない彼らを、勇気は迫害される前に保護し、望むなら…月へと連れてきた。
それから、50年。
月には、巨大なコミュニティが出来ていた。
月 のクレーターの地下で、ミュータントは自らの国を作り、争うことなく静かな時を過ごした。
勇気と睦美の子供である双子の弟は、父親からリーダーの地位を受け継ぎ、ミュータントのリーダーになった。
そして姉は、ミュータントではなかったが、優れた科学者になり、先生と言われ慕われていた。
睦美の分け隔てない愛情と、月という小さな国で育つことにより、姉は劣等感を持つことなく、自らの道を極めた。タイムトラベルの理論も、自ら発見した。
勇気は子供達に、未来の技術を一切教えなかった。
月にある酸素発生装置など、命にかかわること以外は。
そんな姉も、ミュータントと結婚して、子供を産んだ。
生まれた子供は、ミュータントであった。
「よかったわね」
病院で、孫を抱いた睦美の笑顔に、姉は涙を流しながら、喜んだ。
そんな幸せな日々は自然と過ぎ…幸せだった2人にも別れの時が来た。
ベッドで横になる勇気。
1人で月を開拓し、自らの仲間の為に生きた日々も、もう終わる。
「あなた…」
勇気のそばで付き添う睦美。
そんな睦美を見て、勇気は笑った。
「心配しないで」
その台詞を何度聞いたことだろうか…。
「はい」
睦美は素直に頷いた。
そんな睦美に、しわしわになった腕を伸ばし、勇気は肌に触れた。
そして、優しく微笑みかけた。
「心配しないで…。俺が生まれるのは…もっと未来だから」
「そうね」
睦美も微笑んだ。
そんな睦美の瞳を真剣な目で見つめ、勇気は話しだした。
「もし…未来の俺が、今のような未来を望まなかったら、どうなるんだろうな…」
「大丈夫よ」
あたしはクスッと笑い、即答した。
「あたしのような素敵な女の子に出会うんだから、絶対にこうなるわ」
あたしの言葉に、勇気は目を丸くした後、穏やかに微笑んだ。
深呼吸した後、あたしは勇気に微笑んだ。
「あなた」
「何だい?」
改まった感じのするあたしの口調に、勇気は笑みを止めた。
少し間をあけてから、あたしはキスをした。
それは、長いキス。
唇を離したあたしは、勇気に呟くように言った。
「未来も、過去も…あたしは、あなたを愛してる」
「俺もだ」
「あなた…」
あたしの瞳から、大粒の涙が流れた。
それから、数百年たった未来。
7月7日に、男の子が生まれた。
「記録通りだ!」
月の首都は、騒然となった。
なぜならば、彼こそが、のちにミュータントの始祖になる…勇気なのだから。
勇気は死んでからの遺言として、生まれてくる未来の自分には、自らの運命を教えないことと、過去へと旅立たせることを伝え残した。
少年は、争いのない世界ですくすくと育った。そして、過去へと旅立つ日がやってきた。
彼に告げられたことは、ただひとつ。
ミュータントのイブである…竹内睦美に会い、彼女を守ること。
彼女は狙われており、命が危ないと。
勿論、それは嘘である。
遺言状の最後には、こう書かれていた。
「彼女に会えば…俺は恋に落ちる。それは、運命よりも、確かなことだ」
「じゃあ、いってくるよ」
勇気が、月から過去の地球へとタイムトラベルする日。
時の粒子の速さを変える装置のあるドッグには、数多くの人で溢れていた。
「心配しないで。彼女は、俺が守るから」
心配そうな人々に、力強く頷いた勇気に、ただ1人だけが毒づいた。
「あんたなんか!過去で死んだら、いいのよ!」
(ええ!)
周りにいるミュータント達は、その言葉に凍りついた。
なぜならば、それを言い放ったのが、勇気の幼なじみであるメグだったからだ。
「い〜いだあ!」
勇気に向かって、舌を出すメグ。
「…」
普段なら言い返す勇気が、顔を附せ…何も言わない。
しーんと静まりかえるタイムトラベル用のドッグ。
そんな中、1人の女が静寂を止めた。
「まったく仕方がないわね。この子は」
人混みを掻き分けて、メグのそばに来た女は、ため息をつくと、メグの腕を掴んだ。
「この子…昨日、勇気くんにコクって、フラれたのよね」
そのまま、人混みの中へと連れていく。
「離せ!愛花!大体、お前があたしをけしかけたんだろが!」
抵抗したけど、メグは物凄い力で引きずられ、人混みの向こうに消えていく。
「馬鹿!勇気!あんたなんか、大嫌いだ!」
メグの捨て台詞に、周囲はほっと胸を撫で下ろした。
勇気は、メグが消えた方をしばらく見送った後、
「じゃあ、いってきます」
過去へと旅立った。
いつものように、あたしは渡り廊下に来ていた。
なぜだろう。
自然と足が向いた。
退屈で、少し気だるい日常の中、ここに来れば、何かが変わる予感がしていた。
「馬鹿みたい…」
毎日、夕陽が沈みかけるまでここにいて…、あたしは帰る。
何も起こらないのに、期待していた自分に毒づきながら、階段を下りる。
何もないのに…。なかったのに。
だけど、出会いはいつも突然。
あたしは、階段の途中で足を止めた。
その下に、1人の男の子がいた。
あたしは、彼を見ただけで確信した。
あたしは、彼を待っていた。
それは…おそらく、彼もいっしょ。
あたしを見上げ、動けなくなった彼。
2人の視線が重なった。
そう…あたし達は、恋をする。
未来も過去も。
あたし達は、出会い…死ぬことで別れる。
そして、生まれる。
その繰り返し。
あたし達は、永遠に出会い、永遠に恋をする。
それが、運命をこえた…二人の絆。
「俺は、あなたを守りに来た」
彼は、あたしに手を差し出した。
繰り返す時。永遠の運命。
何度も愛してる。
沈む夕陽の中、階段を下りるあたしを見上げ、動けなくなる彼。
2人の視線が重なった。
そう…あたし達は、恋をする。
未来も過去も。
あたし達は、出会い…別れる。
その繰り返し。
あたし達は、永遠に出会い、永遠に恋をする。
それが、運命。
「俺の子供を産んで下さい!」
「はあ?」
あたしは、顔をしかめた。
何度も繰り返すとね。こうなるのよね。
(でも、心配しないで!)
それでも、恋に落ちるあたしは…。
(はい、はい! )
運命じゃなくて、あなたが好きなのよ。
(大好きなの!)
時をこえて、また…あなたと結ばれる。
それが…二人の絆。
終わり。
単なるラブコメ。
単なる男女の話では、ここまで書けなかったでしょう。
ミュータント(超能力者)と人間。
その2つの種の間で、
どうすればいいのかと、考えながら、書きました。
それは、こんなにも人種が溢れている地球…肌の色だけで、宗教観だけで、相いれない人間は、どうすれば、わかりあえるのか。
結局、勇気達は地球を離れて、月という別の場所で国をつくりました。
いずれ、地球にいる人間と対等…つまり、話し合いができる力をつけるまで、彼らは人と話すことをやめました。
最近の国交を見ると、力がなればいけないのだろうかと思います。
勇気と睦美は、何度も出会いながら、
その答えをいずれ見つけることでしょう。
では、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
心に何かが残れば、嬉しいです。
この作品は、途中まで…黄昏に香る音色(第一部)のプロトタイプになっております。
話はまったく違いますが、よろしければ是非とも読んで見てください。
では、みなさん!
本当にありがとうございました。




