表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
0  〈ゼロ〉  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/10

第5話 



「また……誰かが行くの?」

 話を聞いていたティリスが、不安そうにしていた。

 カイム達があんな酷い姿で帰って来たというのに、今度は別の人が行くなんて、心配だったのだ。

 また、被害者が出てしまうのではと思うと辛くて、思わず唇を噛み締めた。

「調査に行かない訳にはいかない。街に進行して来る様子があるなら、早急に対処しなければ、別の被害が出るからな」

 自分の事の様に不安を見せるティリスの頭を、クラヴィスは優しく優しく撫でた。

 魔物達の生態や棲息地を知り、早急に対処する事が自衛にも繋がるのだ。そうやって、人類は生き長らえてきた。これからもそうである事に変わりはない。

 過激な考えの者達は、棲みかである地をすべて焼き払えばいいと簡単に言う。

 だが、棲みかや行き場を失った魔物達は、狂った様に一斉に村や街に襲いかかる事だろう。そうなれば、さらに魔法だけではなく、兵器を使った戦争のようになってしまう。

 確かに、そこまですれば魔物達は激減するか、あるいは滅ぶかもしれない。しかし、それによって人間もまた対価を払う事態となるだろう。

 だから、それはあくまでも "最終手段"なのである。



「私も……私もついて行っちゃダメ?」

 隣にいたクラヴィスの袖をねだる様に、ティリスはツンツンと引っ張った。

 1stのヴォングがダメだったのであれば、当然その上であるゼロが行く可能性が高い。行くなとは言わない変わりに、すぐに回復してあげる事が出来るよう、なるべく近くに待機していたかったのだ。

 それは、治癒魔法が使えるティリスの過信や慢心であるかもしれない。だが、早急に治療出来れば助かる命もある筈だ。

 安全な場所で、ただただ皆の無事を祈るだけだなんて、ティリスには出来なかったのだ。



「「「ダメだ!!」」」

 その瞬間、周りからは一斉に声が上がった。

 誰もが危険過ぎると、間髪を容れずに大反対である。

「でも!!」

 そんな皆に怯む事なく、ティリスは反論しかけた。

「そんな危険な所に、お前を連れて行けるか!!」

 普段なら冷静沈着であるクラヴィスが、真っ先に声を上げた。

 ただでさえ同行があり得ないのに、行くのはまだ何一つ分からない危険な地。そんな場所に、近寄らせる訳がなかった。



「でも、せめて近くにいられれば、助けられたかもしれない!!」

 だが、ティリスは引き下がらなかった。

 大切な仲間の最期を見届けるために、この【力】があるのではない。助けるためにあるのだ。危険であればある程、自分の力が必要な筈だと訴える。

「ダメだ」

 しかし、今度はアルフォード社長がティリスの言い分を切った。

 彼女の気持ちも分からない訳ではない。だが、それはそれ、彼女の安全が第一であって、他者など二の次なのである。



「……でも!」

「ティリス」

 まだ引き下がるつもりがないティリスの言葉を、低く爛れた声が遮った。

「ヴォル」

「ここで "何"をしている?」

 その怒気を孕む声にティリスは、身体が一瞬竦んだ。

「何をしていたかと訊いている」

 黙るティリスの傍に歩み寄り、再び訊く。

 彼の名は"ヴォルフラム"といって、腕のいい医師であり、魔物研究者の第一人者でもある彼は、皆に "博士"と呼ばれている。



 白衣姿にモノクルの眼鏡、それだけなら医師か研究者に見えるが、雰囲気はどこか陰湿な感じを漂わせていた。しかし、不気味なのは、その風貌にある。

 彼の顔は右上半分が焼けて爛れていて、それを隠すかの様に髪を垂らしているのだ。その不気味さは初見でなくとも、思わず目を反らせる程である。

 勿論、治癒魔法が使えるティリスであれば、治す事も可能だ。だが、彼は敢えてそのままでいたのだ。それは、魔法を使う彼女への負担を、掛けさせぬようにと云われていた。



「……怪我人の……治療」

 突き刺す様な視線に、ティリスは思わず顔を逸らせた。

 それは、彼の顔に怯えたのではない。"視線"に怯えたのだ。

「調査に行っていた1stの治療にあたってくれていたんですよ」

 そう言ってウルは、彼とティリスの間に割って入ったくれた。

 一生懸命に治療をしてくれた彼女を責めるのは、黙認出来なかったのだ。



「誰の許可を得た?」

 ヴォルフラム博士はその言葉に目を眇めた。

「彼女が治療をするのに許可なんてーー」

 必要ない筈だと、今度はシン主任が庇う様に口を開いたが、ヴォルフラム博士はそれも遮った。

「ティリス。今日は "治療日"ではなかった筈だ。お前達、連れて行け」

「「ティリス様、行きましょう」」

 ヴォルフラム博士は、シン主任やウル達の意見など無視し、自分の脇に控えていた部下2人に、ティリスをここから連れ出す様に命じた。

 ここに居れば、新たに治療にあたらせる事になるからだ。



 まだ何か言いたげのティリスにヴォルフラムは「出禁にしてもイイのか?」と釘を刺されれば、もはや黙るしかない。

 


 ここを出禁にされてしまえば、治療してあげれないからだ。

 そうなれば、これから助けられる人達を見殺しにする事になる。ヴォルフラム博士の本気を知ったティリスは、反論するのはやめて自分の部屋に戻る事にしたのであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ