3プロローグ③ 出会い
ちょっとずつ進行
美人の暴走バイクが通り過ぎてから数分。
当たり前だが何も解決しないまま歩いていた。
もう俺には進むことしかできない。これって人生と似てるな。
ピチャリ
馬鹿なことを考えていたら、ふと頬に水滴が落ちた。
気が付けばセミの鳴き声も消え、空は分厚い雲に覆われていた。
待ち構えるまもなく勢いよく雨が降ってくる。
通り雨だ。濡れながらも慌てて近くの木陰に駆け込んだ。
一息つきながらざあざあと機嫌よく降る雨を見上げながら溜息を吐く。
「まじでどうするかなあ。諦めて電話で………」
迎えに、という言葉を飲み込みガラケーを見る。
そんなに濡れた感じもしなかったのにちょっと湿ったガラケーはうんともすんとも言わなくなっていた。
「終わった…」
思わず天を仰ぎ見るとどこかから声が聞こえてきた。
この声、まさに天の助け。今度こそ話しかけ…。
「おーい!待てよー!!」
「あはは!捕まえてみろよおー!!」
大声で叫んでいるのか異様によく聞こえる。
セリフだけ聞くとカップルのようだが声が野太い。
多分、人だ。道の先から二人の男が雨に濡れながら走ってくる。
釣り竿を肩にかけ、満面の笑みで駆ける二人は高校生ぐらいの少年に見える。
本当に天の助けか…?正直、話しかけたくない。
おかしな奴にはいないのかこのあたりには!
「あははははは!」
「うふふふふふ!」
普段だったら絶対に話しかけない。
このまま気配を消して、雨と一緒に通り過ぎるのを待つだろう。
だが、俺は話しかけた。もう手段を選んではいられない。
「すいませーん!君たち近くに住んでるヒトオオ!?」
最後のほう声がひきつったけど上出来だろう。
声が届いたのかびしょ濡れの少年たちは俺の目の前で立ち止まって真顔でこっちに向き直った。
これ、やばいやつでは?今さらながらそう思うがもう遅い。
二人は黙ってこっちの出方を窺っているようだ。
一人は茶髪ロン毛をポニーテールでまとめたチャラそうな男。
もう一人はほどよく日焼けした肌と黒ぶちメガネの筋肉もりもり男。
そうだ、シュチュエーション以外はどこにでもいる若者じゃないか。
そう自身を鼓舞して勢いのまま事情を説明した。
すると少年たちは何やら頷きあうと木陰に腰をおろした。
「なら、とりあえずこれだな」
筋肉メガネが手に持っていたのは釣り竿だった。
身振りでお前もこっちにきて座れと指示される。
そして今、俺たちは雨を避けるように木陰から離れた樹木に竿を投げて、雑談していた。
「いや、意味わかんないから!」
「おい、あまり騒ぐな。静かに話せ。獲物が逃げる」
「獲物って、なんだよ…」
「家のバナナが腐ってたから今日はカブトムシだな。
これを糸にくくって投げるんだ。雄狙いなら木の上、雌なら木の根元を狙え」
なんか詳しそうだけど、どうでも良すぎて聞きたくない。
ちなみにロングポニテが谷川結、筋肉眼鏡が大郷益伸というらしい。
大郷は真剣な顔つきで竿の先を睨んでいる。谷川は釣り?にはあまり興味がないようでダラダラと雑談していた。
「で、翔琉は雨ケ谷旅館の手伝いにきたワケかあ」
「そうなんだ。なんとなく行けると思ったんだけど、道に迷っちゃってね」
「なるほどな。まあ、そのうちたどり着いたとは思うぜ」
「太い道は村を一周するように繋がっているから、歩き続ければそのうちたどり着いただろう。まあ、方向は逆だがな」
大郷が釣り竿をさばきながら補足を入れてくれる。
というかカブトムシっぽいのが釣れているのがすごい。
「それにしても、あそこの手伝いか…。升爺さんが朝一にやっていたあれだよなあ」
「内容は一応把握してるんだ。早朝に上流から水汲み。午前中に浴場掃除と廊下とかの掃除。午後はなんもなし。たまに手伝いがあるらしいけど」
「大人びてんねえ。年齢もタメらしいが、都会の男はみんなそんなんなのかよ」
「いや、まあ、そういうわけじゃないんだけど」
真千子叔母さんのやっている雨ケ谷旅館はこの村、唯一の宿泊施設で温泉もあり住民たちもたまに利用している。なので二人も旅館の事に詳しいようだ。
まあ、前の俺は仕事が終わったら部屋に籠ってゲームしてたから住民に会った事はないけど。
旅館の仕事は慣れるまではきつかったけど、慣れたら作業。
口調のほうは、正直、どう話せばいいか分からないだけだ。
という言葉は飲み込む。
「いやいや、簡単に言うけどだいぶきついぜ。でもよ、午後から暇なら遊べるな。こっちは大体このあたり徘徊してるからよ」
「徘徊ではない。だが、暇なのも確かだ」
「ええと、隣町まで遊びに行ったりは?」
「金がねえ。それに片道40分かかるし、バスの本数もねえし」
「というわけだ。雨もやんだしそろそろ行くぞ」
気が付けば、雨はあがり太陽の光が差し込んでいた。いつの間にかセミの鳴き声も復活している。
「益伸、戦果はどうよ」
「500円というところだ」
「おー、いいじゃん!」
虫かごの中には数匹のカブトムシが収められていた。
大郷は自慢げにサイドチェストしながら虫かごを見せてくれた。
もう俺は何もツッコまない。
「って売るのかよ!」
「近所の兄ちゃんが買ってくれるんだよ。てか口調、気持ち悪いからそんな感じでいいぜ」
「…ああ、おう。分かった。案内頼むよ」
「任せろ」
三人で顔を見合わせなんとはなしに笑った。
それからしばらく案内されるままに歩くと見覚えのある旅館が見えてきた。
懐かしい。十数年ぶりの雨ケ谷旅館だ。
この夏以来、この旅館に訪れることはなかったんだよな。
特に楽しい思い出があるわけでもなかったけど、本当に久しぶりだ。
「じゃ、俺たちはここまでだ。またな」
「健闘を祈る」
「本当に、助かった。ありがとう」
ポンと、肩をたたかれて我に返った。
二人は軽く手をあげて挨拶すると去っていった。
気持ちのいい若者達だったな。いや、今は俺も若いのか。
正直、久しぶりにまともに会話したけど案外平気だった。
雨の中、走ってきた時はどうしようかと思ったが、あれも都会の海辺で恋人たちの追いかけっこごっことやらをやっていただけって話だったし。うん、やっぱりおかしいわ。
なんてことを考えながら俺は旅館の扉を開いた。
10話まで頑張ります
1か月続けばうまくなっているはず そしたら改稿します。
展開遅い。想像してるEDまで行けたら嬉しい。




