温泉に行こう
「ふーん、じゃあセレセレも一緒に住むことになったのね」
「なんですか、セレセレって」
「いいじゃない。これから、同僚だし」
セリカに顎を撫でられ
「これだから、人間のなでなでは……わふー」
狼姿のセーレは、気持ち良さそうな表情。
「でも、ユーシス社長の家って部屋数少ないでしょう。どうしてるんです?」
セリカが聞くと
「コウくんには、私の部屋に移ってもらいました。セーちゃんは、吸血狼ですが人間の姿は十四、五歳の女の子ですからね」
年頃の男女には節度が必要です、とユーシス。
「そう言えば、コウ君、前に給料でベッド買ってましたよね」
「そのベットは、セーちゃんに」
「……ってことは」
セリカは考え込むと
「まさか、ユーシス社長と同じベットで!?」
「そんなわけないでしょう……」
ソファーで寝てもらっています、と「女性はそういうの好きですよね」ため息を付くユーシス。
「おう、コウから話は聞いたぜ」
「ユーシス社長、クライアントのワルツさん迎えに行って来ました」
今回の依頼者は、喫茶店の店主ワルツ。
見た目はガタイのいい中年男のワルツだが、作るスイーツは繊細で女性に人気。スーパーでミネラルウォーター選びに悩んでいた洸に、味の違いを教えてくれた。
「すみません、役所の調査が急に入りまして」
「役所ってのは、そんなもんだ。お、狼か」
キレイだなとワルツに言われ、セーレはパタパタと尻尾を振る。
「後は、リオスさんですね。結構な大人数ですけど……」
「うふふ、コウくん心配はいらないわ」
なんと、魔法車はワゴンに進化した。
「あれ、車検って……」
「何言ってるの。車検で、改造するのは常識よ」
嬉しそうに目を輝かせるセリカを見て
(車検って、なんだっけ……)
洸は、首を傾げた。
♦︎♦︎♦︎
「目的地は、カグヤ温泉郷ですか」
普通の旅行ですね、と後部座席のリオス。
「温泉を掘るんだよ」
天然の露天風呂を作るのが夢なんだ、と隣のワルツ。
「ああ、だからスコップ……そして、皆さん芋くさい服装だと思いました」
「はははは、足場の悪い所を行きますのでリオスさんの服は汚れてしまうかもしれませんね」
嫌味で言ったユーシスだが
「ご心配なく、選択出来る服ですので」
淡々とリオスが返す。
顔を顰めたユーシスを横目に
(ユーシス社長が言い返さないとはね……)
相性悪いのかも、と運転席のセリカ。
伏せているセーレの隣で、ミネラルウォーターを飲む洸。
「君は、水の飲み過ぎでは?」
リオスに訝しげな表情向けられ
「……別にいいでしょう」
「ガハハハ、こいつは水が好きなんだ」
なんたって喫茶店でも注文するのはミネラルウォーターだからな、とワルツは豪快に笑う。




