杖ってなんだっけ?
誰も居なくなってしまい、ドロップアイテムが落ちている。
「……まぁ、もったいないしね。……いただきますね」
ドロップアイテムを拾い上げると同時に頭の中にアナウンスが鳴った。
『おめでとうございます! エンシェント・モンスター「火竜イグニス・アーリース」討伐MVPを獲得しました』
「え!? ほとんど何もしてないのに討伐って……、罪悪感しかないよぅ」
とても素直に喜べなかったが、こうなってしまったものは仕方がない。そう割り切ってドロップ品とMVP獲得アイテムをインベントリを開いて確認した。
ドロップ
火竜の爪、火竜の角
レアドロップ
片手杖:火竜の左灼眼
火属性攻撃魔法が浮遊する『眼』から発動されるようになる。
魔法の威力は50%に軽減される。
火竜の右灼眼と共に装備時DEX+20%、火属性魔法命中時、ノックバック(小)を
与える。
片手杖:火竜の右灼眼
火属性攻撃魔法が浮遊する『眼』から発動されるようになる。
魔法の威力は50%に軽減される。
火竜の左灼眼と共に装備時DEX+20%、火属性魔法命中時、爆発を起こし
狭い範囲にスプラッシュダメージを追加で与える。
MVP報酬
アクセサリ:赤熱のバングル
火属性攻撃魔法のオブジェクト毎にスキルレベルに応じた確定ダメージを付与する。
「え? これ、杖??」
見た目はただの球体、いや、眼球だ。早速装備してみると、直径15㎝ほどの爬虫類の眼球が手から離れ、フワフワと浮いている。
レベル3になったファイヤーボルトを壁に向けて放つと、左右の眼球からそれぞれ3発ずつ、火の矢が放たれ、壁に着弾したそれは、小さな爆発を起こした。
「ほー、なるほどなるほど。ファイヤーボルトLv.3だと普通に撃てば3つの火の矢だけど、左右両方から打てる。だけど50%の威力だから、結局威力は変わらないか」
そしてDEXが追加で40%に目を付けたナギは、いままで振っていなかったステータスポイントをDEXに全部振り分けた。
「っていうか、レベルが一気に20まで上がってる。すごーい!」
DEXに振り分けた切っ掛けは火竜の灼眼の効果だが、一人でモンスターと戦っているときの経験からでもあった。一撃で倒れなかったモンスターが自分に牙をむくが、CTが終わらず、次の魔法を繰り出せないでダメージを受けてしまうからだ。ナギは一撃で倒す選択ではなく、早く次の魔法を撃つという選択をした。
HP:196
MP:55
STR:1
VIT:1
AGI:1
INT:10
DEX:51
LUK:1
「さてと……、卵はどうしよう」
困った顔で残された白い卵に触れると、僅かに脈を打つように光っている。
「うーん……」
温めているつもりなのだろうか、ナギは卵に抱き付き体を密着させた。
すると、一筋のひびが卵に走る。
「お?……お?……」
卵の内側からコツコツと振動が伝わり、殻を破り、小さな赤い龍が顔を出した!
「ぴーっ!」
「おおおお……」
細く、高い声で産声を上げた龍はやがて殻からでて、小さな炎をゲップのように吐いた。
その頭上には『火竜イグニス・アーリース』と表示されている。
「わぁ、やっぱりあのドラゴンがお母さんだったんだね。お腹すいてない?」
そう声を掛け、インベントリからテイム用のエサを差し出した。
「ぴーっ」
『火竜イグニス・アーリースのテイムに成功しました』
「すごーい、テイムできるモンスターなんだ。それに超かわいい!」
「名前つけなきゃね、アーリース……アリス? うーん違う。 ヒナタ……ヒナタ!」
「ぴーっ!」
「わかった、ピナタだ!」
「よろしくね、ピナタ! ピナタにぴったりのお気に入りの装備があるの!」
テイムモンスター装備のアンクレットをピナタの前足に取り付ける。
「ちょっとだけ高かったんだよー、わたしあんまりお金ないから」
さっそくピナタをモンスターインベントリに格納した。
が、数秒で恋しくなり、結局ピナタを抱きかかえ、満足気に町への帰路についた。




