09
玄関のドアがバンッと大きな音をたてて開かれ、足早にこちらに向かってくる音がする。
「お姉様!私のお姉様!お久しぶりですわ!」
捲し立てる言葉と共に、瞳の中にも体の周りにもハートマークがオーラとして体現出来そうな人物が現れた。
お母さんと同じ銀髪をポニーテールに結い上げ、ぱっちり二重の瞳は深緑で、すらりとした体は軽やかそう。
この人がお母さんの妹か…濃い。
お母さんに抱き付こうとしたのか両腕を広げて近付くが、私が抱かれているのを見て笑顔が驚きの表情に変わる。
「あらあら、まあまあ、これがお姉様の赤ちゃん…」
まじまじと私を見つめ、端正な顔を近付ける。
顔つきもお母さんと似てるし、睫毛長いな。
ていうか、『これ』呼ばわりか。
「アリエル、久しぶりね。この子が私とリーグの赤ちゃん、ウィークよ」
お母さんは妹のテンションに慣れてるのか、驚くこともなく私を紹介する。
「ウィーク…あなたの叔母のアリエルですわ。よろしくね」
私の名前を呟くとにっこり笑いながら自己紹介し、右手の人差し指を私の掌にくっ付ける。
「あう」
私はくっ付けられた人差し指をきゅっと握り、にっこり笑顔で返事をする。
「なっ!なん、何て、何て可愛らしいのかしら!お姉様、ウィークを私にも抱かせて下さいませんか?」
私の笑顔にノックアウトされたアリエルは、お母さんを見つめて問いかける。
チョロい。
お母さんは笑顔で頷くと、私をアリエルに渡す。
「ああ、可愛らしいわ…」
抱き上げた私の頬に頬擦りすると、うっとりと呟く。
「私やお姉様と同じ銀髪なのね。…目はお義兄様の紫ね。あの人、忌々しいけど顔立ちだけは良いし、ウィークも美男子となるでしょうね」
頭を撫でたあと、私の目を見つめて言うアリエル。
お父さんと確執があるのですか。
シスコン極まってますな。
「積もる話もあるし、昼食にしましょう?今日は泊まっていけば良いわ」
お母さんが苦笑いしながら話しかけ、椅子に腰掛ける。
「はい、お姉様。お世話になりますわ」
嬉しそうに笑うアリエル。
可愛いけど、やっぱり濃いわぁ…。