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ペルグランデ・オンライン  作者: リアン
ひとりじゃない
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36/38

大千鳥十文字槍

 

 時は戻り、闘技場。


 ギコ、ミサと相対するプレイヤーが二人、鬼の面の大男の名前はセージ。十中八九こちらが現実で声を掛けてきた男だろう。般若の面の女、プレイヤー名はキヨ。


 アイゼン「あの二人、この界隈では有名ですよ」


 ナギ「え!そうなんですか!?」


 アイゼン「2体2の対戦自体マイナーな競技ですが、間違いなくトップランカーです」


 侍A「黒装束の姉弟、俺も知ってます。少なくともあいつらに勝ったって話は聞いたことありませんねぇ」


 アイゼン「アンデッド・アンダーテイカーのマスターも厄介なのに目ぇつけられたものですな」


 ナギ「うぅ…、ギコちゃーん!負けないでぇーっ!」


 アイゼン(あのふてぶてしいマスターアンダーテイカーをちゃん付けとは!巫女様凄いっ!)


 キヨが語り掛けてくる。


 キヨ「セージから話は聞いてるよ。まったく、道行くお嬢さんに決闘申し込むとは、ほんとバカだねぇ」


 セージ「…ごめん」


 ギコ「い、いえいえ。あの…お手柔らかにお願いします」


 キヨ「お手柔らかにって顔じゃないけど、まぁせっかくだから付き合ってもらうよ」


 隣でミサがつぶやく


 ミサ「あれ、使ってみたら?せっかくいい機会だし」


 ギコ「ああ、そうですね」


 私はメニューウィンドウを呼び出し、装備欄から左手の大盾を変えた。


 大盾:デモンズ・ゲート

 装備可能VIT30、VIT-100、HP最大値2倍

 装備スキル「デモンズ・ゲート」を使用可能


 先日のユニークモンスター戦で手に入れた装備だ。大盾でしかもVIT-100という謎の性能なものだから私が使うということになった。おかげで私のVITは0だ、マイナスにはならないらしい。長所であるHPを大きく伸ばすことができるが、それで差し引きどうなのかわからない。


 左手に現れた大盾は通常の大盾よりひと回り大きく、最大身長でキャラメイクした私の体7,8割を隠してしまう。デモンズ・ゲートをそのまま小さくしたようなデザインで、左右対称にあばら骨を埋め込んだ扉のような形をしており、左右の天辺には紫色の炎が灯っている。


 キヨ「なんだい、物騒な盾だね」


 セージ「俺があいつをやるよ」


 キヨ「おや、やる気だね」


 黒装束を着た二人はゆっくりと無手で構えをとる。


『対戦開始!』場内アナウンスが鳴り響く。

 と同時にミサがキヨへ向かって走り出す!


 ミサ「先手必勝っ!」


 青龍刀『九文』を振りかざす。


 キヨ「引!」


 ミサ「へ?」


 ミサは一瞬自分が加速したかと思った瞬間、キヨの足元で天を仰いでいた。


 キヨ「破っ!!」


 すかさず倒れたミサに掌底を放つ!


 ミサ「わっ!」


 爆発音が鳴り地面を砕く。

 ミサは勢いよく後方に飛び起き、掌底を躱した。


 キヨ「へぇ…」


 ミサ「くっ!」


 躱したかに思えたミサの左肩からダメージエフェクトが微かに散る。


 キヨ「わたしの初手を躱すだけじゃなく、倒れ際に蹴りまで入れるとは…」


 キヨの左頬にも微かなダメージエフェクトが光っていた。


 キヨ「だが、あっちは終わったんじゃないかい?」


 「ドォーンッ!」


 爆音が鳴り響き、セージの正拳突きがギコの鳩尾を真正面から捉えていた。


 セージ「………、は?」


 キヨ「?」


 セージはこれ以上ない手ごたえに、逆に違和感を感じていた。


 ギコ「やーっ!」


 ギコは何事もなかったように右手の包丁を振りまわすが、当たることはなく、セージは後ろに飛びのき、キヨの隣へと戻った。


 ミサもギコの隣へと戻り話しかける。


 ミサ「ギコ、気を付けて、あいつら武闘家なんかじゃない。魔術師の類だね。掌底の時に一瞬魔法陣が見えた。多分爆発魔法を0距離で打ってる。それと重力魔法、引き寄せられて間合いが狂った」


 ギコ「え、でもすごい動きですよ!魔術師のスキルじゃあんな動きできないです」


 ミサ「スキルの動きじゃない、本人の技量かな、構えから察するに男が空手、女のほうは…、おそらく合気道」


 キヨ「……、一発で見破られるとはね、やっぱりあんたすごいよ」


 キヨ「セージ、さっきのは?」


 セージ「……、手ごたえはあった。最高の一撃を喰らわせた」


 キヨ「ん~、男は動きは素人もいいとこだ、問題ないだろ」


 セージ「ああ!」


 返事をしながらセージが走り出す。


 ギコ「ネクロマンス!」


 右手を地面に打ち付けると、突進するセージとの間にスケルトンソルジャーが這い出す。


 セージ「な、モンスター!?でも、そんなもんでどうなる!」


 セージは一瞬怯むも難なくスケルトンソルジャーを回し蹴りで打ち砕く。


 ミサ「打掛・炎帝!」


 キヨ「っ!斥!」


 いきなり出現したモンスターに目を取られたキヨにミサが仕掛けるが、先ほどとは逆に引き離される力によって間合いから外され、青龍刀が空を切る。


 キヨ「対応してきたか」


 青龍刀は届かなかったが、青龍刀が纏った炎によってキヨの体を焼く。


 アイゼン「攻撃を当てるのが難しいとわかるやいなや範囲攻撃に切り替えたか、さすがの対応力だ」


 そして立ち上がる炎にキヨが瞬きをするその僅かな間に、今度はギコを狙うセージの背後に回り、炎を纏う青龍刀を振り上げる。


 セージ「ぐあっ!」


 ミサ「ギコ!スイッチ」


 ギコ「はい!メリコス・ネクロマンス、抗う腕!」


 ミサを追うキヨの足を死者の腕が掴む


 キヨ「う、また奇怪な」


 ギコ「ネクロマンス!スカルシーサーペント!」


 二匹の長いウミヘビの骸骨が現れ、キヨに噛みつきかかる。


 ミサ「考えたね、ギコ、関節がなければ合気道が使えない」


 キヨ「くっ!」


 かろうじて身を屈んで二匹のウミヘビの攻撃をやり過ごし、解かれた足で地面を蹴り、一瞬でギコの右並ぶ


 キヨ「六連閃!」


 目にもとまらぬ連撃がギコの右肩、腕、脇腹に叩き込まれる。


 ギコ「たーっ!」


 またもや何事もなかったかのように包丁を水平に振るが、やはり当たらない。


 キヨ「なんなんだい、まるで堪えてないような」



 セージ「破っ!」


 ミサ「!」


拳と青龍刀の柄が激しく交差する。


 ミサ「打掛・土天!」


青龍刀が叩きつけられた地面が隆起し前方に走る。


 セージ「ぐあっ!」


 ミサ「引き付けようと引き離そうと、前方へ長い範囲攻撃は当たるでしょうよ」


 セージ「ふん、じゃあずっと接近戦すりゃあいい。引!」


 ミサの体は引き寄せられ、強制的にインファイトに持ち込まれるものの、青龍刀を短く持ち応戦する。

 


 キヨ「その包丁、さっきよりデカくなってないかい!?まあ、そんな振り回すだけの包丁当たりゃしないが」


 息ができないような近接技の応酬に耐えかねたミサとセージは互いに距離を置き、パートナーに並ぶ。


 セージ「ちょっと頼めるか……」


 キヨ「…あいよ、任された。それで決めな」


 そういうとキヨはセージの前に立ち、無手で構える。


 ミサ「男のほう、何かする気だ。させない!」


 ギコ「ウミヘビちゃん、いけーっ!」


 セージに切りかかろうとするミサだが…


 キヨ「引」


 キヨの方へと引き寄せられ、簡単に転ばされる。

 キヨは追撃を加えようとするが、スカルシーサーペントが襲い掛かりたまらず避ける。


 セージ「サイファ、スーパーリンペイ…」


 アイゼン「あれは…、空手の形だな」


 ナギ「へぇー、動きが綺麗」


 アイゼン「まさか!やつのもう一つの職業はダンサーか!」


 ナギ「ダンス?」


 アイゼン「ダンサーは支援職業です。決まった動きはなく、ダンスの動きやクオリティの評価値が算出されてステータスアップなどの支援が成されます。まさか空手の形で代用するとは」


 させまいとギコとミサが攻撃を試みるが、ことごとくキヨに阻まれる。


 ミサ「くぅー!こんなに簡単に投げられるなんて、あったまきちゃう!」


 キヨの掌底がスカルシーサーペントを粉砕した。


 ギコ「奥の手!」


 ギコが片手剣大に成長した血塗られた包丁を投げつけるが、簡単に躱される。


 キヨ「武器を手放すなんざ、なにが奥の手だい」


 即座にキヨはギコに肉薄し、一撃を叩きこまんと掌底を構える。


「ザシュっ!」


 キヨ「かはっ!??」


 投げたはずの血塗られた包丁はギコの手の中に戻っており、キヨの肩口に振り下ろされた。


 キヨ「なん…で」


 ギコ(戻ってくるんですよね、いくら捨てても…)


 ミサ「ナイス!ギコ」


 ナギ「キャー!ギコちゃんかっこいーっ!」


 セージ「ふぅ、攻撃力アップ大、素早さアップ特大。これで終わりだ!」


 キヨ「間に合ったか」


 キヨがそう言い終わる前に、セージは大幅にアップした素早さをもってすでにギコの眼前に構えていた。


 ミサ「ギコ!」


 セージ「六連閃っ!」


 「ドドドドドドっ!」拳が唸りをあげ、爆発音とともにギコに叩き込まれる!


 セージ「まだだ!大千鳥……」


 大きく両腕を広げ、低く、更に距離をつめる!


 セージ「十文字槍っっ!!!」


 「ドッっパァァァンン」両の拳がギコを貫き、一瞬遅れて聞こえる爆音とともに大量のダメージエフェクトがギコの後方に弾け飛ぶ!

 

 「ガンッ!」ギコは力なく地に着いた盾によりかかった。

 …かのように見えた。少なくともセージには。


 ギコ「…………デモンズ・ゲート」


 そのつぶやきがキヨに聞こえていたのかはわからない。

 (ゾクゾクゾクっ)ゲームの世界で初めて感じるただならぬ悪寒に反応するようにキヨは叫んだ!


 キヨ「離れろぉっ!セージぃぃ!!」




















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