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朱色のゲートウェイ ー 御神体 ー  作者: 此花 陽
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第漆乃鳥居:完成された静寂


 私は、崩壊した蓮の顔面から、

 最後の一欠片――激しく明滅する

「朱色の瞳」を拾い上げた。  


 それを鳥居の額の部分へ、

 最後のくさびとして埋め込む。



「契約は執行されました。九本目の建立です」


 その瞬間、八本の鳥居と九本目の白鷺色の鳥居が、

 一本の巨大な回路となって繋がった。  


 スタジアムを満たしていた怒号、

 ネット上の罵詈雑言、日本中に溢れていた不協和音。


 そのすべてが、九本目の鳥居へと

 猛烈な勢いで吸い込まれていく。  


 一瞬の後、世界に訪れたのは、

 耳が痛くなるほどの「静寂」であった。

 

 九本目の鳥居。

 

 それは、四百年の負債をすべて飲み込み、

 無害な「白」へと変換する、

 究極の浄化装置。  


 有馬蓮という天才の残骸を糧に、

 この国は再び「美しい、空っぽの日常」を

 手に入れたのである。

 

 私は、蓮の喉から摘出した、最後の一枚

 ――九枚目の「石化した舌」を自身の空洞へ収めた。  

 

 九枚の舌が揃った瞬間、

 私の内側で、この世で最も残酷で、

 最も甘美な合唱コーラスが完成した。



「……最高ですよ、蓮さま。

 貴方は消えて、この国の礎となった。

 これ以上の『演出』はありません」

 

 

 私は、白く輝く九本目の

 鳥居を見上げ、静かに微笑んだ。  


 鳥居の奥からは、カチ、カチ……と、

 石になった蓮の鼓動が、

 時を刻む音のように響き続けている。

 

 夜が明け、人々は昨夜の惨劇も、

 有馬蓮という名も忘れ、新しい朝を迎えるだろう。  


 九本の鳥居が守る、この「偽りの黄金の日々」を___。


【本編:完結】

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