↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペルグランデ・オンライン  作者: リアン
暗雲広がる世界より
PR
9/38

英雄 ローラン

 

 クエストウィンドウを開くと目的地の場所がわかるようになっている。

 ペルグランデ・オンラインには世界マップというものは存在しないが、自分の周囲のある程度はマップ表示されている。

 そして『死者の村 ゲルニールへの招待』の目的地は武器屋の裏、路地を入ってしばらく進んだところにマーキングされていた。


 どういうことだ、とそう遠くもないので足を運んでみると、村へ案内してくれた少女が青い屋根の小さな家の前で座り込んでいた。


 私に気づくと少女は立ち上がり、初めて口を開いた。


「お兄ちゃん、こっち」


 そういって家の扉を開けて入っていった。


「うーん、よそ様のお家に入っていいものだろうか。でもこっちって言ってたし、招かれざるって訳でもないよね」


 少々気が引けるものの、促されるまま敷居をまたいだ。


 そこには少女のお母さんであろう綺麗な女性が、ボロボロのソファーに座っていた。


「あら、いらっしゃい。シアのお友達?」


「え、あ、あーはい。そんなところでございます」


 なんと答えていいかわからず適当に返事をするが、この見た目で少女の友達を名乗るのは少々無理がある。

 でもそこはゲームなのだろう、見た目で差別しないNPCは世界の平和の象徴です。はい。


 女性はアリーナというらしい、小さな部屋は暗く、いたるところにガタが来ているようで、とても裕福な家庭には思えない。

 部屋の奥には古びた機織り機が置いてあり、アリーナはそれで生計を立てているであろうことが伺える。


 アリーナは一杯の水を出してくれた。

 シアは継ぎはぎだらけの人形を抱え、ソファーの上に座ったアリーナの膝の上に飛び乗った。


「もしかして冒険者の方でしょうか?」


「そ、そうですね。冒険を少々しております」


 受け答えが下手なのは私が私ゆえに仕方ないが、NPC相手にも変わらないのだなと少し恥ずかしくなる。


「ひとつお願いがあるのですが、聞いていただけませんでしょうか」


 と、アリーナが切り出すとクエストウィンドウが開かれる。


『シークレットクエスト:アリーナの願い を受注しますか?』


 私は迷わず受注した。その選択が返事となったのか、アリーナは話を続けた。


「首都サンクワルドにいる恋人にこれを渡して欲しいんです」


 それは小さな小さな巾着袋が首から下げられるようになっているお守りだった。


「彼の名前はローランと言います。四年前、この村を出ていったきり戻っていません。風の噂で、騎士団長を務めていると聞きました。兵士の詰所で彼の名前を出していただければ会えると思います」


 ローラン、武器屋のおじさんが言っていた英雄か。あのやり取りはクエストを受注していたからこそなのだと頭の中で合点がいった。

『恋人』という単語に違和感を覚えながらも、アリーナの膝の上に座るシアの年齢を考えると察することができた。


「わかりました。たしかに届けます」


「ありがとうございます!私はここを離れるわけにはいかなくて……。シア、ギコさんを村の出口まで案内してあげて」


「うん!」


 シアに先導され、家を後にした。

 道中のシアは思いのほかおしゃべりだった。


「おとーさんはね、えいゆうなの」


「へー、すごいんだね」


「うん!でもね、しあはあったことなくてね、でもね、もうすぐもどってくるの。でもね、おかーさんはしんぱいなんだって」


「そうかぁ、戻ってくるの楽しみだね」


「うん!おまもりね、しあもてつだったの」


 そんなことを話しながらゲルニールを後にした。

 クエストウィンドウを確認すると『死者の村 ゲルニールへの招待』は消え『アリーナの願い』にとって代わっていた。

 クエストの目的地はずっと東の方角を指している。






 完全にログアウトするタイミングを逃してしまい、私は東へとゾンビやスケルトンを討伐しながら進んでいった。

 こうなると早く届けてあげたい。

 シアの笑顔に感情移入してしまい、私の足取りは早かった。

 どうやら原田さんの件同様、かわいい子をみるとどうも自分の頭の中におっさんが顔を出す。

 ローランに会ったらお守りを渡してそのままシアのところまで引きずっていってやろうか。

 四年もほったらかしおって、と怒りにも似た感情が滾ってきた。

 大分進んだところで再度クエストウィンドウを開くと、おかしなことにクエストの目的地が移動している。

 目的地がすごいスピードで近づいて来ているのだ。


「お?これはいったい……」


「ドドドドドドド!!」


「お?おおおおおわああ!」


 前方から何十、何百といった馬に乗った騎士達がすごい勢いで迫ってきた。


「急げ!編隊を崩すな!」


 先頭を掛ける騎士が怒号を飛ばす。


 巻き込まれることを恐れ、身をかがめて大盾を構えて震えていると、私に気づいたのか先頭の騎士が馬を止め、降りて私に近づいてきた。

 頭からつま先まで(やっぱり足はないのだが)全身フルプレートの立派な銀の鎧を着た騎士は、その頭装備のバイザーを上げ、真剣な眼差しで言った。


「どなたか知りませんが、ここは危険です。早くこの場から離れてください!」


「え? え?…いったい何が」


「西の帝国軍が侵攻を開始しました。ここは戦場になります……いや、させるものか!」


 馬の足音が鳴り響く中、そう言い放つと、騎士は再び馬に飛び乗り駆けていった。


「あ~~~~、びっくりした」



 我に返ると、クエストに意識が戻る。


「あれ?もしかして……」


 クエストウィンドウを確認すると、目的地は私を通り過ぎ、来た道と反対方向に移動している。


「さっきのがローラン!?」


 先ほどの騎士達の中にローラン、いや、クエストの趣旨を省みるに先ほどの騎士こそがローランで間違いない。


「渡しそびれた~~~!」


 来た道を全速力で走った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。