仮面の舞踏と緑の狸①
仮面舞踏会。
それは1年に1度上位貴族が集まる催し物の一つだ。
確かに仮面舞踏会は1年に1度しかないが、特別なものではなく、他の月には別の催し物――例えば収穫祭にちなんだ秋の立食会――などが開かれている。
だが今回の仮面舞踏会は今までとは少し様相が異なっていた。
タッキー「しっかし妨害工作すごかったねー」
GM3 「リナちゃんに掛かれば瞬殺だったけどねー」
そこに参加したジアだが、参加する前に馬車に細工をして脱輪させようとさせるなどの妨害工作を行おうとする者が、確かにいた。
だがジアの陣営で警戒していたのはそのような工作に対抗できるだけの間者としての能力と、実力行使を行える力を持った盗賊職でメイドのリナだ。そのような者は速やかに倒されその土地の警護の者達に引き渡された。
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タッキー「誰がやったのか、大体想像できるんだけどねー。ヴァリエール家でしょこれ?」
GM3 「殺っちゃう? 殺っちゃう?」
タッキー「いやこの程度なら普通じゃない? ゲームなら」
ゲーム感覚でいるタッキーには物語でよくある妨害工作であると考えて放置を決め込んだ。
所詮来たのはスキルも持っていないような雑魚なのだ。どうでも良い。
それよりも今は舞踏会だ。
タッキー「しかし、普段着の清楚系な装いもいいけど。この薄緑のドレスもジアちゃん。かわいいねー」
ジア 「ありがとうございます」
タッキー「こう、腰元も締まっていてでかさがさらに強調されるというかなんというかー」
GM3 「むぅ、どうせ私はまな板ですよーだ」
ジア 「?」
そして始まる仮面舞踏会。
ジアの仮面は狸のお面だ。
公爵家のいきさつを知っているモノから見ればバレバレである。
スルターナ公爵家の当主ワリィは、「古だぬき」の二つ名で知られていた。
GM3 「ばれないように私と同じ狐のお面とかでも良かったのでは?」
タッキー「今回は半分ジアちゃんのお披露目会なんだから良いんじゃないの? それに今回はサプライズで妖精さんを用意しているのだから絶対にばれる。意味ないって」
GM3 「妖精さんのご主人様getイベント、略して結活イベントかー。どうやって強引にそっちに持っていこう?」
タッキー「どこをどう略すとソウナルノカナー」
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例年の仮面舞踏会は通常であればそんなに人気のあるものではなく、少数の人数しか集まらない――なぜなら仮面で誰か分からないから。通常来るのは純粋に出会いを求める馬鹿貴族だけだ――のだが、今回に限っては盛況であった。
ジア 「あ。」
そしてジアは見つけてしまう。
プレーヤーの姿をだ。
「こんにちは」
ジアはそのプレーヤーに声をかけた。
父親であるワリィはいきなり超大物に声を掛けるジアの度胸に肝を冷やす。だが既に声を掛けてしまった以上止めようがない。
部屋の片隅でつまらなそうに隠れるように立っていた少年であったが、ジアもステータスのウィンドウを確認してから驚いた。その少年は名目上トップの家柄。旧王家の王子だった。
『名前:ネーム・ゲイード
HP:248/248
MP:50/50
SP:574/574
種族:人間
性別:♂
職業:生産者 (Worker Holicer) Base.Level.20 Job.Level.20
ジョイント:王族 Level.10
称号:ゲイード旧王家第一王子』
「どうも。狸の君?」
「これはこれは、猫の君?」
仮面舞踏会では本名を告げず、仮面の名前で呼ぶことが慣わしだ。
互いにステータスウィンドウが見えている状況ではまったく意味はないが。
「ライオンなのだが」
「これはこれは。申し訳ありませんわ」
「君の美しさに免じていまから猫ということにしておこう」
「ありがとうございます」
「ところで、僕と踊っては頂けないかな」
ネーム・ゲイードはそっと手を差し出す。
周囲に小さなどよめきが走った。
「喜んで。しかし私あまり舞踊はうまくありませんのよ」
「実は僕もだ。安心して欲しい」
「安心できる要素が見当たりませんわ」
ジアはその手を握り、音楽に合わせての舞踏が始まる。
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タッキー「なぁようこ、こいつ誰?」
GM3 「えーっと、確か旧王家の王子? 中の人は――、おっと、中の人などいないのです」
タッキー「また微妙なところを」
GM3 「血統牡馬としては帝国最強だと思うけどねー。何気に他の女子からの人気も高いし」
タッキーとようこはその様子を楽しみながら見ている。
ジアに何か困ったことがあるのであればいつでもサポートするためだ。
もっとも、ジアも2人も政治的なかけひきというのはさっぱりである。
侍女のリナに「あまりにも出たとこ勝負」といわれるのも仕方がなかった。
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「とりあえず (ポイント)配布しますね?」
「あぁ、ありがとう」
「それから、私の派閥に入りません?」
「そ、それは――」
いままで他のプレーヤーと会ったことがなかったネームであり、リングの誘いは願ってもいないことだった。
簡単な操作でジアのリングに入ったネームではあるが、メンバーの多さとレベルの高さに驚く。
こんなにもプレーヤーはいたのか。
『派閥名:雷精霊群の技術基盤機構
リングマスター:ジア:公式勇者/魔術師 (空):人間♀Level,110
サブマスター:リナ:盗賊:人間♀Level.52
構成員:リカーニャ:精霊魔術師:妖精族♀Level.30
構成員:ロロ:精霊魔術師:魔族♀Level.110
構成員:エアリ:精霊の巫女:妖精族♀Level.110
構成員:ケイン:剣士:人間♂Level,110
構成員:ネーム:生産者:人間♂Level.20
所有庭園:≪秘境≫グンマー』
ジアの派閥はまさに有名どころのプレーヤーのオールキャストが揃っていた。
それも公式勇者であれば当然のことか。
「リングの庭園には僕も行っても?」
「それはもちろん――」
やがって1曲が終わる。
そこにジアは別の男性から声を掛けられた。
ネーム・ゲイードにジアから声を掛けたことで男の方からも声を掛けやすくなったのだろう。
ハードルはかなり上がったようだが。
「さて、貴女のような美しい方を私の独り占めにすることはいけないな。できればずっと独占したいところだが。それではまた会おう。僕達はもう派閥の一員であるしな」
「はい」
次にジアの舞踏のペアとなったのは、『猫の』仮面をつけた少年であった。
長くなったので分割しました。




