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対岸盗り

 9月とは言え、まだまだ暑い昼下がり、1台の軽四が辺戸岬の駐車場に入ってきた。車には、3人の男が乗っていた。その男たちは、車から降りるやいなやスマホを手にし操作している。

「駐車場は、沖縄だ。」やや小太りの男がつぶやいた。

「竹の塚の先生、ネット情報で対岸取りはここじゃ無理と載っていましたよ。」

と、3人の中で一番若い男が言ったところ、小太りの男は、

「相模大和さん、竹の塚の先生て呼んだらレールウエイライターみたいじゃないか?」

と、言った。続いてリーダー格と思える白髪混じりの男は、

「でも、トライスターさんは、専門学校の先生だし、竹の塚に住んでいるから竹の塚の先生で間違いは無いかも」と、言った。

「それを言ったら、リーダーあなたは、四方津の団地にすんでいるんだからアナリストですね。」

「○○すべし、ですね。」

いい年をした大人たちがあだ名で呼び合っていることに不信感を持つ読者もいるかもしれない。ただ、インターネットにはまり込んだ、そこまでいかなくてもかじったことのある人なら別に変だなとは思わないだろう。この3人はネットで知り合い、実際にあってみる、いわゆるオフ会で会い、気の合う仲間として、今日は沖縄に旅行へきているのである。

ところで、読者は竹ノ塚の先生が言った「駐車場は、沖縄だ」、そんな言葉を聞いて何を当たり前の事を?と、思うかもしれない。ケータイやスマホには、位置情報を使ったオンラインゲームが有り、ケータイ国取り合戦やコロプラが有名である。位置情報は、基本的にはケータイの基地局の位置情報をケータイの位置情報として取り扱い、その基地局のエリアの電波を受信したらそのエリアはクリアと言うものである。

ここ辺戸岬は、鹿児島県与論島とわずかな距離であり、海上という特性から辺戸岬で与論島基地局の電波をひろう事もある。山の上や海岸で遠隔地の基地局の電波を拾う事をゲームプレイヤーの間では、対岸取りと呼んでいるのである。

男たちは、岬の方へ歩いて行き先端でそれぞれスマホを操作し始めた。「ここも沖縄」、若い男がつぶやいた。リーダー格と思える男は、

「岬の先は、開けていて沖縄本島の電波拾うと誰かのブログで読んだ。南側に何か遮蔽物があるところに行こう。」

と、言い駐車場の方へ歩いて行く。他の2人もついていった。

「ここならどうだろう?」

倉庫の前で、小太りの男は言った。他の2人は、うなずき、スマホを操作した。

「取れた」

3人は、声を揃えた。






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