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試し撃ちがしたいだけだから

「おうおう、ねぇちゃんたち。護衛がいるんだって?」


 哀れな冒険者(かませいぬ)達がジア達にちょっかいを掛けてきた。

 数は5人くらいか。いかにもチンピラ風だ。

 それを複数の人が遠巻きに眺めている。

 正確には眺めているのは始めから。冒険者ギルドにいる冒険者全員が彼女達を観察していたのだ。

 冒険者ギルドで彼女達のあまりにも場違い感。目立つことこの上ない。

 彼女達はいったい何物なのか?


 アホがちょっかいを掛けている。

 それを助ければ彼女達にうまく取り入れられるのではないか?

 そういう打算も上位の冒険者達にはあった。

 ちょっかいを掛けている冒険者達はそれなりのグループだが、上の冒険者から見ればゴミ同然なのである。


タッキー:「おーぃ。ようこさーん。定番すぎるんだろー」


GM3 :「そして拉致られるわけですね。そしてごにょごにょ」


タッキー:「だからそのネタもういいって」


ジア  :「……」


 ウィンドウにメッセージが継続して流れているがジアは華麗に無視した。


(殺りますか?)


 リナが目でジアに確認する。

 ジアは目配せでそれを止めた。


「おれちゃちゃー。こう見えてもBランクだぜ。姫様の護衛なんて朝飯まえだぜ」

「「ぐへへへ…」」


 受付前で取り囲む冒険者(かませいぬ)達。

 受付のイケメンは引きつっていた。



GM3 :「あ-。こいつら気にいらないのです。だいたい冒険者なのにイケメンじゃないなんてありえなくない? 誰だよこんな設定にしたの。ロロたんの趣味かなー」


タッキー:「ちょっそそこのきみぃ(うんえい)。ぶっちゃけ発言はやめたまえ。そしてロロたんて誰だよ」


「お断りいたします。

 貴方達はゴブリンさんよりお強そうです。

 郊外で組み敷かれたらしたらとても抵抗とか出来そうにないですもの。

 そうよね…。あそこにいる少年2人組とかどうでしょう?」


「え、おれら?」


 いきなり声を掛けられる少年2人。

 彼らは冒険者ギルドに加入したての、ランクC程度の実力しかない。

 だが、護衛依頼で発生すると想定される敵は複数いたとしてもランクD。

 下手をそうれば農民でも撃退できる。そんなに強い敵ではないのだ。


「そうですわよ。こっちにいらして下さいな」


 そうして戸惑いながらも少年に受付で護衛依頼をさせると早々に冒険者ギルドから去った。


「なんだありゃ?」


 ちょっかいを出してみたものの、特に手を出すこともできずそれを呆然と眺める冒険者(かませいぬ)達。


「まあぁいいか…」


 さすがに冒険者ギルドで事を起こすことはない。

 ただし郊外に出てしまえば……

 冒険者(かませいぬ)達はひっそりと後をつけることにした。




 冒険者ギルド・フィアの街支部では緊急対策会議が開かれている。

 そこはギルドマスター室。

 突如として現れた2人の人物の情報がテーブルの上に並べられた。


『ジア:

 冒険者ランクB- (EXP:討伐0,採取0,運搬/護衛1,000)

 クラス:魔術師 (属性:空)

 主武器:なし

 発行国:エンパイヤ帝国/スルターナ公国/スルターナ王都

 ※注釈:大手スポンサーにつき取扱注意 (スルターナ公国冒険者ギルド)』


『リナ:

 冒険者ランクB- (EXP:討伐0,採取0,運搬/護衛1,001)

 クラス:シーフ

 主武器:短刀

 発行国:エンパイヤ帝国/スルターナ公国/スルターナ王都』


 

「何者なのでしょうか?」


「わからん。問い合わせはしたのか」


「無理です。最低でも1週間は掛かりますし、そもそもスポンサー指定が付いていますからまともな回答が来るとは――」

 ギルドマスターとその秘書。


「俺も見た感じはただの貴族にしか見えないな。

 うちの手のものが出ているからあいつらごとき何とかなるだろう」


 その会話に割って入るのはランクSSの冒険者。ナカスだ。


「あぁ、ナカスのところのレンジャーとシーフか。あやつらなら大丈夫だろうな」


 ギルドマスターは頷いた。


「しかし空属性の魔法使いか。聞いたこともないな」


「もしいればそれだけで伝説級といわれるでしょうね、

 王族クラス、であれば考えられなくもないですが」


 この世界に現在で土着している魔術は光/闇/地/水/火/風の6属性。

 それに回復系と呼ばれる計7大体系が一般的だ。

 回復系は一般には神聖系とも呼ばれているが、別に神々を信仰していなくても使える者は使えるため、神々が起こす奇跡とは違うとして宗教家であるほど使わない言葉だ。

 他には太古魔術といわれるものがある。特殊なものが多く、空属性がもし存在するのであればこの太古魔法ということになる。


「まぁ、間違いなく嘘であろうな。

 もし存在したとしてもそんなこと自己申請するわけがない。

 下手すればそれだけで帝都連行ものだ。

 魔術もろくに知らぬものが書いたに違いない」


「案外本当で、ゴブリン相手に単に試し撃ちがしたいから、とかだったら楽なのですが……」


 正解にたどり着いていることに気づかず、冒険者ギルドでの混乱は続くのであった。

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