第024話「白花の香をつける」
【Tips:〇二四 お礼】
・ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
粗を探せばいろいろと見つかるような物語ではあると思いますが、パリィとランナのあれこれを感じてもらえたら幸いに思います。
実は本作は大昔に書いたレビュンやルシェルが主人公の本編の前日譚的外伝として書かれたという背景があります。
この本編は長い年月の中で消失してしまっているのですが、もしかしたら、本当にもしかしたら、当時の記憶を頼りにまた書くこともあるかもしれません。
重ね重ね、最後までお付き合いいただきありがとうございます。
もしよろしければ、ひとことであってもコメント等いただけると嬉しく思います。
それでは、また次の物語でお会いしましょう。
【〇二四 白花の香をつける】
「ガリンガルから聞いたわ。お疲れ様。おかげで脱走事件は解決しそうよ」
翌朝、ルシェルから呼ばれた二人は彼女の部屋で顛末を聞かされていた。
「タリストマからの行商人が剣士たちの手引きをしていたみたいなの」
タリストマ。ティーシャから見て南にある、広大な農地を持つ大国だ。ティーシャを挟んで北側にある、屈強な軍を持つリンギィ国と近く軍事同盟を締結するという話のある国だ。
「そう言えば、秘薬の出所もタリストマという話しもありましたね」
パリィが言うと、ルシェルは頷いた。
「ええ。どちらにせよ、タリストマはティーシャに対して露骨なほどに敵対行動をしているわ。戦になるとしたら、まっさきにタリストマと思っておいた方がいいわね」
「南国か……暑いのはちょっと苦手だな」
「そうなのランナ?」
「うん。熱いのはお風呂だけでいいかなって」
「ふふ、そうね。わたしもその方がいいかも」
などと笑い合うふたりを、ルシェルはにこにこと見つめ、そして言う。
「――それで、ふたりはどうなったのかしら? その報告を聞きたくて来てもらったようなものなのだけれど?」
「そ、それは……」
パリィがちらりとランナを見ると、ランナはこくんと小さく頷き、言う。
「はいっ。隊長として報告をします。わたしランナは……パリィと恋人になりました」
「ちょ、ちょっとランナ――」
パリィの顔が一瞬で真っ赤になる。
「ふふっ、じゃあ丸く収まったということね。もう、結構はらはらしていたんだからね。特にパリィには」
「そ、それは言わないでくださいルシェル様」
「いいじゃない。あーあ、でも良いわね、恋人同士ってなんか」
するとランナがすかさずに言う。
「ルシェル様も、黒様とよりを戻せばいいじゃないですか」
「ふふ、それもありかなーなんて、ちょっと思ったけど……ないわね」
「えぇー、黒様優しいのに」
「そういう問題ではないの。まぁふたりとも、任務に支障のない範囲で仲良くしなさいね。今日は休暇をあげるわ。昨日の手柄のご褒美よ。めいっぱいイチャイチャしてていいからね」
――と、二人は不意の休暇を得ることができた。
部屋を出た二人は行くあてもなく、とりあえず宿舎を目指していた。
ランナがじっとパリィを見る。
「ど、どうしたの?」
「パリィ、少し眠い?」
「う、ううん。そんなことはないけど……眠そうに見えたかしら?」
「そんなことはないけど、昨日、一睡もしていないでしょう?」
「そ、それはランナが……」
結局あの後、一緒に風呂へと入り、その後はランナの部屋で一緒に寝るということになったのだが、お互いにどれくらい好きなのかを伝え合ったりしているうちに、朝になってしまったのだった。
「ふふ、パリィだって。可愛かったよ」
「も、もう、そういうことは外では言わないで」
「いいじゃない。本当のことなんだもの」
「それなら、ランナだって可愛かったわ」
「えへへ、ありがとう」
ランナの笑顔が咲くのを見た瞬間、パリィの頭にあの光景がよぎった。
以前一緒に見た星空と、群生する白花の光景。
「白花……」
「うん?」
「そうね、白花にしましょう」
パリィの唐突な言葉に、ランナは首を傾げた。
「なんの話?」
「戦闘香の話よ。ランナが紫瞳花を選んでくれたように、わたしもあなたとの思い出のある香りを使おうと思って」
「それで白花? あの時に、星空と一緒に見た時の?」
「そうよ。一緒の思い出でしょう? すぐにあの時と、今の気持ちも思い出せる。いつもあなたを近くに感じられそうで」
「ふふ、いいかも。じゃあ、これから用意する?」
「えぇ、そうしましょう。それが終わったら……」
「終わったら?」
「一緒に、少しお昼寝でもしましょうか」
「うん、賛成! って、パリィ、本当に眠れる?」
「ど、どういう意味かしらランナ?」
すると、ランナは愉快そうに微笑んだ。
その顔は本当に白花が咲いたように、可憐な笑顔だった。




