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変化
幸子とは短い会話をした後、美里は次の買い物先に向かった。
数軒の寄り道をした後、美里はピアノ発表会の主催である、松尾会代表、松尾香津子宅を訪問していた。ピアノ発表会での演奏順番、演題、当日の参加人員等の打ち合わせであった。
今年47歳になる松尾は、市内松尾楽器店の奥さんであり、国立音大出身で、声楽をやっている。この松尾会はYAMAHAピアノのかなり大きな会であった。生徒数数名の小さなピアノ教室の美里では単独の開催等は困難なので、この松尾会の発表会に参加の形を取っている。国立の音大で声楽を学んだ松尾は、大きな洋風の家に住んでいる。華々しい経歴の持ち主でもあるが、美里は松尾を苦手としていた。
美里の才能を、松尾門下生の中には認めている者も多く、松尾自身も認めながらも、演奏手法が自分の意に沿わぬと、再三指摘をする事がある。この日・・
「・・・それでね。花川さんの所は午前中のこの時間と、午後からのこの時間に演奏をお願いしたいの。生徒さんについては、幼稚園児のこの娘が、ここと、小学生の部にこの娘とこの娘。午後から中学生のこの娘さんね」