リア充死ね!意義なし!意義なし!意義なし!
妖精帝国から1匹の妖精族が攫われる――
たった1匹の妖精ではあった。
たいした能力がある妖精ではない。
妖精帝国内の地位も特別なものでもない。
どちらかといえば下位。
たまに発生するこのような連れ去り事件に対しては実行犯を全て妖精帝国内で始末していた。
それを突破したものが現れたのだ。
大失態だった。
妖精帝国にもメンツというものがある。
およそ3ヶ月前、エアリが妖精帝国から連れ去れた事件は妖精帝国全土を震撼させる大問題だ。
すぐさま事件は妖精帝国の妖精皇女の知るところとなり、妖精帝国全体に非常事態宣言が発令された。
妖精帝国に緊張が走る。
5千騎の全妖精師団が一丸となってスラッシュ王国に突入し、その国土全てを血祭りにあげる寸前までいった。
だが、それに妖精皇女がストップをかける。
そのニンゲンの剣士は妖精達が構築した地のゴーレムによる包囲陣を突破し、あまつさえ助っ人である精霊魔術士すら撃破してみせたという。
そのニンゲンはフシギな剣術とも魔法とも言えぬ術を操っていた。
いつでもそのニンゲンは殺れる。
だが不思議な術の正体を確認してからでも遅くはない。
そうして複数騎の妖精族が姿を隠しながらの観察が始まる。
実際のところ、その妖精族はすぐさま奪還しないといけないような特別種でもないわけだから。
妖精族の少女――エアリ――はその後開放され、しかし逃げ出す様子もなく、その剣士の周りを自由に飛びまわっていた。
そして数週間経ったある日。そのフェアリー (エアリ)が、従来妖精族が使う回復魔法の体系とは似て非なる回復魔術の体系を使い始めていることに気づかれてしまう。
「詳しく調べ上げろ! その術を解析して我がモノとするのだ。
ただし接触はするなよ。よく分からない術だ。感づかれて逃げられたら捕まえられないかもしれない。
たかが下位の妖精族のやることだ。調べればすぐに分かるはずだ」
そして妖精帝国の妖精群が総出で調査に入る。
が、詳しいことは分からない。
しかし会話については問題なく聞き取れた。
・いわく、術の名称はスキルと呼ばれているらしい。
・いわく、スキルには剣士系、回復系と複数の体系があるらしい。
・いわく、空間上の何かを押すとスキルが発動する。その行為はクリックと呼ぶらしい。
・いわく、ピンク色の皮に包まれた果実は桃と呼ばれ、攫われた妖精族エアリのお気に入りらしい。
・いわく、妖精をさらった剣士は金髪巨乳のエルフが好きらしい。
・いわく、剣士は実はニンゲンの王子で、白馬に乗ると凄くカッコイイらしい。
・いわく、剣士の名前はケインといい、普段はイケメンだが寝顔はあどけなく可愛いらしい。
…………
一行に進まない術の解析。
しかし楽しそうにはしゃぐエアリと王子の物語だけは面白おかしく伝わってくる。
働くことをあまり好まない妖精族。
それはいつしか術の解析そっちのけで全ての妖精達の大いなる娯楽になっていった。
だから当初は、
「したっぱの妖精族がニンゲンに捕まっていろいろ酷いことさせられているんだってー」
「なにそれかわいそう」
といった会話が、
「あいつさぁー。今日も珍しい果物ゲットして、ニンゲンのオトコといちゃこらしてるんだってー」
「なにそれ赦せん」
に変わっていくのにそれほど時間は掛からなかった。
さらにスキルの習得レベルが上がったのか、エアリがスキルでエルフの姿に変身できるようになり、2人の仲難しい姿が確認されると、
「「リア充死ね!」」
「「リア充死ね!」」
の大合唱の盛り上がりを見せる。
自分達はナゾのスキルの解析に懸命だというのに。
その対比があまりにも酷すぎたのだ。
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だが、最後の結末としてエアルの死を迎える。
「あいつら許せねぇ!」
「ケイン様を助けなければ!」
「意義なし!」「意義なし!」「意義なし!」
「イケメンじゃないニンゲンに死を!」
「意義なし!」「意義なし!」「意義なし!」
妖精帝国の全ての帝国民は嘆き悲しみ、すっかり妖精族の王子様たるケインに同情する世論が形成されていた。
「あのー。お取り込みのところ申し訳ないのですが……」
そこに、MMO RPGがごとくHP0により妖精帝国に戻ったエアルの姿があった。




