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オモト
今の美里には未だ良く分からない言葉であるが、川上真二著「手記」には、香月少年の鳩との出会いから紫竜号誕生秘話、そして競翔に参加する苦悩、心の葛藤、何よりも深い愛情で結ばれた紫竜号との歴史が見える。何度読み返し、目頭を熱くした事だろう。
美里はあのピアノ演奏後の香月の優しい視線を忘れない。一瞬にして彼の虜になってしまった自分が居る。故に、競翔を始めた。しかし、現実は優秀な銘血の仔であれ、地方の田舎の競翔連合会であっても、到底太刀打ち出来ない強豪が周囲に居る事を悟っている現実・・。
この日、突然内山が孫娘沙織と昼前になって現れた。予定外の訪問に少し驚いた美里であったが、近くまで来たからついでにと言う内山に、丁度今の自分の思いをぶつける事にした。内山は入会以来美里が信頼する一人であった。
すると、内山は、
「花ちゃん、それは君が一人前の競翔家に成りつつある証だよ」




