接触
※この物語はフィクションです。
あなたが観測するまでは。
夜。
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編集部は、いつもより静かだった。
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蛍光灯の下。
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机の上に並ぶ資料。
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班目唯は、その前に座っていた。
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「……繋がってる」
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小さくつぶやく。
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杉並の事件。
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交通事故。
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どちらも。
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“途中が抜けている”
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記録はある。
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結果もある。
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だが。
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そこに至る“流れ”が、不自然に綺麗すぎる。
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「……」
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画面を見つめる。
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更新履歴。
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映像データ。
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証言ログ。
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すべて。
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“整っている”
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だからこそ。
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「……おかしい」
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■
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画面が切り替わる。
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大学。
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学生の顔写真。
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その中の一人。
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宮島悟。
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班目は、その名前を見る。
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「……偶然?」
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小さく言う。
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だが。
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違和感が消えない。
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事件のタイミング。
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場所。
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すべてが、微妙に重なる。
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「……」
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一度、目を閉じる。
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そして。
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立ち上がる。
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「……行くか」
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■
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大学。
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夕方。
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人の流れ。
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講義終わりのざわつき。
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悟は、一人で歩いていた。
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足音が、静かに響く。
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その時。
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「宮島悟」
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声。
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振り向く。
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一人の女性。
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見覚えはない。
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だが。
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どこか、違和感がある。
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「……誰だ」
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「班目唯」
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短く答える。
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「記者だよ」
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あっさりと言う。
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「……何の用だ」
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悟の声は、静かだ。
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警戒はしていない。
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だが。
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完全に無関心でもない。
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「少しだけ」
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班目は、一歩近づく。
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「話、聞かせてくれない?」
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「……断る」
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即答。
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だが。
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班目は引かない。
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「事件のこと」
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一言。
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空気が、わずかに変わる。
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「……」
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悟は何も言わない。
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だが。
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足は止まっている。
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「杉並のやつと」
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「交通事故」
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「両方」
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一拍。
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「あなた、いたよね」
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静かに言う。
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決めつけではない。
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だが。
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確信に近い。
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「……偶然だ」
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悟は、淡々と返す。
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「そうかもね」
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班目は、あっさり頷く。
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「でもさ」
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一歩、距離を詰める。
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「偶然にしては、綺麗すぎるんだよ」
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その言葉。
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核心に近い。
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「……何が言いたい」
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悟の視線が変わる。
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少しだけ。
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鋭くなる。
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班目は、まっすぐ見返す。
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「“誰かが触ってる”」
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一言。
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「そう思ってる」
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沈黙。
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数秒。
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周囲の音だけが流れる。
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「……証拠は」
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悟が口を開く。
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「ない」
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班目が即答する。
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「でも」
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一拍。
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「痕跡はある」
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静かに言う。
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「消えてる部分」
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「繋がらない記録」
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「それ全部」
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「“触られた跡”だ」
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悟は、何も言わない。
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だが。
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理解している。
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ここまで来ていることを。
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「……」
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ポケットに手を入れる。
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翁。
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触れる。
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ほんの一瞬。
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空気が揺れる。
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班目の目が、わずかに動く。
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「……今」
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小さく言う。
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「何か、した?」
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悟は、手を離す。
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「……何もしてない」
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淡々と返す。
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だが。
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班目の表情は、変わらない。
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「……そう」
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一言。
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だが。
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確信は、強くなっている。
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■
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数秒の沈黙。
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やがて。
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班目が口を開く。
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「あなたじゃないね」
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一言。
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「……何がだ」
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「中心じゃない」
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静かに言う。
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「あなたは——」
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一拍。
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「“使ってる側”」
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悟の視線が、わずかに動く。
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核心。
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だが。
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完全ではない。
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「……」
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班目は、それ以上言わない。
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ただ。
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少しだけ笑う。
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「面白くなってきた」
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軽く言う。
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そして。
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そのまま去っていく。
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その場に残る。
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悟は、動かない。
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視線は、前。
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「……」
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理解している。
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見つかり始めていることを。
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だが。
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止まる理由にはならない。
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「……問題ない」
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一言。
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静かに言う。
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それで、十分だった。
——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。




