結果
※この物語はフィクションです。
あなたが観測するまでは。
朝。
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ニュースは、いつもより少しだけ騒がしかった。
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『——警察官による過失が認定され——』
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『——ながら運転が事故の原因と判断されました——』
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スタジオの空気が変わる。
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『——当初の証言との食い違いについては、現在調査が進められており——』
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言葉が並ぶ。
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だが。
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結論は一つ。
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“覆った”
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それだけだった。
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宮島悟は、それを見ている。
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表情は変わらない。
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当然の結果。
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そう思っている。
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■
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昼。
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大学。
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「やばくね?」
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凪がスマホを見ながら言う。
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「完全にひっくり返ったじゃん」
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画面を見せてくる。
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記事。
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警察官の責任。
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新たな証拠。
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「……」
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悟は、軽く目をやるだけ。
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「まあ、そうなるだろ」
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短く言う。
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「いやいや」
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凪は笑う。
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「証拠ってこんな急に出るもんか?」
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「……出る時は出る」
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淡々と返す。
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「怖えな」
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凪は肩をすくめる。
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「でもまあ」
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一拍。
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「これでスッキリだろ」
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あっさりと言う。
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「悪いことしたやつが罰受ける」
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「それでいいじゃん」
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その言葉。
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どこかで聞いたような気がする。
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「……」
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悟は何も言わない。
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■
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夕方。
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裁判所の前。
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人が集まっている。
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カメラ。
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記者。
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ざわつく空気。
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悟は、その少し離れた場所に立っていた。
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視線の先。
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親。
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亡くなった中学生の母親。
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小さく、頭を下げている。
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記者の質問。
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「今回の判決について、どう思われますか」
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マイクが向けられる。
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沈黙。
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数秒。
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やがて。
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「……ありがとうございます」
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小さく言う。
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声は震えている。
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「……真実が明らかになって」
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一度、言葉が止まる。
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息を吸う。
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「……良かったと思います」
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それが。
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正しい言葉。
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正しい反応。
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誰もが納得する答え。
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だが。
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その次の言葉が、落ちる。
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「……でも」
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静かに。
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「……あの子は、戻らない」
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空気が止まる。
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誰も、何も言えない。
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当然の事実。
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変えようのない現実。
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それだけが、そこにある。
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■
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悟は、その言葉を聞いていた。
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「……」
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何も言わない。
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何も動かない。
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ただ。
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理解する。
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自分がやったこと。
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その結果。
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変えたもの。
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変えられなかったもの。
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「……」
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視線を落とす。
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自分の手。
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何も変わっていない。
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だが。
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確実に。
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“何かを選んだ手”
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■
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夜。
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部屋。
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静寂。
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机の上。
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翁。
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そこにある。
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悟は、それを見る。
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「……結果か」
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小さくつぶやく。
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正しい結果。
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間違っていない。
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誰も否定しない。
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だが。
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「……足りない」
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一言。
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何が足りないのかは、分からない。
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だが。
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はっきりと。
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足りない。
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「……」
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ゆっくりと椅子に座る。
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目を閉じる。
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考える。
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次に何を変えるか。
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どこまで変えるか。
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どこまでなら、意味があるのか。
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答えは出ない。
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だが。
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止まる理由もない。
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「……続ける」
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一言。
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それで十分だった。
——この物語は、あなたに観測されたことで成立しました。




