16 ウラティナ・シークエンス
私の家は代々、魔法に長けた一族だ。
祖先のイスタルト・シークエンス様が賢者と謂われたのもあるが、魔力に長け魔法具の開発に力を入れていたのもあるだろう。
しかし、私は魔力が少なく頭もさほど良くなかった。
それでも、人一倍魔法の練習もしたし、勉学にも励んだ。
それでも、一番にはなれなかったし、妹のアリエルと比べて私は劣っている。
皆、口には出さないが、いつも劣等感を感じていた。
一族の証の銀髪に私は誇りを持てなく、シークエンスの名に値しない自分がただただ嫌いだった。
そんな時、私はいつも体を動かして、一族から目を背けていた。
それすら、脳筋だと馬鹿にされるような目を感じていたが。
一族の証も、一族の名も捨てれない私はそれでも女騎士として、ある程度の地位を築いた。
実家に居るのも居心地が悪くて寮生活を送れる騎士の職、それも逃げだった。
そんな時、リーグと出会った。
「あなたの髪は、まるで白銀に輝く雪景色に似ていますね」
出会った時の彼は、私とは違うけれど似たような負を感じさせる目をしながら開口一番にそう言ったのだ。
寡黙だと有名だが、外見の良さから評判が良い彼に私は人生で初めてときめいたのだ。
寡黙だが、口説く時の饒舌さがギャップでいつも誰にでも囁くのだろう。
しかし、シークエンス家の証としてではなく、私自身を見てくれたように感じた。
私は時々、彼の姿を目で追ってしまっていた。
それでも、私は自分から声をかけることも、彼が私に再び声をかけることもなかった。
だが、騎士対抗試合で男性一位と女性一位同士が戦う際、剣を交えることとなった。
私の負けで終わったが、彼と戦う時は不思議と楽しかった。
彼もそう感じたようで、度々私達は話すようになった。
彼もまた、劣等感を感じていた。
彼の父が王都騎士名誉団長という、高いハードル。
高みを目指して地位を築いても、親の七光りと言われ。
母親の高い魔力を引き継げず、戦いの中でも魔法を使用する者との縮まらない差。
私達はそれでも、傷をなめ合うような関係にはならなかった。
そうしてしまえば、二人揃って落ちるところまで落ちてしまうから。
二人とも努力でここまで来たのだ、なめ合うことなどしても傷は深まるだろう。
そんなことで彼自身を好きな気持ちを無下に出来ないほど、私は彼を愛してしまった。
それは、彼も同じだった。
傷は彼と過ごす日々が癒してくれた。
知らない彼を知る度に、彼を愛しいと感じる度に、彼が生きていると分かる度に、私の荒んでいた心が綺麗になっていく。
辛かった思い出も、自分に劣等感を感じた気持ちも、逃げていた自分自身の生まれも、全てを許せるようになった。
だから、彼がプロポーズしてくれた時は、世界に素直に感謝するほどに嬉しかった。
彼を愛してよかったと思った。
きっと、私を私だと見てくれた彼だからこそ愛せたのだ。
そして、その気持ちが私に向き合う勇気をくれた。
家族との絆も大切だと気付かせてくれたから、名にも証にも自信をもてた。
程なくして生まれてきた、私達の愛しい証。
辛かったら、支えよう。
私達は強い絆で結ばれてるのだから。
きっと、あなたの目にも美しい世界が見えてるはずだから。
ウィーク・シークエンス、私と夫の愛し子。




