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ペルグランデ・オンライン  作者: リアン
暗雲広がる世界より
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8/38

死者の村 ゲルニール

 

 3時間ほどゾンビとスケルトン(骸骨)を狩り続け、レベルは8まで上がった。

 獲物を探して移動しているうちに出現するモンスターにも若干の変化がある。

 ゾンビは緑がかった少々動きが速い個体が出現するようになり、スケルトンも盾や槍など、武器にバリエーションがでてきた。

 アイテムインベントリに入っていた初心者用ポーションも残りが心もとないし、時間的にもそろそろ夕食なのでログアウトしないと親が心配する。

 ところで、ゲームを初めてまだ一人も他のプレイヤーはおろか、NPCとも出会っていないのだが、町や村はどこなのだろうか。

 なんでも村の宿屋で回復と位置セーブができるらしい、回復薬も買いたい。

 そう思い辺りを見回すが、相変わらず辛気臭い雰囲気……ん?


 人影を見つけた。

 10mほど離れた黒い柵の向こうから一人の少女がこちらを見ている。

 モンスターかとも思ったが明らかに人間だ。どうやら手招きをしている。


 如何にも怪しいものだが、付いていかない選択肢はない。少女の方へ歩みだすと同時に、目の前にクエストウィンドウが展開された。


『シークレットクエスト:死者の村 ゲルニールへの招待を受注しました。』


「おおお、やっと村に行ける!」


 そして、クエストウィンドウを開いたことで、既にもう一件受注済みであることに気が付いた。


『クエスト:始まりの町へ』


「あちゃー、多分これ初めからあったやつだ。」

 初っ端からゾンビに驚き気が付かなかったのだ。よくある話だ。。。


『死者の村』とは物騒だ。村という名のダンジョンではないか?

 ちょっと遠くてよく見えないが、あの少女、足がない気がする……。そしてシークレットクエストとは何ぞや。

 疑う要素は多々あるものの、せっかくなので少女に付いていき、死者の村ゲルニールとやらへと向かうことにする。

 しかし、足がないくらいじゃ驚かなくなってしまった。ホラー耐性がどんどん上がっていくのを感じる。


 少女は一定の距離を保ち歩いていく、歩く? 進んでいく。こちらが止まると少女も止まって手招きをする。道中、クエストのせいなのだろうか、モンスターとは一回も出会わなかった。


 5分程歩くと村に着いた。

 西洋の農村といった感じで、畑と煉瓦造りの建物がちらほらとある。

 これまでに見た廃墟などとは違い、崩れた様子はない。

 相変わらず空は薄暗いままだが、のんびりとした風景を見渡すと、モンスターのいない安全地帯に初めての安心感を覚えた。


 村に着くなり足のない少女は笑顔を浮かべ、その中心部へと消えていった。


「案内ありがとー」

 ぶんぶんと手を振ったが、返ってくる言葉はない。


 宿屋を探して村の奥へ進むと、道は煉瓦で舗装され、畑は見なくたった。『INN』と書かれた看板の宿屋、剣のマークが交差する武器屋等、どうやら買い物できる店はこの中心部に集まっているようだ。

 途中に数人の村人を見たが、皆一様に足がなく、膝から下が透けている。そしてやはりプレイヤーらしき姿は一人として見当たらなかった。


 宿屋で位置セーブを行った後、せっかく初めての町なので武器屋を覗いてみる。

 あまり大きくはないこの町は、武器屋と防具屋が一緒になっているようだ。

 扉を開けると所せましと並んでいる武器や防具が目に飛び込んだ。


「いらっしゃい!」

 がたいの良い口周りに白い髭を蓄えた如何にもなおじさんが、威勢よく声を掛けてくる。


「あの、ちょっと見せてもらってもいいでしょうか」


「はいよ、良いのが揃ってるよ!なんたって英雄ローランの故郷さ!」


「ローラン?」


「知らないのかい?首都サンクワルドの騎士隊長になった男さね、「俺は英雄になるんだ」なんて言って飛び出した若造が、武功を上げてほんとに英雄になっちまった。もうすぐ町に帰ってくるんじゃないかね」


「そ、そうなんですか、すごい人なんですね」


 自分には関係がない話だと、適当に話を合わせ、武具を見せてもらう。


「か、かっこいい」


 性能の良し悪しはわからないが、とにかく色んな装備に目が奪われる。

 店の奥をには鍛冶場らしき炉や金敷が見える。


「あの、もしかして、新しく装備を作ったりとかも……」


「ああ、もちろんできるよ、鍛冶屋ってのは町や地域によって毛色が違ってね、その地域周辺のモンスターが落とす素材で特殊な能力を付与することができる。エンチャントってやつだ。新しい装備を一から作ることもできるが、売ってる装備や、もうすでに持ってる装備に付与することもできるよ」


 優秀なAIだ、聞いたことに対してしっかりと説明してくれる。


 私は初期の皮装備とドロップアイテムを売り払い、比較的安価で見た目が気に入った装備を買った。

 膝程まである長い前垂れが特徴の腰当、左肩にベルトで掛かり、お腹が見えている鉄の胸当て、それから太ももはスパッツのような伸縮素材で覆われ、膝下はしっかりと金属で守られている鉄のクリーブだ。


 そして、余った素材でエンチャントなるものも試してみたが、残りの素材もお金も少なかったので、胸当てしかできなかった。



 鉄の胸当て【怨嗟(えんさ)】:対象指定攻撃で受けたダメージの2%を確定ダメージとして攻撃を行った対象に与える。



 怨とは物騒な……。ここにきてまだホラーな匂いがする。


 装備も買って、意気揚々と武器屋を出る。当面の目標は全部の防具にエンチャントと、それから大盾も新しいのが欲しい。


「また来てくれよ!あんちゃん!」


 あんちゃんか…。見た目は確かに男ではあるがちょっと慣れない。

 武器屋を出たところでログアウトしようとメニューウィンドウを開いたところであることに気が付いた。


「シークレットクエストがまだ終わっていない?」


 そう、村に着いたにも関わらず『シークレットクエスト:死者の町 ゲルニールへの招待』がまだ進行中のままなのだ。






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