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帆風七咲3 ほんとに参考にならないねー

「なあ、七咲になんかあったか?」


午後も雨だったので灯台へ向かったら谷川結やがわひとし大郷益伸だいごうますのぶの男二人組が本を読んでいた。最初は宿題をしていたが気が付けば本という名のマンガを読んでいたらしい。

そしてその場でマンガを読みつつ雑談をすることになった。

結がこっちに話しを振ってくる。


「なんかって?」

「いや、あいつが小難しい顔で歩いていたのを昨日見かけてよ」

「話しかけても上の空なのが珍しかったな」

「だよな!」


七咲が小難しい顔ねえ。

昨日は確かにあったけど、特に盛り上がりもなく話しが終わったからなあ。


「昨日は会ったけど特に変な話はしてないはずだけど―――。というかトラウマが大したことなかったって話ししかしてない」

「トラウマならあるぜ!チャック上げるとき皮膚が挟まっちまってそれから苦手なんだよな!」

「ダンベルが床を壊した。俺はそれ以降道具に頼るのをやめた…」

「お、おう」


なんか聞いてもないのに語りだしたな。

しかもお前の番だぜ!みたいな顔でこっちむくなよマンガ読めよ!

まあこいつらなりの気遣いなんだろう。

俺も陸上部の話を二人に話した。


「走るのは好きだけど、それと部活で頑張るっていうのは違ったというか、プレッシャーに弱かったみたいで辞めて落ち込んでたんだよ」

「なるほどねえ。てか凄いな翔琉」

「そうかな」

「ああ、数か月前の出来事なのに何でもないように話せるのは凄いぜ」

「なかなかの精神力だ」


確かに高校生にとってはショックだったかもしれないが、俺にとっては10年以上前の出来事だからな。

達観しているように見えるのかもしれない。


「だが、それなら納得だ」

「だな」


二人は納得して頷いているがさっぱり分からない。

聞こうとしたらこっちの機先を制するように、

「七咲から何も聞いてないなら話せねえ。すまねえ」

と言われてしまった。

「聞きたいなら七咲に聞いてみろよ」

とも言われたので今度また元気がなかったら聞いてみようかな。

いや、やめといたほうがいいのだろうか。

デリケートな事なら聞かないほうがいいのかもしれない。


その後は大郷が筋トレをはじめ、結と俺はマンガを読みつつダラダラ雑談を続け一日が終わった。




翌日、天候は晴れ。ここに来てから13日目。

いつものように水汲みに向かい、階段を降りる。


「やっほー」

「ああ、おはよう」


七咲は来ていた。

顔色もいいみたいだし、体調は問題なさそうだ。

当たり前のような顔をしながら七咲は荷台に乗り込む。

俺も当然のように乗るのを待ってから走り出した。


「お客さん!本日はどこまで行きますか?」

「そーだねー、天ヶ谷旅館まで頼むよー!」

「了解!!」


いつものように坂道をどんどん下っていく。

やっぱり走るのは楽しい。風を切るのが楽しい。苦しいのも楽しい。

後ろには「あははっははっは!!」とやばい感じで笑っている七咲がいる。

正直、俺も同じ気分だ。多分。

旅館まであっという間にたどり着く。


「到着!」

「ふー、着いた着いた」


と言いつつ七咲は降りない。


「どうした?」

「あー、やっぱり家の前まで送ってもらっていいかな?」

「いいよ、叔母さんに一言言ってくる」

「ありがと」


いつもと違った七咲の雰囲気はおとといの事と関係あるのだろうか?

俺は水を運び、真千子叔母さんに一言告げてから戻ってきた。

七咲は真剣な顔で俺を待っていた。


「いくぞ」

「うん」


七咲をのせてゆっくりと進んでいく。

道半ばというところで七咲が口を開いた。


「翔琉はさ、数か月前に辞めたんだよね」

「そうだな」


やはり陸上部の話しだった。七咲は何が聞きたいんだろうか。


「なんで、そんなに平然としてるの?」


平然としているわけではない。実際、昔の俺は夏休み中ずっと旅館に閉じこもって、

誰とも会わずに無為に過ごした。そのままコミュニケーションも苦手となり、寂しい人生を送ってきた。

ただ、時間が解決してくれただけだ。でもそれを七咲に伝えるわけにはいかないしどうしたものかな。

いや、それでも分かったことはあるか。それをそのまま伝えよう。


「平然としてたわけじゃない。陸上部辞めた後は学校でも誰とも話さずに逃げるようにここにきた」

「そんな感じには見えないけどなー」

「たまたまだ。たまたまお前たちに会って、楽しく夏休み過ごして心を持ち直した。それに走るのはどこでだってできるし、陸上部でひたすらタイムを縮めるために練習するのも嫌いじゃなかったけど、ダメなもんはダメだったからな。正直、俺は逃げて、逃げた先でたまたま良い出会いがあっただけだかあら参考にならないと思う」

「ふーん、ほんとに参考にならないねー」


七咲は呆れたように笑っていた。そこに先ほどの真剣な表情はない。


「参考にならなかったか」

「ならなかったかな!ま、気分転換にはなったよ。またね」

「おう、またな」


気が付けば前回別れた場所まで来ていた。七咲はひょいと荷台から降りると帰っていった。

その姿を見送り、俺も帰路に就く。

結局、聞けなかったな。七咲は何を悩んでいるのだろうか。それは体調不良と関係あるのだろうか。

色々と考えるけど、俺にはやっぱり一歩を踏み出すことができない。

やっぱり逃げてんだよなー、俺。

なにかきっかけがあればいいんだけど、なんて思いながら旅館に戻ったのだった。


とにかく定期的に投稿するので1年後ぐらいにはうまくなってます。たぶん。

翔琉君はどこまでもうじうじします。

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