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この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


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観測者

※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


 夜。


 班目唯は、パソコンの画面を睨んでいた。



 記事が並ぶ。



 横領事件。

 政治家の自白。

 再捜査。



 すべてが“解決している”。



「……早すぎるでしょ」



 小さくつぶやく。



 普通じゃない。



 事件が動く速さ。

 証拠が出るタイミング。

 証言が変わる流れ。



 どれもが、出来すぎている。



「……こんな綺麗に繋がる?」



 スクロールを止める。



 指が止まる。



「……誰かが、やってるみたい」



 その言葉に、自分で違和感を覚える。



「……いや、ないか」



 あり得ない。



 そんなこと。



 はずなのに。





 翌日。


 大学構内。



 班目は歩きながら、昨日の記事を見返している。



 ふと、足が止まる。



 前を歩く男。



 宮島悟。



 ただ歩いているだけ。



 何も変わらない。



 普通の学生。



「……」



 目で追う。



 理由はない。



 ただ、引っかかる。



「……なんでだろ」



 自分でも分からない。



 ただ。



 “何かに関係してる気がする”



 根拠のない感覚。





 カフェ。



 悟が一人で座っている。



 何もしていない。



 ただ外を見ている。



 班目は少し離れた席に座る。



 コーヒーを頼む。



 視線は向けない。



 だが、意識は向いている。



「……普通だよね」



 見た目も、態度も。



 どこにでもいる。



 それなのに。



「……なんでだろ」



 違和感が消えない。





 店内で、小さな音がする。



 誰かがコップを倒す。



 床に落ちる。



 ガシャン、と割れる。



 普通の出来事。



 店員が慌てて片付けに来る。



「申し訳ありません」



 誰も気にしない。



 日常。



 班目は、その光景を見ている。



 何もおかしくない。



 それでも。



「……」



 さっきまでの“違和感”が、消えない。





 帰り道。



 スマホを見る。



 またニュース。



『新たな証言により、事件は大きく進展——』



 同じ流れ。



 同じ速さ。



「……こんなにうまくいく?」



 立ち止まる。



 空を見上げる。



「……偶然?」



 違う気がする。



 でも、証拠はない。



 何もない。





 夜。



 オフィス。



 斉藤和樹が資料を見ている。



「班目」



 呼ばれる。



「今回の件、どう思う」



 班目は少し考える。



「……変です」



 はっきり言う。



「全部、出来すぎてます」



 斉藤は、少しだけ笑う。



「だよな」



 同意。



 だが。



「証拠は?」



 問い。



 班目は、言葉を失う。



「……ないです」



 静かに答える。



 斉藤は頷く。



「じゃあ記事にはできない」



 現実。



 班目は唇を噛む。



「……でも」



 小さく言う。



「何かあります」



 斉藤は、少しだけ目を細める。



「……だろうな」



 短く答える。



「探せ」



 一言。





 その夜。



 班目は一人で歩いている。



 街灯の下。



 スマホの画面。



 事件の流れ。



 人物。



 タイミング。



「……どこだ」



 何かがある。



 見えていないだけで。



 確実に。



「……見えてないだけか」



 その言葉が、静かに落ちる。



 風が、少しだけ強く吹く。



 誰もいないはずの空間。



 だが。



 ほんの一瞬。



 “何かに見られている”気がした。



 振り向く。



 誰もいない。



 ただの夜。



「……気のせい、か」



 そう言いながらも。



 班目は、少しだけ足を速めた。



 まだ、知らない。



 だが。



 確実に近づいている。



 “観測”へと。


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

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