第肆乃鳥居:虚飾の金箔
金成が、自らビルの屋上から飛び降り、
コンクリートに激突して石化した夜。
私はその遺体を、
誰にも気づかれる前に
九地無の里へと運び込んだ。
彼の肉体は、
墜落の衝撃で砕けるどころか、
コンクリートよりも硬く、
それでいて内側からは腐敗臭が漂うという、
矛盾した塊へと変貌していた。
私は、彼の書斎に残されていた、
数億円分の「無価値になった紙幣」を回収し、
それを大釜で煮立たせてパルプ状に溶かした。
「この溶けた紙幣の泥と、
金成の肉体を混ぜなさい。
表面には、彼が愛した最高純度の金箔を貼り、
虚飾を完成させるのです」
美空の電子の鳥居の隣に、
四本目の鳥居が建立された。
それは、並び立つ鳥居の中で
最も豪華で、最も美しい。
黄金に輝くその門は、
見る者の欲望を刺激し、跪かせる。
だが、その内側には、金成が抱え込んだ
「負債」という名のヘドロが、
今も熱を持って脈動している。
四本目の鳥居。
この門をくぐる者は、無意識のうちに、
己の中にある「損得」や「虚栄心」を
そこに吸い取られる。
触れた者の脳内には、失われた財産を嘆く
「数字の羅列」が呪詛のように流れ込み、
自分がどれほど無価値であるかを
突きつけてくる。
私は、金成の口から零れ落ちた、
四枚目の「石化した舌」を拾い上げる。
それは、金属の光沢を放ちながらも、
腐敗の臭いを放っていた。
ハク、伊織、美空。
そこに金成の「欲望の軋み」が加わる。
「……いい。実に重々しい旋律だ」
私は、黄金の鳥居を見上げながら、
次の時代を予見した。
金というメッキが剥がれたあと、
日本を襲うのは
「何もないこと(無)」への恐怖。
崩れ去った瓦礫の中で、
誰にも気づかれずに消えていく命。
その絶望が、五本目の鳥居の糧となる日を、
私は静かに待つことにした___。
【昭和末期編:完】




