仮面の舞踏と緑の狸②
『猫の』ロージスはジアとネームの会話を余すところなく盗み聞きしている。
確たる後ろ盾を持たないスルターナ家がゲイード旧王家に何かを配布して、自身の派閥に取り込もうとしたこと。
そして「庭園」なるものにネームを誘ったことだ。
はたして、何を配布したものか? 庭園とは何なのか?
しかし、それよりも派閥というものに興味が沸いた『猫の』。
だが下手につついて自分が入らなければいけない状態になってしまうのは困る。
ロージス家の基本方針はあくまで中立なのだ。お金になることは除いて。
話の切り出し方は考えなければならなかった。
舞踏会の新しい曲目が始まる。
先ほどのバラードとは違い、少し軽快な曲調に変わった。
時が進むに従って少しづつダンスが細かく、よりダイナミックになることが舞踏会の常だ。
「ところで、先ほどの派閥というのは? 勇者様?」
踊りの中、なるべく耳元で小声で話す『猫の』。
勇者という言葉に反応し、微笑を浮かべるジア。
「派閥派閥に興味が終わりで? しかし中立を信条とする家には合わないのでは?」
ジアが初対面で『猫の』を知っていることに驚く。そしてロージス家の信条も材料に使ってくることも。多少動揺するが、仮面を付けているためそれをジアに知られることはない。
そうお面だ。『猫の』は、ジアの狸のお面と同じく、猫のお面をつけている。
普段の素顔よりも正体を強調しているものかもしれないと考え直した。
実は、『猫の』の正体を知っているのはタッキーとようこからの情報であったが。
ようこは先週から、かなり帝国貴族関係の『設定』を調べていた。
「確かに。でも私はあなたのことに個人的に興味があるのだよ」
「では、まずは庭園から始めませんこと?」
「庭園というのは?」
「私。スルターナ以外にちょっとした土地がありまして……」
それは『猫の』が知らなかった内容だ。
周囲に聞こえないようなるべく小声でジアは話しかける。
だが耳ざとい幾人かには知られてしまうだろう。
あるいはそれを見越してか。
「ならば品物の運搬など管理のお役には立てるかと」
それはロージス家の十八番だ。ウェイバー家の戦術的戦闘に対抗するロージス家の戦略的物流。
「えぇ、土地改良などをお願いしたいですわ。その辺りに私は疎くて……。庭園に入るための手順などは後で私の侍女がお持ちしますので」
とっさに商売のにおいを感じた『猫の』。
「なるほど……。その領地というのは?」
「だいたい面積としては6,363 km²くらいですわね」
「――は?」
『猫の』は驚愕に目を見開く。
その面積は帝国内の一国の領土より大きい。ロージス公爵家の領地よりもだ。
しかもなぜそこまで面積の算出が正確なのか?
思案するまもなく一曲のダンスが終わる。
ジアは『猫の』から離れると軽くお辞儀をした。
「ではまた」
「次は、自分と踊っていただけないかね?」
次にジアの元に来たのは狐のお面を被るコーリン・ウェイバーだ。
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GM3 「あ、狐のお面だ。なかーま?」
タッキー「いやいやいや。それだけで好感持つのはおかしい」
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その頃になると周りの視線を独占し始めるジア。
もともと今回の舞踏会はジアのお披露目のような意味もあるため、もともと注目度は高かったのが、さすがにゲイード家、ロージス家、ウェイバー家と、これ以上ない大物が続くと周囲も騒然としてくる。
「さすがに3曲連続では……、少し休ませては頂けませんか?」
「そうか……」
「少し飲み物でもいかが? 狐の君。先の戦争で狐の君のおじさまには良くしていただきました」
先の戦争といえば――公爵家領地で行われたスラッシュ王国との戦役ということにピンと来るコーリン・ウェイバー。
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タッキー「あ。本命キタ。さぁジアちゃん。妖精さんの話題を振るんだ。」
GM3 「婚活! 婚活!」
タッキー「ちなみにジアちゃんは俺の嫁だから婚活NGな」
GM3 「NTR! NTR!」
タッキー「やめれ」
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「そういえば、狸の君は妖精族と共に戦ったとか」
「えぇ。よくご存知で。その妖精族が数匹。こちらに来て遊びたいと申しております。その養い手を探しているのですが一緒に探してはいただけませんか」
ご存知もなにも武闘派として知られるウェイバー家。
コーリン・ウェイバー自身は当人が武力が低いとはいえ関心がないとは言えない。
妖精族といえば精霊魔法。その代表は大地のゴーレムだ。
「それは――、また珍しいこともあるのですね。妖精族縄張りから出ないことが普通のハズ」
「えぇ、なんでも妖精帝国内の魔物はあらかた駆逐して弱いものしかおらず、経験にならないのだとか」
「武者揃いですか。妖精族といえば小さいのに意外と好戦的ですな」
コーリン・ウェイバーは父である将軍ソラ・ウェイバーに命じられて舞踏会に参加しており、ジアのことなど実のところどうでも良かったのだ。ジアの聖戦モードは強力な力ではあるのだが、しかし攻撃に寄与しないものであり戦力になるか、というと微妙だ。しかし妖精族となると話は違った。
なにしろ妖精族が操る大地のゴーレムはそれ1体で通常兵士の3倍以上の攻撃力を持つのだ。普段は妖精帝国からほとんど出ることがない妖精族を部隊に組み込むことに成功すれば恐ろしく強力な軍隊になる。願ってもないことだ。
妖精族としてはプレーヤーとして経験点が稼ぎたかったことと、例の妖精帝国国外退去の刑を受けて妖精帝国から出ざるを得なかったという事情があった。
二人は部屋の隅に移動し妖精族についての話を進める。
さすがに始めての表舞台で周りの状態まで探ることまではできなかったジアだが、その一挙手一投足は周囲から聞き耳を立てて覗われていた。
タッキーとようこはその様子を面白そうに眺めている。
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GM3 「タッキーの思惑通り、陰謀と策謀あふれる展開になってきましたねー」
タッキー「ぶっちゃけよくわからん」
GM3 「えー。僕一生懸命調べたのにぃー」
タッキー「設定したの間違いだろ。
要約すると、ジアちゃんのスルターナ公爵家の他に帝国には有力な家として、
・ゲイード旧王家、
・ロージス公爵家、
・ウェイバー公爵家、
というのがあって、
・ゲイード旧王家にはリング加入で、
・ロージス公爵家には空中庭園≪秘境≫グンマーで、
・ウェイバー公爵家には妖精族で、
釣った、ってことでファイナルアンサー?」
GM3 「ゲイード旧王家は予想外ですけどね。あんまり役に立つとは思えなくて……」
タッキー「あれ? なんか忘れてね? この前妨害工作しかけて来た小物?」
ここで、面白くないのはヴァリエール公爵家だ。




