魔王になろう
タッキー「平日にようこに呼び出されてログインしてみりゃぁ…」
GM3 「こりゃ酷いね……」
ジア 「こんなの、私の望んでいた世界じゃない――」
練度の高い戦闘厨を中心としたスキル使いのパーティ。皇女一人で打倒することは不可能だった。
剣士ケインとエアリが、ジアの≪瞬間転移≫で妖精帝国に来たときには妖精帝国の大部分の地域がすでに破壊されている。
皇女の一回り大きな大地のゴーレムの数も無残に崩れ去った。
妖精族たちを守ろうとしたからだ。
多少の犠牲を厭わず敵を攻撃していればあるいは撃破できていたかもしれない。しかし多少の犠牲もよしとできなかった皇女は、結局多大な犠牲を払うことになる。PvPモードは間に合わなかった。
【十万雷の剣士】ケイン・スラッシュ・ゲイード
【氷河剣の癒し手】妖精族のエアリ
【火炎剣/公式勇者】ジア・スルターナ・アフタースクール
【盗剣の間者】リナ
【妖精皇女】リカーニャ・キルデワルド四世
そして、多くの妖精族たち。
スキル使いのレベル平均が上回るとしても、頭数はどうしても足りていない。ケインとエアリはともかく、他は連携も足りていない。ジアのアカウント・バーンで2人葬ったにせよ、後は煙幕やら精霊魔法の水鏡やらで対応され、勝ったものの2時間以上の時間を消費してしまう。
王都はさらに悲惨だった。
セーブポイントの強制変更を行うスキル使いの衛兵は盗賊職であった。盗賊は罠スキルを使える。
針金による妖精ハメ殺しトラップは衛兵に大量の経験点を与えることになる。
経験点でレベルアップし、強化された衛兵にスキル使いでない妖精族は圧倒され、全滅の憂き目に会う。
ジアが妖精帝国の敵を一掃してケインと共に王都に来たときには既にスキル使いの妖精族たちは何度も何度も連続で殺さつづけたショックで廃人のようになっていた。
「すみません。ジア様……。あたしにはどうにも……」
結局セーブポイントを変更していなかったアリーナもまたセーブポイントの強制変更によって硬直/殺されて再び連続的な殺傷にあった。
ぐったりした様子でジアに謝る姿が痛々しい。
ジア 「
ごめんなさい、私が失敗しなければ――
強制変更の対抗手段として貴方のセーブポイントを変更しておけば――
躊躇せず、私が先に王都に転移してアカウント・バーンを使っておけば――
躊躇したとしても、後ですばやくここに来れるよう、一瞬だけ来て跳躍できるようにすることを忘れていなければ――
もっと言えば、セーブポイントの強制変更なんて私がイベントを配らなければ――
妖精族さんたちを帝国に引き込まなければ――
夜中もちゃんと起きてマスターと話をしていれば――
スキルなんて力を望まなければ――
こんなことにはならなかったのに――」
GM3 「じゃぁ、やりなおす?」
それは、まさに悪魔の囁きだった。
タッキー「そんなことできるのか?」
GM3 「そりゃ、ここまで世界が壊れてしまったらやり直すしかないのではないの? 丁度公式リリースがあるし、その時に巻き戻りを起こせば良いのです」
タッキー「やろう。すぐやろう」
GM3 「ただし、他の魔王の人も納得するか微妙なんだよね」
タッキー「なんで? こんな状態で元に戻すことに納得しない魔王なんているのかよ」
GM3 「それをすると異世界人の記憶は全て失われます。そう言われたら? ジアちゃんもきっとそう振舞うよ?」
タッキー「そりゃ、異世界のデータを巻き戻せばそうなるだろうけど……」
GM3 「そうするとまた繰り返しが起こらないとは言えないんだよねぇ。システム的にはこういうことが起こらないようにキモたんとは調整するけども」
ジア 「やってください。お願いします」
タッキー「おいおい。また始めからとかやだな」
ジア 「もう一度世界をやり直せるなら、もしかしたら、タッキーのことも打算じゃなくて本気で愛せるようになりかも知れませんよ?」
タッキー「そう言われると……」
GM3 「じゃぁ、ジアちゃんにお願いがあるんだ」
ジア 「なんでしょうか?」
GM3 「公式リリースまで、世界を徹底的に破壊しろ。他の魔王から巻き戻しに対して絶対に批判が起きぬよう、徹底敵に」
本当に、それは悪魔の囁きだった。
ジア 「――。はい」
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時が過ぎる。
一面の砂漠に一人立つ少女ジア。
風音しか聞こえないその世界で、ジアは西部黒鉄器の錫杖を手にし、一人その場に立つ。
西部黒鉄器はスルターナ家の臣民の希望の象徴であったが、現在では怨嗟の象徴にまで堕ちている。
そこは世界中を、なにか平ぺったいもので叩き潰された世界。
ジア 「これで、巻き戻りに失敗したら、怒りますよ」
GM3 「万が一にもそれはない。さぁ杖を地面へ」
ジアはその錫杖を地面に突き刺す。
砂漠の砂はそれに反応して円を作り、遠くへと広がっていく。
ようこが詠唱する。
GM3 『間違いは正さないといけない。巻き戻し――、巻き戻すといってもいったいどこまで巻き戻せば良いんだろうね』
タッキー「出会いまで?」
GM3 『間違いは正さないといけない。そう、出会いまで。この小説は『魔王になろう』。最初から僕を使い魔にすること自体が間違っていたんだ――』
タッキー「な、なにを言っているんだ? ようこ」
GM3 『間違いは正さないといけない。僕は日本三大妖怪の末裔。さいてーの魔王。七日野ようこ。異世界に振るえる魔力は地球の約300千倍。であるならば異世界だけじゃなく、『世界を正す』ことなんて、どうということもない。ましてや、さらに100万を超える命を犠牲にするのなら――』
唄うように喋りながらキーボードにメッセージを打ち込むようこ。
ワーニングの文字が『魔王になろう』のウィンドウから飛び出す。それはソラへ、そして地球世界へ全体へと広がった。
タッキー「な、なんなんだこれは……。画面の外にまでって……、一体何が起こっている――」
GM3 「じゃぁねタッキー。愛してる。今度はジアと好き同士になるといいね。ばいばい――」
ジア 「もう一度世界をやり直せるなら――
公式勇者スキル Level.50 最終奥義――
≪リターン・オブ・ホーム≫!
」
指で錫杖をパチんと弾く。金色の波紋が世界を覆い、ジアの祈りが世界を真っ白に包み込んでいく――
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駅の改札で私服の中学生くらいの銀髪の少女がいた。
俺の胸くらいまでの身長しかない幼女貧乳のロリ美少女だ。
強い日光を当てるとシースルーで見えてしまうんじゃないかというくらいの薄手のシロのワンピ。
これはあまりまじまじと見ているとそれだけで憲兵さんに連れて行かれるレベルじゃないだろうか。
にも係わらずじっとその美少女を見てしまったのには理由と書いてわけがある。
彼女が手にしている紙。
返信できたメールの印刷物――
印刷物に書かれているのはオフ会の喫茶店への地図だ。
「あれ? 『魔王なろうの』関係者??」
声を掛けると彼女は振り向いて俺を見た。
そして目をぱちりとさせる。
かわいい。
「えーっと、キミわぁー。タッキー?」
俺はうなずいた。
「僕は『魔王になろう』の≪さいてーの魔王≫、七日野ようこっていうのです」
彼女はそしてなぜかどうにでもなれーのAAのポーズを取った。
さすがに噴き出した。
彼女が自称「中二の美少女」設定の『魔王になろう』のアップロード主らしい。
おっさんだではなかったことに俺の中で衝撃が走る。
まさか本物のJCだったとは。しかも美少女だと。
ドン引きだ。
最近女の子と話したことなんていつの頃だったことか。
いつの年代か?
「なるほど。ようこたんは7尾の妖狐なんだね。ちなみに何歳?」
「なぜばれたし。ちなみに僕は514歳なのです」
流行に乗って僕っ娘だ。
「名前聞けばさすがにわかるわ! そしてやっぱり中二かよ」
「さすがにって、いやいや名前だけで分かるなんて凄いですぅ。えぇ、中二の設定ですよー」
そして記事の地図に視線を戻す。
「この地図上ならそこの道を徒歩5分だって、行きましょー」
「って、行きつけの店じゃないの?」
「今日は≪週末の金曜日≫くんの指定だしー。ちなみに金曜日くんは大学教授さんなのです」
あぁ、いつもの参加メンバーにそんなニックネームの人がいたな。
俺らは喫茶店に一緒に向かうことになった。
が、せっかくこんなロリ美少女がいるのに無言で歩いては楽しくない。
その道すがらなにを話そうかネタを考えていた俺。
考えているうちに先にようこが訊ねてきた。
「で、近況報告で読んだけど、タッキーは魔王じゃなくて魔法使いになりたいんです?
魔王さんいいんですよー。
ニンゲンさんから魔王になった例も無くは無いんだけどー?」
「いいや俺は魔王にはならないね。
実はー。俺はそんな魔王を使い魔にしようと思って魔法使いを表明してみる」
ロリ美少女との会話に舞い上がっていたこともあり、調子にのって俺はそんな冗談を言ってみる。
魔族関連の設定が多い小説の主なんだから乗ってくれる、とか考えながら。
「へ?」
「ほら、俺かわいい娘とか好きだし。ようこ。俺の使い魔にならない?」
「あぁ、だめだよ。そのかわり――」
ロリ美少女は、なぜか泣きそうだった。
「魔王になりませんか?
今、小説を模したMMO-RPGを大きなお友達さんと一緒に作っているんですよー。タッキー」
ということでここで「魔王になろう」は一旦切ります。
今回、始めてまともなライトノベルのようなものを書いてみました。
如何でしたでしょうか。さすがにここで終わったら非難轟々になること間違いなしなので当然のように続きます。が、10万字超えているので、気持ちも新たに別タイトルで2015/06/09の18時から3日毎更新の予定です。
http://ncode.syosetu.com/n8869cq/
よろしくお願いいたします。




