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ペルグランデ・オンライン  作者: リアン
暗雲広がる世界より
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願いの行き先

 

 来た道を走り、ゲルニールを過ぎてなお走った。


 そこは墓地であったはずの場所だが、なぜか平原が広がっており、駆けて行った銀の騎士達とおそらくは帝国軍であろう黒い鎧を纏った騎士達が乱戦を繰り広げていた。

 いや、乱戦というには一方的だ。銀の騎士の多くは倒れ、黒の騎士が蹂躙している。


「そんな……、ローランは!?」


 飛び交う怒号の中、私は必至にローランを探したが見つからない。

 流れ矢に当たるか、巻き込まれるかとも思ったが、騎士達に触れることはできず、幾人もの騎士が私をすり抜けていく。


「ローラン!ローラン!」


 私は叫び続けるがその声は雄たけびと悲鳴、怒号の中に掻き消されていく。


 やがてだんだんと戦場の音は小さくなり、立っている銀の騎士はいなくなった。

 いや、いた!


 幾人もの黒い騎士に囲まれ、背には何本もの矢が刺さってなお猛り剣を振っている。


「おおおおおおおおお!行かせるかぁぁぁあああああ!」


 しかし黒い騎士はあざ笑うかのように矢を放つ。切りつける。

 そして背後から狙いすました槍の一撃が放たれた。


「危ないっ!!」


 最後の銀の騎士を守ろうと間に割って入り、大盾で槍をはじこうとするが……。

 槍は大盾を、そして私をすり抜け、銀の騎士の脇腹を貫いた。


「っっ!!」


 最後の銀の騎士、いや、ローランの膝が崩れる。

 脇腹に刺さった槍を引き抜き、地面に崩れ落ちながらも黒い騎士の足を掴む。


「ゲ、ゲルニールを……、アリーナを……」


「やめてっ!」


 黒い騎士は手を振り払い、倒れたローランの背中に剣を立てた。


 私は急いで剣を引き抜こうとするが、剣にも、ローランにも触ることができない。


 黒い騎士達はゲルニールのある方角へ消えていった。



「ローラン……」


「ア、アリーナを……」


 私は地にひれ伏したローランにアリーナから預かったお守りを差し出した。


「これ……は?」


「アリーナと……娘のシアさんからです。お守りです。二人が待ってるんです!」


「アリー……、シア…………!?、そうか…………これ…を」


 声を振り絞るようにローランはお守りを受け取らず、懐の中から一つの指輪を差し出した。


「アリーナさんにですね!大丈夫、渡します!」


 私は指輪を受け取り。ローランは少しだけ、ほんの少しだけ微笑むと、そして、消えた。



 なんとも言えぬ思いに打ちひしがれ、私はひざまずいたまま指輪とお守りを抱きしめた。

 するといつの間にか辺りは見慣れた墓地の風景へ戻っていた。


「渡せなかった……」


「っ!! ゲルニール!!」


 そうだ、黒い騎士達はゲルニールの方向へ向かったのだ。


「シア!アリーナさん!」


 指輪とお守りを握りしめ、ゲルニールへと走った!



 黒い騎士達を止められるとは思えない。しかし二人を逃がすだけなら!




「………………、どういうこと?」


 そこには先ほど訪れたゲルニールという村の姿はなかった。


 あるのは廃墟、しかし建物の位置は確かにゲルニールと酷似している。

 今あの黒い騎士達に破壊されたとは思えない。

 火の手が上がっているわけでもなく。誰一人の声も聞こえない。

 私は走ったはずだ、なのにまるで幾数年の時が流れたようだった。


 村の奥へと恐る恐る歩いていくと、ところどころに紫色の火の玉が浮いている。モンスターではない。

 魂……なのだろうか。


 手の中には指輪とお守りが確かに存在する。その二つを見つめ、私はしばらく立ち尽くしていた。



 不意にクエストウィンドウが開かれ、私は我に返った。

 クエストだということすら忘れていたのだ。


『シークレットクエスト:アリーナの願い を完了しました』


「完……了?」


 手に持っていた指輪とお守りは、装備品としてアイテムインベントリに収納されていた。


 アクセサリ:お守り【死者の煩慮(はんりょ)

 HP自然回復速度50%UP

 死者の慕情と共に装備することで追加でHP自然回復速度100%UP


 アクセサリ:指輪【死者の慕情(ぼじょう)

 HP自然回復速度50%UP

 死者の煩慮と共に装備することで追加でHP自然回復速度100%UP




 クエストは完了したものの、何か満たされない気持ちが私をシアの家へと向かわせた。


 そこにはボロボロのソファーの上に、継ぎはぎだらけのぬいぐるみ……。

 それから三つの火の玉が寄り添うように浮いていた。


「大事に、使いますね…………」


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