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変化
「・・ちょっと質問させて貰っていいかな?」
「・・ええ・・」
この場からこのまま立ち去る訳にも行かず、美里は返事した。
「花ちゃんって音大出てるんだよね」
「え、ええ・・」
「そのまま、楽団とか進むとか思わなかったの?今のピアノ教室で満足してるの?」
美里は、この山川の不躾な言い方が大嫌いだった。人にはそれぞれ事情があるだろう、それを土足で人の家に踏み込むように聞く態度が嫌だし、それ程親しい付き合いをしている訳では無い山川に答える義務も無い。少しむっとした美里に対し、山川は、
「花ちゃんの事聞く前に俺の事言わなきゃな・・俺も音楽かじってたんだ、実は」
少し話の方向が転じて、
「まあ!そうなの?」
美里が山川の顔を覗き込むようにして見る。山川の視線は、依然向こう岸を向いたままだった。
「こんなだけど、大学時代はバンドを組んでてさ。プロになろうかなんて思ってた」
「へえ・・」
美里は意外そうな声を発した。




