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海月万花10 いいよ。許可します

時刻は朝の8時ぐらい、外では雨が降っている。ざあざあと降り注ぐ雨は太陽の光を遮り部屋は薄暗い。

じめじめとした空気が陰鬱な気分にさせる。

俺は雨が結構好きなんだけど、こういうのって雰囲気で変わるもんなんだよな。つまり何が言いたいかというと、今、旅館の自室に3人で戻ってきましたが、部屋の空気は最悪です。

姉妹の問題に介入する(キリッ)とか思ってたけど、いざ話し合いになると誰も喋らない。うん、どうしようか。


「とりあえずお茶です」

「…ありがとうございます」

「………」


万花ちゃんと守莉は向かい合ってチラチラと相手の事を互いに見るけれど何も話そうとしない。

このまま無為に時間が過ぎるのも良くないと思う。

どうすればいいのか。はぁ、毎日こんなこと考えている気がする。

介入すると決めたし、腹をくくるか。


「万花ちゃんは守莉に言いたいことがあるんじゃないのか」

「それは…、私は…」

「やっぱり私じゃ駄目でした、そう言ってたよな。何が‘駄目だったんだい?」

「………」


万花ちゃんは黙って俯いてしまう。それに対して守莉も何も言わない。

この姉妹はこの後に及んでお互いに遠慮をしているようだ。

円ちゃんのことを思い出す。あの子なら何でもハキハキと話すんだろうな。

あの不思議な世界で少しの間関わっただけだったけど。

皆を引っ張っていくムードメーカーで、気遣いもできて、華やかな少女だった。

きっとあのまま夏を過ごしていたらとても楽しい夏休みになっただろう。

でもそれはもうない。後悔しないために戻ったんだから。


「円ちゃんのことだろう?」


ビクリと二人の体が同時に震える。同じ反応するのが姉妹っぽいなと場違いなことを考えてしまった。


「自分でもおかしなことを言うかもしれないけど、俺は彼女にあった。そこはここと似ているようで違う世界だ。そこで円ちゃんから二人のことをよろしく頼むと言われたんだ。だからおせっかいを焼かせてもらう」


二人の反応を見る。嘘をつくなと反論されると思っていたが、話を続けていいようだ。


「改めて聞くけど万花ちゃんはどうしたいんだい?黙っていても何も解決しないよ。良い機会だし言いたいことがあるなら言うべきだよ」

「私は…私はお姉ちゃんに認めて欲しいです。私はお姉ちゃんの妹だって」

「認めるまでもないわ。あなたは私の大切な妹よ」

「…そうかもしれない、でも違う。円ちゃんは認められてる。支えあってる。私は守られているだけ」

「万花?」


問いかけに対して堰を切ったように話し出す万花ちゃん。だがその様子はどこかおかしかった。どこか遠くを見ているようだ。


「夏休みが始まってからとある夢を見るんです。その場所には私はいない。円ちゃんのいる夏休み。お姉ちゃんから信頼されて、七咲ちゃんや八重さんとは親友で翔流先輩とは〜。私とは全く違う夏休みで私がどんなに頑張ってもできない

夏休み」

「それはまさか俺と同じ…」

「みんなみんな私に向ける顔と違うんです。私も円ちゃんみたいになりたい。でもなれなかった。私は本当にダメなんだと、ただそれだけが証明されて…、私は………」


再び黙って俯いてしまった。


「…万花、私にはあなたが何を言っているか分からないわ。だってそれは夢の話でしょう?あなたが思いつめているのは分かる。あなたは私の大切な妹だわ、でも過保護なのかもしれない。…もう少しだけ時間が欲しい。私はもう絶対に失いたくない、それだけなの」


守莉は懇願するように万花ちゃんに語りかける。


「………」


万花ちゃんはズボンの裾をぎゅっと握って俯いたままだ。

この姉妹、嚙み合ってない。根本的なところで勘違いしている。

万花ちゃんはただ信頼してほしいだけなのに守莉は勝手に先をよんで今の現状を不満に思っているから過保護の今を解消したいと受け取ったようだ。これは円ちゃんのいる夢を見ているみていない、という差異もあるのかもしれない。

万花ちゃんは確かに過保護を解消したいのかもしれない。けれどそれは自分のためだけじゃない。

守莉にも自由になってほしいんだ。

あの夢で直接見たわけではないが、のんびりと過ごしていたんだろうな。こっちの朝は眠そうな顔をしながら付いてきていたし。


「とりあえずさ…ここでしばらく泊まり込みで働いてみる。というのはどうだろう」


その場の思い付きだから叔母さんには言ってないけど。どうにかならないかな。

でもこれなら守莉も早起きする必要なくなるし、万花ちゃんも仕事をしっかりこなして自信をつける作戦を続行することができる。というかもう何も思いつかないし、なんか他に案があれば聞きたい。


「…私、やってみたいです」

「そうね。ならやってみなさい」


二人は思うところもあるだろうが了解した。あとは叔母さんにお願いするしかない。

この流れで無理と言われたら笑うしかない。


「そうか、ならちょっと待っていてくれ」


俺は覚悟を決めて立ち上がって部屋を出る。

真千子叔母さんは受付にいた。


「すいません真千子叔母さん。お願い事が―――」

「いいよ。許可します」

「え?」

「だからお願い事を叶えるよ」

「まだ何も言ってないのですが…」


こちとら今まで培ってきた社会人経験(コミュ障)のすべてをぶつけて説得しようと思っていたのに、何も言わないまま許可をもらってしまった。正直、拍子抜けだ。


「で、お願い事って?」

「あ、はい、実は――――」


本当になんでもいいみたいだ。

俺は今までのことを簡単に説明して万花ちゃんをしばらく働かせてもらえるよう頼んだ。


「住み込みはいいけど、ご両親の許可はもらうこと」


そんな常識的な注文を最後にされて許可をされてしまったのだった。


どう展開すればよいか悩んでいる間に夏が終わってしまいました。まる

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