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カジノ ─ Casino ─  作者: くどい
四章 Y2K RebellioN
77/99

4-26 壱拾五話 ニアリーイコールタイムライン 4



                  ≒



 ひと晩かけてなんとか美咲の組み上げたシステムに彼から託された暗号を

入力し終えた。情報の解凍、再構成までの時間およそ18時間って所か───

この時代のマシンパワーにしちゃ及第点だ。


 時間遡行の関係上、タイムライン上に同一の人物が複数存在するという事は

時間連続性不一致を招く、俗に云うパラドクスだ。絶対に避けねばならない。

今の私のように肉体は別物、記憶と思考が限りなく本物だった場合、お互いの

脳だけ対消滅する危険がある。無論私もオリジナルもそんなのはゴメンだ。


 私をこの時代、即ち過去へ送ったオリジナル。彼が立てた作戦の仕上げに

必要なプログラムを書いたのもオリジナルであるが故に、時を超えた先で

同じものが書ける能力をニアリーイコールの私に持たせたとしたら重力炉に

入るまでもなく、パラドクスによって私達は対消滅することになっただろう。


 パラドクスの監視者を仮に時空検察官とでも呼ぶならば、そいつに気付かれ

ないよう暗号化したプログラムと、この時代でもそれを解凍可能な技術、その

二つが揃わなければそもそもこの任務の成功率は限りなく0%だ。


 そこでオリジナルはパラドクスを回避する為におおよそ人が認識

できない形でプログラムを私に授けた。イメージ(画像)として脳に書き込んだ。

イメージそれ自体には何の意味を持たない、まさにノイズだ。


 幾何学模様のような奇怪な図形を幾重にも折り重ねたこの画像情報(イメージ)

ステガノグラフィー(電子透かし)と呼ばれこの時代にも解読可能な技術として存在

している。これならば、美咲が組み上げた並列コンピュータの処理能力でも

イメージを文字列にデコード、つまり実行可能なプログラムへ解凍出来る

という訳だ。今より18時間という貴重な時間と私の記憶野容量の半分以上

と言うリソースを惜しみなく捧げれば───な。

 

 ステガノグラフィーとはつまり、絵葉書の裏に旅の思い出を書き込む

ようなもの。表面上はなんてこと無い風景写真でもそこに埋め込まれた

文字列は人工衛星の軌道計算だったりするわけだ。


 だが、この直接的でアナクロな手段では、わずか数十GB(ギガバイト)分のプログラムを

脳にイメージとして記憶すると、幾何学的な画像数万枚分にも及ぶ。

いわば容量が膨らむのだ。仕方ないとは云え、無理やり脳に意味のない

画像を書き込むのは40年後の技術を持ってしても洗脳に似た電子的処理を

施術する必要があった。

なにせ人どころか()()()()()も理解できないノイズなのだから仕方ない。


「おかげで私の脳は実に68%が使用済み領域になっちまった」

「こうして取り出したのなら綺麗サッパリと消えて欲しいものだがな」

すなわち、この体は新しい技術や知識をもう殆ど記憶できないという訳だ───

ま、どのみちこの作戦が成功したとして、私の余命は2年と無いのだから

それも構わないか───。


「おっと、もうじきクロサキと示し合わせた時間だな

 美咲達を迎えに──────」


 歩んできた短い人生を反芻をしている場合ではない、そう思った瞬間

今の状況を最も知られたくない相手からの呼び出しにイリジウムが着信を伝え

振動する。流石に肝が冷え、生唾を飲み込みイリジウムのアンテナを展開した。


『──────わたしだ』

『貴様、今の状況は一体何だ?』

『腹の虫が騒ぎ始めておるぞ』


一瞬、私の行動を気取られたかと思ったが、奴が伝えてきた話は残念ながら

それ以上の不都合な事実を匂わす内容だ。


「待て! 一体何の話だ」

額に一筋冷たいものが流れる。


『ほう、あくまでシラを切り通すつもりか』

『あるいは──────貴様自身が踊らせられていた(ポーン)に過ぎなかった訳か』

『捨て駒に用はない失望したぞエメス、もう会うこともないだろう』


「待っ──────クソッ!」

村瀬はそう言い残し電話は切れた。なんだ、この想定外の状況は!


 四課の頭目に秘密裏に接触、村瀬との直通回線を手に入れる。

おかしい、私から見える景色は()()()()に推移している──────


腹の虫? 村瀬が今の心情をわざわざ私に伝える必要は無い──────

そう思った瞬間に蔵の上から砂埃が顔面蒼白で視線を落とすイリジウム

携帯に降りかかる。


空振(くうしん)──────まさかッ!」


2x4の渡し板に放り投げたトレンチコートを引っ掴み富山邸の蔵を飛び出る

朝焼けの空を見上げ西に東に視線を送ると、まもなく空振がバラバラとした

実態音と成って上空を通り過ぎる。


「XMH-60Sのスコードロン?! そういう事かクソッ、ヤラれた!!」


 腹の虫すなわち寄生虫、生粋の国粋主義者である村瀬にとって

日本に寄生する存在それはつまり───京都(CASINO)か!

トライデントを借り受けるために必要以上に情報を落としすぎたか?

いずれにせよこの状況は全く想定外に推移している。


 踵を返し蔵へ戻り、美咲のパソコンに映る解析終了時間を腕時計に

カウントダウンとして入力する。内部から扉に閂を通し、隠し扉から母屋に

抜け、そのまま縁側より表に出る。


 そこには見覚えのある佐目毛の馬体が落ち着きもなく庭を歩んでいた

鞍まで乗せたその姿は、直前まで誰かを乗せていた証拠、気難しい気質の

コイツにおいそれと乗れるやつはそう多くない。

となると──────


 下唇を噛み歯笛を鳴らすと、急速に落ち着きを取り戻したそれは

首を上下に揺らしながら近づいてくる。


「やっぱりおまえジュンか? お前の主は何処だい? 案内してくれ」


 昔教わった所作で旧知の仲の背にまたがり、鐙で拍車を掛けると馬は富山邸

の裏山を登り始め、やがて開けた高台に出た。


 高台に人影はない。だが確かにここで捕物が行われた形跡が有る。

高台の中心から放射状に円が描かれた砂、蹄の跡の他に刻まれたタイヤ痕。

サイレントホーク(XMH-60S)が降り立ったのは此処か・・・


 ジュンから降り、高台へ続く唯一の道、そこに残されたタイヤ痕を調べる。

ブロックパターン、左右のタイヤ痕の幅は間違いなくハンヴィーだろう

やはり、美咲がここから連れ去られたと見て間違いない。

空路と陸路。判断を下すには情報が少なすぎる。


「ジュン、牧場へ帰ろう」

再び馬に跨り、崖を最短距離で駆け下りた。



                  ≒



「──────くッ」


 所々打ち倒された牧柵をジューンブライドが飛び越し私は手綱を強く引く。

跳ね馬のように高々と仁王立ちし嘶く馬体の上から望むそこは、目も当てられ

ないような惨状が広がっていた。


 富山邸の蔵に作られた美咲の電子ラボで作業する為に、私は此方側で一番の

手練、トライデントを警護として牧場に残していた。奴が屠ったであろう

連中の魂が、奴に吸収されず青く透き通る氷のロザリオとなって、そこら中に

浮いている。

 だがこの状況は明らかにおかしい、奴が直接驚異を退けたのなら、その魂は

即座に奴に吸収されるはずだ────。そう思いながら周囲を見渡す。


「あれは──────アヤメッ!!」

牧柵内のほぼ中央に、紫色の和装少女が天を仰ぎ倒れているのを認める。

少女は倒れても尚、地に突き刺したその忌々しいレリックを握りしめている

おかげで状況はおおよそ理解できた。せめて握りめて居たのが幸いだ

助かるかもしれない!


 私は少女のもとに駆け寄ると、その勢いを乗せて直接触れてはならぬ槍を

回し蹴りで吹き飛ばし少女を抱き寄せる。


槍との繋がりが絶たれ、絶命したように見開かれたその瞳が、禍々しい青色から

本来の紫色へ戻って往く。


「──────エメ・・・す、遅い・・・わよ」


「あぁ、すまない遅くなっちまったよ、よくやったな。もう平気だ寝てな」

 見渡すと、アヤメを取り囲むロザリオの下には、オレンジ色の弾倉が

着装されたM4がいくつも転がっていた。まさかと思い至り、蹴り飛ばした

槍の方向へ視線を流す。


「キサマ! 一体どれだけの時間この娘と魂を重ねていた!!」

片膝を付いた最敬礼の姿で、実体化したトライデントが答える。


「8秒です、申し訳有りませんエメスさ──────」


「バカヤロウ!! 殺す気かッ──────」

 そう怒りを発しながら現状にハッとする。

自分の知るタイムラインを今現在逸脱し、平行世界に至って入るのだとすれば

トライデントが変わらずこのタイムライン上に存在しているはずがない。

と、するならば現状はまだ正史の只中にある証拠だ。

しかも奴が私に対し刃を向けていない。


この想定外の事態も正史の只中。内包している可能性の一つに過ぎないと

いう事か──────


「わたくし確か額を・・・あれ?・・・フフ・・・よく覚えていませんわ」

「───エメス・・・わたくし・・・なにが有ったの?」


「あぁ、お前さんはな可能性を見ちまったのさ」

「果てなき力の本流。人のが到達する事が絶対に許されない境地をな」


「そう──────、よく・・・わかりません・・・わね」


「そうだな、もう寝てろ」


 トライデントが生み出す得物、それ自体を振り回す分にはそれほど影響はない

マズかったのはこの娘が槍使いだった事と、トライデント()()を振り回した事

そして何よりこの娘自体が誰あろうトライデント自身に憧れを抱いてたって事だ。

そう、奴を受け入れる土台が揃っちまっていた。おそらく連中の特殊弾でアヤメ

自身が無力化された後、アヤメの体をトライデントが乗っ取り制圧したのだろう。

となれば、この氷のロザリオの説明がつく。


まったく危ない橋を渡ったもんだ───


「で、──────状況は?」


「美咲様とチェロ様はお逃げになり、トミヤマ様がお怪我を──────」


「なッ! それを早く言え!!」

この王の狩場に、トミ爺の姿がないということは建屋の方か


 宿直室のある建屋の方へ回り込むと、吹き飛んだ入り口の脇に倒れ込んだ

トミ爺を見つけた。壁に上半身だけ預け腹部を押さえている。良かった

ひとまず此方側に犠牲(死者)は出てないようだ。美咲の行方を除いて────


「爺さん!」


「なッ!! キサマ今さらオメオメとッ!」

 トミ爺の傷を癒やすように、手を当てていたシラユキが立ち上がり居合抜きの

構えで私を阻む。マジでやり合うつもりのない白鞘の若造を押しのけてトミ爺の

もとに駆けつけるとすぐさま胸ぐらを捕まれ、そのまま超強烈な頭突きを食らう。


「ぐッ!」


「連中を招いたのはお前かエメス・・・ど、どうなんだ──────」


「御仁! 喋ってはいけない」


「シラユキ、具合は!」

「おい無視して状況が好転する訳じゃないだろ、話せ」


「右肺と脾臓を──────」


 状況から察するに、上空を飛び去ったサイレントホーク。

部隊がダイナミックエントリーブリーチングの際に使用した爆破を

至近距離で受け衝撃波で内蔵をヤラれたのだろう。


「爺さん、悔しいのは判るがもう戦力外だ判ってもらえるな?」

悔しいがコレばかりはもうどうしようもない。

この傷が尾を引いている未来を、私は()()として知っている。

たとえ私がその時此処に居たとしてもこの事態を退けることは不可能なのだろう


「あぁ、悔しいがな。ただお前さんをいまだ信用できねぇのも事実・・・だ」

「ゆ、許してほしけりゃな、態度で示してもらう!」

「・・・いいかッ娘たちを取り戻・・・せ」


「わかった詳しいことは漆黒姫とシラユキに聞く」

「トライデント、車を回してくれ」



                  ≒



 牧場に残すわけにはいかない連中の銃器をロールスのトランクに押し込み

トミ爺を町の病院へ預け、富山邸へ戻ってきた我々。()()のアヤメを美咲の

ベッドへ寝かせ、残った我々は一階で状況の整理をはじめる。


 と言っても、すっかり信用を失ったシラユキはだんまり。トライデントは

アヤメと激戦を演じその場には居なかった。美咲とチェロの行方に関する

手がかりは高台でみた状況証拠だけだ、八方塞がりだな。


「──────で、これよりどうするつもりです」

「守護すべき少女たちは行方知れず、こちらの戦力は半減」

「攻め込んできた敵の正体も規模もわからず、追撃に備えるにしても

 あの規模の追撃となれば、今の我々に退けるのは困難。

 進退極まるとはこの事です、エメス」


と、凍りついた場に口火を切ったのは、柱により掛かるシラユキだった。


「牧場を襲った連中は十中八九CIAのパラミリだ。手段を厭わない分世界最強と

 謳われる連中、回収した装備の数から察するに小隊一つ(20数名)を兄妹2人でまるっと

 沈めちまうとはな、恐れ入るよマッタク───」

「それはともかく、美咲とチェロを捉えるのが目的ならばこれ以上の

 追撃はないだろう。問題は、得物を頭の上で見事に掻っ攫われた四課の方だ」

「美咲達を追う際に必ず出くわすだろうからな、三つ巴の争いは避けられん」


「──────フッ、片腹痛い」

「夜陰に紛れ、牧場にほど近い場所で敵と示し合わせる算段をしていたのは貴方

 ではないか! 富山氏に貴方を付けろと命じられ密かに貴方を監視していた」

「どのみち彼女達を公安に引き渡すつもりなら何故、私とアヤメを助ける

 など謀りこの地にまで足を運びこの状況を招いたのだ」

「現状、少女達がそのCIAなる者たちに捉えられいずこかに監禁されてたとて

 貴方と共に救い出す理由はもはやない」

「おおよそ、彼女等の身柄を村瀬に引き渡すために取り戻すに過ぎんのだろう

 からな、違うか!」


 シラユキの言うことも最もだ、兄妹を助け出さねばならないとは云え

私の作戦に巻き込んだからには()を少し話しておく必要もあるか───


「ひとつ白状しておくよシラユキ、あの密会が美咲とチェロに危険が及ぶ

 私の裏切りだった場合、お前さんが善悪の判断を下すまでもなく私は

 そこの魔女に切り刻まれているだろうさ」


 腕を組み柱に背を預け俯いたままシラユキはトライデントに視線を移すと

トライデントは一つだけ静かにうなずいた。それを見てフゥと一つ溜息を漏らすと

再び私に視線を戻す。


「クロサキ達との密会をお前に見られていたとして別に困りはしないさ

 必要な手順だからな。お前たち兄妹の身柄を村瀬から引き離して今後の

 面倒をこちら側で見ると云った事も嘘じゃない、そこの魔女に誓うさ」


 懐から衛星電話を取り出し、シラユキの足元に放り投げる。

ゴトリと音を立てたそれをシラユキは拾うでもなく、ただ視線だけ落とした。

「昨夜、あの場でお前さんが何処まで話を聞いていたか判らないからな

 初めから説明してやる」


「目的は村瀬自身にお前達を手放すと直接語らせる為だ」

「村瀬本人が姿を隠している今でも奴の能力は消えちゃいない。現にその

 魅了の影響下に四課の連中は従って動いている。やつの能力は衰えている

 とは云え健在だ」

「お前たち兄妹は作戦に参加し、なんやかんや有ったにも関わらずお前たちが

 いまだここ宮城に留まっているのも恐らく奴の意思が介在していた」

「シラユキ、お前たちの身柄を俺が引き受ける約束をしたとして、村瀬がお前

 たちを取り戻すと意識すればお前たちに抗うすべはない。何処へ隠れようとも

 逃げ切れない」

「命令を受けた時、村瀬には直接会って居なかったのだろう?」

「ならば拒否も出来たはずだがしなかった。いや出来なかった。そうだな」


「──────」


「話を昨夜に戻すぞ、私は四課のリーダーであるクロサキに接触し、美咲と

 チェロを引き渡す代わりに、村瀬と話をさせろと昨夜の密談をセッティング

 させた、そして成功したよ、そのイリジウムで村瀬自身が語ったさ」

「お前たちを手放すとな。」


「クッ───なんて残酷な、その対価として少女達を村瀬に引き渡すというのか

 私達兄妹の為に!」

「アヤメとてそんな事を望んでは居ない! 貴方は知らないかもしれんがな

 アヤメは彼女と話をし、そして選択した。彼女達を守ることによって

 自分の未来を切り開くとな!」


「まぁ話は最後まで聞け、美咲達を本当に四課に引き渡すかどうか、重要なのは

 そこじゃない。重要なのは村瀬本人からカキツバタ、つまりはお前さん達を

 手放すと語らせることだったのさ。お前たちも自身の能力について覚えがある

 だろ? 自分自身が力を信じられなくなったら能力は発現しなくなる」

「それは自分自身が自ら進んで判断を下す事と同義だ。」

「つまり村瀬は自分で判断したのさ、自分の魅了の能力からお前たちを

 解き放つ、とな」


「───だが! 当の村瀬が彼女達を捕らえ損ない貴方との密約を反故にされたと

 感じたならば、その判断も無効になるのではないか?」


「もっともだ。しかしソレについては大丈夫なようだぞシラユキ」


「どう──────いう」


「シラユキよ、お前さん今まで人と話す時、村瀬の事をなんと呼称していた?」


「今更何を、私達はいつも主様と──────、ッ!!」


「まぁそういう事さ。奴の魅了は敵意も引き寄せ従わせるもの、故に今の

 お前さんが無意識に奴を呼び捨てに出来るって事は、純粋な敵意から来るものだ

 呪縛が解けていなかったら呼び捨てには出来ないはず。二階で寝ているアヤメも

 同様なはずだ。ひとまずトミ爺の頭突きを喰らい、お前さんから無視され続けた

 甲斐はあったな」


 懐からタバコを取り出し火を灯す、それを見たトライデントが台所のテーブル

から瀬戸物の灰皿を持ち出し私に手渡す。それをシラユキは、まるで信じられない

物を見るような顔を向け、また一つため息を付いた。


「よ、良いでしょう、ひとまずは貴方を信じますエメス。ですが現に守護すべき

 彼女達は捉えられてしまった、これからどうするのです?

 連中が彼女達を生かしておくつもりだったとしても

 呑気にしては居られないのでは?」


「フゥー、美咲達が最後に居た場所を見てきたよ。痕跡が有った、空路と陸路。

 そのどちらを追おうにも確信に至る証拠を、私達は持ち合わせていない

 そうだな?」


「ならば! なおさら呑気に──────」


「シラユキよ、その衛星電話。けたたましく鳴っているか?」


「また何を───、貴方だって判るでしょうに、鳴ってなど居ない」


「あぁつまりはな、連中(四課)は謀った私を問い詰める必要もなく解っているのさ」

「美咲達の居場所を──────な。つまり村瀬を追えば美咲達の居場所が

 解るって事だ」


 私は手にした灰皿にタバコをもみ消すと、床に転がったイリジウム携帯を

拾い上げた。アンテナを展開し、着信履歴から村瀬にリダイヤルする。

当然のように、何度呼び出そうとも村瀬に繋がることはなかった。

 だが呼び出しをするという事は回線が生きているということでも有る。

私はシラユキを連れ、美咲のラボへ移動した。

「ここは・・・一体」


「美咲の遊び場だ、いいか私がココを弄り回したのは内緒だぞ」

円筒状の小芥子のような端末から伸びるケーブルを衛星電話に接続し再び

リダイヤルすると端末の不機嫌そうな半円状の目が不規則に点滅し始め

ピンク色のモニターに、コードらしき物が映し出された。


randNum:#########

challenge=############wj9f2

verify:OK

Open:OK


$ telnet

Trying 192.$$.$$.$$...

Connected to 192.$$.$$.$$.

Escape character is '^]'.

LocalHost login: root


Password: *************

ok...

...40°43'01.5"N 141°19'27.3"E

.....Access


「エメス───、何ですこれは」


「座標だよ、村瀬が見ている場所の───な、そら出たぞ」

暫くすると、ドットインパクトプリンタが音を立てて地図を出力する

なるほど空路で三沢か。用済みの地図をシラユキに渡し、再び居間に戻る。

頭に幾つも「?」マークを付けたシラユキが後を追って来る。



トレンチコートの袖を捲り腕時計を確認する、残り時間は16時間27分

と記されている。もはや私が記憶しているタイムラインとはイコールではない

時間的優位性はもはや存在しない。つまり現在の状況は──────

“ニアリーイコールタイムライン” という訳だ。






壱拾五話 ニアリーイコールタイムライン 終








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