74、物自体三部作その4
ぼうっと立つ少年に向かって少女はいった。
「安心して。何があってもあなたを守るから」
怪物たちが襲ってきた。少女たちが立ち向かう。少女たちは次々と怪物に負けて死んでいく。
「やめろ。やめてくれ。なんでぼくなんかのために命を投げ出すんだ。わけがわからないよ」
少女はいう。
「それはあなたが客観だからよ。あなたは客観なの。わたしたち実存のことなんて放っておけばいいのよ」
「わからない。わからないよ。ぼくが客観ってどういうことだよ。ぼくは客観なんかじゃない」
怪物が少女を屠る。
「あなたは客観じゃないわ。わたしたちの統覚なの。わたしたちの集合意識なのよ」
「そんな。そんなのは嘘だ。だって、ぼくにはきみたちの考えてることなんてわからない。ぼくはきみたちの統覚なんかじゃない」
怪物が少女を屠る。
「あなたのことばは神の啓示に等しいのよ。あなたの思うがままに生きて。あなたの欲望はこの世界の目的そのものなのよ」
「わからないよ。ぼくのことばが神の啓示だって? ぼくの欲望が世界に目的だって?」
怪物が少女を屠る。
「そうよ。この怪物たちはあなたの命を狙っているわ。でも大丈夫。あなたは選ばれし者ですもの」
「わかんないよ。ぼくが選ばれしものだって、どういうことだよ」
怪物が少女を屠る。
「あなたは物自体の表象なのよ」
がくっとぼくはひざをついた。
少女がいう。
「この聖少女の力を借りなさい。彼女は物自体の無意識よ」
聖少女がやってきて、ぼくの味方になった。
ぼくは聖少女とともに、怪物と戦い、怪物を退治した。
消えゆく実存たちの中で、物自体の表象であるぼくは聖少女を抱き寄せ、物自体の無意識のあるがままの姿をさらけだした。物自体の無意識は恥じらいながらも、物自体の表象の男とも女ともいえない男性自身を受け入れ、交わり、激しく振動した。それは物自体の無意識には、体の底、心の奥から突き上げてくる衝動により全身を打ち抜かれるものであった。そして、物自体の表象によりむき出しにされた物自体の無意識の羞恥心が、ただ、男性自身を無意識に求め、目はまどろみ、顔は恍惚となり、物自体の無意識は物自体の表象によって何度も何度も突き抜かれたのだった。




