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この世は観測されるまで存在しない  〜世界で唯一魔法が使える俺が、日本の闇を書き換えた結果〜  作者: soletes


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接触

※この物語はフィクションです。

あなたが観測するまでは。


夜。



 編集部は、いつもより静かだった。




 蛍光灯の下。



 机の上に並ぶ資料。




 班目唯は、その前に座っていた。




「……繋がってる」




 小さくつぶやく。




 杉並の事件。



 交通事故。




 どちらも。




 “途中が抜けている”




 記録はある。



 結果もある。




 だが。




 そこに至る“流れ”が、不自然に綺麗すぎる。




「……」




 画面を見つめる。




 更新履歴。



 映像データ。



 証言ログ。




 すべて。




 “整っている”




 だからこそ。




「……おかしい」






 画面が切り替わる。




 大学。




 学生の顔写真。




 その中の一人。




 宮島悟。




 班目は、その名前を見る。




「……偶然?」




 小さく言う。




 だが。




 違和感が消えない。




 事件のタイミング。



 場所。




 すべてが、微妙に重なる。




「……」




 一度、目を閉じる。




 そして。




 立ち上がる。




「……行くか」






 大学。




 夕方。




 人の流れ。




 講義終わりのざわつき。




 悟は、一人で歩いていた。




 足音が、静かに響く。




 その時。




「宮島悟」




 声。




 振り向く。




 一人の女性。




 見覚えはない。




 だが。




 どこか、違和感がある。




「……誰だ」




「班目唯」




 短く答える。




「記者だよ」




 あっさりと言う。




「……何の用だ」




 悟の声は、静かだ。




 警戒はしていない。




 だが。




 完全に無関心でもない。




「少しだけ」




 班目は、一歩近づく。




「話、聞かせてくれない?」




「……断る」




 即答。




 だが。




 班目は引かない。




「事件のこと」




 一言。




 空気が、わずかに変わる。




「……」




 悟は何も言わない。




 だが。




 足は止まっている。




「杉並のやつと」




「交通事故」




「両方」




 一拍。




「あなた、いたよね」




 静かに言う。




 決めつけではない。




 だが。




 確信に近い。




「……偶然だ」




 悟は、淡々と返す。




「そうかもね」




 班目は、あっさり頷く。




「でもさ」




 一歩、距離を詰める。




「偶然にしては、綺麗すぎるんだよ」




 その言葉。




 核心に近い。




「……何が言いたい」




 悟の視線が変わる。




 少しだけ。




 鋭くなる。




 班目は、まっすぐ見返す。




「“誰かが触ってる”」




 一言。




「そう思ってる」




 沈黙。




 数秒。




 周囲の音だけが流れる。




「……証拠は」




 悟が口を開く。




「ない」




 班目が即答する。




「でも」




 一拍。




「痕跡はある」




 静かに言う。




「消えてる部分」



「繋がらない記録」




「それ全部」




「“触られた跡”だ」




 悟は、何も言わない。




 だが。




 理解している。




 ここまで来ていることを。




「……」




 ポケットに手を入れる。




 翁。




 触れる。




 ほんの一瞬。




 空気が揺れる。




 班目の目が、わずかに動く。




「……今」




 小さく言う。




「何か、した?」




 悟は、手を離す。




「……何もしてない」




 淡々と返す。




 だが。




 班目の表情は、変わらない。




「……そう」




 一言。




 だが。




 確信は、強くなっている。






 数秒の沈黙。




 やがて。




 班目が口を開く。




「あなたじゃないね」




 一言。




「……何がだ」




「中心じゃない」




 静かに言う。




「あなたは——」




 一拍。




「“使ってる側”」




 悟の視線が、わずかに動く。




 核心。




 だが。




 完全ではない。




「……」




 班目は、それ以上言わない。




 ただ。




 少しだけ笑う。




「面白くなってきた」




 軽く言う。




 そして。




 そのまま去っていく。






 その場に残る。




 悟は、動かない。




 視線は、前。




「……」




 理解している。




 見つかり始めていることを。




 だが。




 止まる理由にはならない。




「……問題ない」




 一言。




 静かに言う。




 それで、十分だった。


——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。

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