役所仕事
「どうぞ、玉子サンドです」
テーブルの上に置かれたのは、片手で食べられるように工夫された肉のようなものを挟んだパン。
役所の新人、黒い燕尾服の青年リオスは眉を寄せた。
「た、玉子?」
ユーシスはサンドイッチの具を見て
「ああ、すいません。これは、私の朝食の残りの内臓でした」
すぐに取り替えてきます、と冷蔵庫に戻す。
そして、今朝、洸が作っていた玉子サンドを持ってくる。
「……なぜ、玉子サンド?」
「うちの社員が、練習で作ってるんです。ほら、大自然の中で珍しい魔物が見たいって人は楽な食事が効率がいいでしょう」
そこで、洸がサンドイッチなら食べやすいと提案した。
「私もいいアイデアだと思います」
そう言って、ユーシスが頷く。
「まあ、本人は事情があって食べれませんから……もったいないでしょう」
「サンドイッチ、資料で読みましたがアビスの食べ物だ」
内臓入りサンドイッチと、一緒の冷蔵庫に入っていた玉子サンド。
(さすがに、食べる気にはならない……)
玉子サンドを眺め、リオスは思う。
「最近、向こうからこちらに流れ着く人間を拾って無理な労働させているブラック企業があるとか。こちらも調査ですから、気分を悪くされないように」
「うちでは、体を削って養っていますので」
「はぁ、体を……」
リオスは、ユーシス聞いた内容を資料に記入していく。
「では、次は仕事内容の方ですが」
「ただいま戻りました」
銀行から戻って来た洸に
「おかえり。おや、貴方は……」
「こんにちは」
セーレはぺこりと、頭を下げる。
「実は、話したいことが……って、お客様ですか」
自分と同じ位の歳の青年リオスを見て
(いかにもエリート……なんか、兄貴に似てるし)
苦手だな、と洸は思う。
「ちょっと話が長引いてましてね」
リオスが着ている燕尾服の襟のバッジを見て
『……役所の方ですね。ブラック企業がないか調査しているのでしょう』
セーレがテレパシーで、洸に伝える。
「そんな……うちは真面目な会社です」
自然と声に出してしまった。
「そうかどうかは、オレが調査をして決めることだ」
リオスは顎に手を当てると
「ぜひとも、同行して旅行会社メルキオールの仕事内容を見たいところだ」
そして、予定表に目を向ける。
「明後日は、温泉旅行が入っているな」
(役所仕事ってのはこれですから……)
ユーシスは肩を竦めると
「分かりました。クライアントには、協力をお願いします」




